コラム02 「令和5年度「化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書公表」について
はじめに
2022年(令和4年)5月に公布された、労働安全衛生法による新たな化学物質規制により、2024年4月の施行をもって、本格的に職場における新たな化学物質管理制度が稼働する運びとなります。本制度のポイントは、従来の「法令準拠型」から「事業者自身による自律管理」 へと大きく転換されることです。しかし、現在も当該法令改正に関わるさらなる検討会が継続されており、検討会の提言事項が今後法令などに盛り込まれる見込みです。そのような中、2024年1月31日付けで厚生労働省が令和5年度「化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書をプレスリリースしたので、今回はこの内容を取り上げたいと思います。
報告書の位置づけ
厚労省によると、この報告書は、2022年(令和4年)5月に公布された、労働安全衛生法による新たな化学物質規制などを円滑に施行するため、技術的な事項を専門家が検討した結果をとりまとめたものです。リスクアセスメント対象物(労働安全衛生法に基づきリスクアセスメントの実施が義務付けられている物質)に労働者がばく露される程度を厚生労働大臣が定める基準以下としなければならないことが規定されたことを踏まえ、報告書では、物質ごとのばく露濃度の基準値(濃度基準値)とその基準値を満たしていることを確認するための測定精度の担保の仕組みなどを整理したとのこと。
2023年11月に中間報告が出されましたが、その後2回の検討会を経て、今回はその正式報告版がまとめられたということです。
内容については、概要がパワーポイント形式でまとめられていますのでこちらからご参照下さい。報告書の全文はこちらからご参照下さい。
報告書を読み解くには?
ここからはその内容を受けての所感です。
前回の中間報告と同様に個々の内容についてはある程度理解できると感じました。内容を一つ一つ読んでいけば理解できるという意味です。理解はできるけど、納得できるかというとこれも前回感じたように「おやっ?」と思うところはいくつかあります。
もう一点は、この報告書を読み解くには過去からの情報をしっかりウォッチしていないと難しいなと思いました。つまり、この報告書を理解するには、技術上の指針を理解しておく必要があります。技術上の指針を理解するにはリスクアセスメント指針と今回の一連の法改正の理解が不可欠です。さらに、これらの理解のためには過去からの法改正の流れの理解が必要です。
そして、何より大事なのはこういった字面だけの理解に留まらず、現場で何か起こっていて、どんな困ったことがあるのか/あったのかを理解する必要があります。
勿論、この分野に途中から参画された方は(私も長い歴史の中ではその一人です)、その時点以降のことはフォローしやすいのですが、その時点以前の理解は難しいと思います。ですから、自己学習したり、最寄りの識者に確認したり、相談できる専門家に問うようにして下さい。
報告書で特に難しい部分は?
話を元にもどしますが、報告書自体は全体的には少し分かり難いなと感じました。これは中間報告を読んだ時にも感じたことです。事業場の関係者が読んだ時に内容を容易に理解できるかというと、分かり難いと感じました。
特に「皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな物質の特定」については報告書本文に以下のような記載があります。
(3) 経皮ばく露による健康障害の予防的観点から、今後、皮膚吸収性有害物質になる可能性がある物質について、最新の知見を収集し、皮膚吸収性有害物質への該当の有無を検討する仕組み等を検討すべきである。
(4) 皮膚吸収性有害物質の経皮ばく露の防止には、有害化学物質との接触機会を低減できる作業環境管理や作業手法の管理が重要であり、保護具の使用は最終的な手段である。保護具の使用等に関しての教育等が必要である。
“経皮ばく露による健康障害”の理解がここでのポイントになりますが、この点をしっかり理解しようと思えば経皮ばく露とそれに基づく毒性の知識が必要となります。
困ったときには・・・
これらを含めた当該報告書について難しいと感じる場合にはお近くの専門家までご相談ください。なお、全国展開している当社にご相談いただくと以下のようなメリットがあります。
- 弊社代表は元化学物質の毒性評価研究者のため、毒性に精通しており、分かりやすくご説明できます。
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今回は、令和5年度「化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書公表について取りあげました。
※本内容は2024年1月31日現在の情報に基づいています。
関連リンク
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以上