福島第一原子力発電所事故による除去土壌等最終処分の社会受容性を調査
今回は福島原子力発電所事故後の調査研究で気になったものがありましたので少しアウトプットしてみたいと思います。
本研究は、産総研が福島第一原子力発電所事故後の除染による除去土壌等の福島県外最終処分の社会受容性に関するウェブアンケート調査を実施した結果です。研究概要の後半のみ下記に抜粋します。
アンケート調査では、県外最終処分場を4属性(受け入れが決められた経緯(公正な手続き)、処分される物質の量と濃度、自分の住んでいる場所と処分場との位置関係、全国に設置される処分場の数(公正な分配))からなる選択肢で表現し、コンジョイント分析を実施しました。その結果、県外最終処分に際し、回答者は処分される物質の量や濃度に比べ、公正な手続きと公正な分配を重視することが明らかとなりました。県外最終処分は、全国の住民に受け入れられることが大切であることがわかります。
研究の背景として、この除去土壌等は法律により2045年までに福島県外で最終処分されることが決まっているのですが、県外最終処分に関しては、その立地場所や処分方法だけでなく、合意形成プロセスや除去土壌等の減容化技術の適用の可否についても決まっていないということがあります。
そこで、この研究ではどういう条件ならこの除去土壌等を受け入れられるかのプロセスや処分場所等についてアンケート調査したというものです。
方法や結果詳細はこちらを見ていただければと思います。
結果を見て分かるのは、受け入れプロセスでは地域住民の声を反映すること、処分場所は自らが住む場所からなるべく遠くが良い、という傾向が見えてきます。これらは予想通りと思いました。一方、処分する除去土壌の量や放射能濃度には有意差なしという結果でした。この結果だけで何かを断定的に言えるものではありませんが、ハザードの本体となる放射線を発する放射性物質を含んだ土壌については無頓着というか、放射線への理解が進んでいないと受け止めるべきなのかなというところでしょうか。
除去土壌等は福島限外で処分されることが決まっているので、国民全体でしっかり議論をしていくべきことです。そして、その過程で、「正しく理解する、そして、正しく恐れる」ということを専門家は意識しないといけません。
ということで、今日はここまで。