目次

0.はじめに

わたくし采々(「とと」と読みます)は、2020年度の労働衛生コンサルタント試験(受験区分:労働衛生工学)を受験し、幸いにも合格することができました。これは、その時の私の体験をまとめたものです。

 

少なくとも私が受験する段階では、労働衛生工学区分の筆記試験や口述試験に関する勉強法、口述試験で何を聞かれたかなどの情報は限られていました。

 

そこで、自分なりに考えながら、勉強を進めました。

 

この体験記は時系列で記しています。単に、どんな勉強をしたのかだけではなく、長い勉強期間を通じて、その時々の心境についても触れています。特に口述試験の準備の過程でダイナミックに変化した心境の変化は必見です!!

 

さらにコラムもあります。大抵は失敗談です。「こんなお馬鹿な私でも努力とやる気があれば合格できますよ!」と読者の方に少しでも勇気を与えられたら幸いです。

 

体験記は長文かつ拙文です。どうかお付き合いの程宜しくお願いします。

 

この体験記がこれから労働衛生工学区分を受験されようとしている方に、少しでもお役に立てれば幸いです。

 

記載内容、その他についてご質問ございましたら、掲示板でいつでもご連絡下さい。可能な限りお答えさせていただきたいと思います。

 

0.1 合格体験記の読み方

 

合格体験記は、66,000字以上、400時詰め原稿用紙で165枚、Wordの標準的なフォーマットで70頁の大作です。ですから、以下に示す事項に心がけてお読みいただければ効果的にご活用いただくことができます。

 

はじめてお読みになる方は合格体験記をそのまま冒頭から最後までお読み下さい。時系列で記していますので、お読みいただく時期(今何月か?)を意識することで、何をいつ頃にどうすればよいのかという時間感覚やイメージが自然と理解できるようになっています。

 

2回目以降を読む前に、わたくし采々のプロフィールをご覧下さい。これをご自身のバックグラウンドと比較し、ご自身ならどのように受験勉強に取り組むかをイメージして下さい。

 

そして、2回目以降は目次を参考に任意の場所をお読み下さい。お読みになる方のその時々の課題や関心に即した形で、ハンドブックとしてご活用いただけます。

 

 

1.受験の動機

現在(2021年時点)、私は現役の会社員として某化学メーカーの事業所で、研究企画、労働安全衛生管理などに従事している。管理業務に携わる前は同事業所の研究職場にいた。

 

2017年にひょんなことから衛生工学衛生管理者資格を受講することになった。当時職場に居た衛生管理者が定年を迎えることになり、誰か替わりになってくれとなった。まだ、労働衛生の経験は少なかったが「私がなります~」と手を挙げた。

 

衛生工学衛生管理者資格を保有すると衛生管理者として活動できるという。さらに衛生工学衛生管理者だからこそ就ける立場がある(この時点では衛生委員会での立場のことなど知らなかった)ということや、何よりも受講すれば誰でも資格がもらえるということが魅力的だった(これも実際に受験したらそこそこ大変だったのだが・・)。その代わりに受講費用が恐ろしく高かったことにびっくりした。

 

ちょうど同じ時期に、事業所の特化則の作業環境測定で管理区分2が出た。どうやったら管理区分1に改善できるかを模索していたが全く分からない。社内の工務関係の専門家に聞いて対策するしかないと思っていた。

 

そんな中、衛生工学衛生管理者資格を受講することになったのだが、その講義を聞くうちに、工学的な環境改善技術が作業環境改善に有効なことを知るきっかけになった。「なんや、この知識を使えば管理区分2の問題もクリアーできるかも!!」と思った。また、何より、労働衛生工学の面白さを知るきっかけとなった。

 

この衛生工学衛生管理者資格の講義の中で、職業性疾病に関する講義があった。その講師が労働衛生コンサルタントという資格を持っていることを自ら話したことで、初めて同資格の存在を知った。

 

その講師が話したことは、今でもはっきり覚えている。

 

「私は労働衛生コンサルタントという資格を持っています。私、医者ですが、この資格も持っている訳です。あ~、勘違いしないで下さいね。皆さんが今回チャレンジしている衛生工学衛生管理者とは比べ物にならないくらい難しい資格なのです。皆さんは講義をちゃんと聞いていたら落ちることはほとんどないですが、労働衛生コンサルタントは全然違う。口述試験というものがありましてね~、そりゃ難しいのです。試験官の前で質問されたことに回答して合否が決まる訳です。その質問も何が聞かれるのか分からない。そんな難しいことに合格した訳です。」

 

うわっ、感じ悪っ、この人!!

 

という具合に、労働衛生コンサルタント資格の第一印象はこの方のせいか悪い印象だったのだ(恐らくこの方は保健衛生区分で、筆記試験免除で合格したお医者さんだったのだろう)。

 

無事、衛生工学衛生管理者資格を取得してからは、この分野の面白さに気づき、いろいろ調べてみると労働衛生コンサルタントという資格が何度も目に留まるようになった。調べてみると、労働衛生分野の最高位の資格ということが分かった。ふむふむ、あの講師が言っていたことに間違いなかったのだ(何だか悔しかったが・・)。

 

そして、ひょっとしたら、労働衛生コンサルタントとは、私の研究キャリアや、労働衛生に携わってきたこれまでの会社キャリアを最高に生かすことができるのではないかと感じ始めた。

 

ただ、労働衛生コンサルタントには受験資格なるものがあり、最短でもその時点から3年間待たなければならぬことが分かった。そこで3年後の2020年に労働衛生コンサルタント試験を受験することをとりあえずの目標とすることにした。

 

この時点の目標はあくまで「ふわっとした」目標であり、「何が何でも資格取得するぞ!!」という強い感じは一切なかった。その後、特に変化はなく時間は過ぎていき、2019年の秋を迎えることになった。

 

2019年秋、労働衛生コンサルタントの受験資格のいくつかをクリアーしたことを確認し、労働衛生コンサルタント受験に向けた準備を始めることにした。

 

この時に立てた戦略は「第2種作業環境測定士資格取得➡筆記試験の一部免除で労働衛生コンサルタント試験受験」だった。この辺りのことは後にも記載するが、第2種作業環境測定士試験の勉強を進めるうちに、改めて、労働衛生は学問的に面白いなと感じたのだった。

 

また、人生の節目を迎え、将来ポートフォリオワーカー(「Life shft」(リンダ・グラットン著))として生きていこうと考えていたので、労働衛生の仕事をその中核として位置付けながら、一生の仕事としてやっていきたいと考えるようにもなっていたのだった(ただ、今思えば、この時期に考えていた労働衛生コンサルタントに関する認識は相当甘いものだった)。

 

これらが受験の動機だった。

 

 

2.筆記試験の準備

 

(1)スケジューリング、受験戦略など

 

2017年9月に衛生工学衛生管理者資格取得後、しばらくしてから「試験合格への手引き」(参考図書#1)を購入し、試験概要を確認した。そこで改めて分かったことは、概ね以下の通りだった。

 

  • 第2種作業環境測定士資格を取得していれば労働衛生コンサルタントの筆記試験科目のうち2科目(衛生一般、法令)が免除となること。多くの受験者はそうしていること。
  • 筆記試験の衛生工学がやたら難しそうだということ(公開されている過去問を見たが全く分からず、衛生工学衛生管理者資格受験の際に得た衛生工学の知識だけでは何ともならないことを実感・・(汗))
  • 筆記試験の合格判定が概ね6割で、1科目でも4割以下があったらダメなこと(多くの国家試験と同レベル)
  • 筆記試験に合格しても、さらに輪をかけて口述試験という難しい最終試験が待ち構えていること(口述試験って何?っというレベル、あの講師が言ってたことか)

 

そして、翌年の2020年に労働衛生コンサルタントの受講資格が得られる年(2019年)の秋に、次のような戦略を立てたのだった。

 

「第2種作業環境測定士を受験➡合格する➡労働衛生コンサルタント試験の筆記試験の科目免除(衛生一般、法令)を受けて、衛生工学の筆記試験に合格➡口述試験を突破して一発合格する!!」

 

そして、次のような大まかなスケジュールを立てた。

 

2019年

11月 第2種作業環境測定士試験勉強開始

2020年

1月 同試験受験

2月 筆記試験対策準備

4月 局排の勉強開始

6月 受験準備講習会を受講、労働衛生工学基礎研修を受講

6月 その他の筆記試験用の勉強開始

10月 労働衛生コンサルタント試験/筆記試験受験

2021年

1月 労働衛生コンサルタント試験/口述試験受験@大阪会場

 

2020年1月に受験した第2種作業環境測定士試験には何とか合格できた(汗)。その後、登録講習を受ける予定だったが、COVID-19による緊急事態宣言発令を受け、会社指示で一切の社外出張が禁止された。そこには学会参加や講習会参加も含まれていた。

 

その後。1か月で緊急事態宣言は解除されたものの社外出張禁止は継続され解除されなかったため、結局、登録講習は受講できなかった。その結果、労働衛生コンサルタントの筆記試験で試験科目の免除を受けることは叶わずとなってしまった・・・。

 

ということで、筆記試験は全科目受験することを決意したのだった。

 

この時の心境としては、残念な気持ち2割、前向きな気持ち8割。決して強がりを言っている訳ではなく、本当にそう思った次第。

 

残念な気持ちというのは、そのままの通りで、当初の構想(筆記試験の科目免除)が崩れたから。ただ、こんなことでくよくよしても状況は変わらないし仕方がないので、すぐに気持ちが前向きに切り替わり、「しっかり勉強すればいいだけのこと、勉強したらそれだけ知識が増える!!」と思った。

 

そして、この筆記試験全科目受験は、図らずも結果的に「吉」と出たと思っている(そのことは後で詳述している)。

 

さて、筆記試験の全科目受験を決意してからは、「しっかり勉強せなアカンな」という気持ちが沸いてきた。

 

そこでまず取り掛かったのは局排計算問題攻略。理由は、労働衛生コンサルタント試験の筆記試験では衛生工学の局排計算問題が超重要かつ最難関という情報を「試験合格への手引き」(参考図書#1)から得たことと、以前にも書いた通り、衛生工学衛生管理者資格受験の際に習った衛生工学の知識だけでは局排計算問題を解こうとしても手も足も出なかった苦い思い出があるからだ。これは早めに攻略しておかねばと思った。

 

そのため「新やさしい局排設計教室」(参考図書#27)を購入し、まずは通勤時間を使って通読することから勉強を開始した。開始時期は2020年4月だったので、筆記試験の6か月前にあたる。

 

2か月で通読する予定だったが、結局、4か月要することとなった。遅れた理由は端的に言えば、自らの認識の甘さだったかなと思う。まだまだ時間があるとダラダラ読んでいたら結果的に時間がかかり過ぎてしまったという次第(汗)。

 

ということで、以降に述べる本格的な試験勉強への取り掛かりが遅れてしまった感があり、焦りを覚えたのだった(汗)。結局、本格的に筆記試験勉強に着手できたのは筆記試験の2か月前の8月頃になった(予定では6月頃からだったのだが・・汗)。

 

以降の各筆記科目の勉強について記す。

 

コラム① ~お馬鹿な私~

第2種作業環境測定士試験は筆記試験に合格しても登録講習を受講しそれに合格しなければ第2種作業環境測定士になれないって知っていましたか?

 

お馬鹿な私は知らなかった。トホホ、という話。

 

2020年の労働衛生コンサルタント試験受験を見据えていたので、2019年末には第2種作業環境測定士試験を受けるべく準備を進めていた。しかし、その時点では筆記試験に合格すればよいとしか考えていなかったのだ。勿論、試験要領は見ていたはずなのに・・・。

 

筆記試験に合格して改めて試験要領をよく見て「登録講習」なるものがあることが分かった。正確に言うと、「登録講習」という文字は事前に目に入っていたのだが、詳しく調べなかっただけのこと。今思えば、まずは筆記試験に受かることだけしか考えていなかったのかなあと・・・。

 

いざ登録講習について調べてみると、その受験費用が約10万円とめちゃ高く、講習に3日間も要するとは・・(汗)。費用は自腹で何とかなりそうだったが、如何せん3日間、しかも平日というのは仕事の調整をするのが超難しい。

 

先に述べた通り、第2種作業環境測定士試験は筆記試験に何とか合格したものの、労働衛生コンサルタント試験受験前に登録講習を受けることは、コロナ禍の会社事情のため結果的に叶わなかった。

 

教訓「試験概要は事前によく確認すべし!!」

 

お馬鹿な私でした(超汗)。

 

コラム② ~労働衛生コンサルタント試験受験には仕事の調整が肝要~

 

労働衛生コンサルタント試験を受験しようとする人は、会社や組織ではベテラン層だったり、責任のあるポジションに就いている人だったりするケースが多いと想像する。なぜなら、実務経験が相当ないと受験することもままならない資格だからだ。

 

そうなると日常業務は多忙を極めており、試験勉強の時間捻出が受験のポイントとなる。また、いくら計画を立てても、労働衛生に携わっている人には、突発の業務やアクシデントが入ったりして、あらかじめ時間を確保していても計画通りに進まないことも多々ある。

 

さらに、年齢を重ねている人も多いと想像され、そんな日常業務だけでも疲れているところに、家庭のある方もあると思われ、自分だけの時間をいかに捻出するかは至難の業だ。

 

このコラムは残念ながらその点の特効薬を示すものではない。

 

この点で、私がしっかり対応できたかというと不十分だったと自己採点している。労働衛生コンサルタント試験は、お馬鹿な私にとっては相当にハードルの高い試験だったので、それ相応に時間を捻出する必要性を感じた。そのため、できるだけ早めに試験勉強に着手することを計画した。

 

その場合、勉強期間は必然的に長くなる。その間、勉強に打ち込むために仕事の調整ができるかというと不可能に近い。私の場合、受験することを職場に公言していたが、一切仕事の免除は無く、日常業務を普通にこなしながらの試験勉強となった。恐らく、こういう方がほとんどだと思う。

 

ただ、受験することを公言しておくことで多少は状況が良くなった部分はある。特に、試験直前に有休を取得できるように業務調整ができたことは大きかった。何日も連続でまとめて有休をとるのは難しかったが、週末に有休を1日追加して3連休にしてそこで集中的に勉強、ということが筆記試験前と口述試験前に何回かできた。受験を公言していたため周りの理解があったことで可能になったことだと思う(勿論、有休取得前は仕事を少しでもこなすため深夜まで残業が続いたのだが・・・)。

 

なので、これから受験を控えている人は是非仕事の調整をして少し身軽になって勉強する環境作りをすることをお勧めする。また、周りの理解が得られそうなら、受験を公言しても良いだろう。

 

そうしないと、結果的に仕事にも試験にも中途半端に取り組むことになるからだ。

 

 

(1)衛生一般

 

衛生一般として何をやれば良いのか明確に分かっていなかったので、まずは過去問に取り組み、理解していることとそうでないことを把握することから取り組むことにした。

 

4年分の過去問(「試験問題集」(参考図書#2)を購入し、5周することを目標にした。R元年度、H30年度、H29年度、H28年度の順に「問題を解く➡答え合わせ➡回答・解説を読む➡理解していない部分を調べる」のサイクルで実施した。主に通勤時間を使って学習した(問題集は1冊で600頁弱ある分厚い本なのでカバンが重かった・・)。

 

1周目は30問中10~17問正解、2周目は20~27問正解、3周目は25~29問正解、4周目は27~30問正解という風に、徐々に正解率が上がったので、このやり方で大体OKと判断し、5周目は実施せず、試験直前に間違った問題のみをチェックすることにした。

 

理解していない部分への対応としては「試験問題集」の解説を読むことにしたのだが、ここに少々難点があった。「試験問題集」の衛生一般の解説は関係法令のそれに比べると非常にあっさりしている。関係法令の解説は異様なくらいに詳細に記載されているが(後述の通り)、衛生一般の解説は知りたい情報が少ないのだ。

 

例えば、ある問題で「適切でないものは?」と問われた場合に「正解が5」だとする。そうすると何で5が適切でないのかの説明は簡単に書かれているが、他の1~4が適切な理由は書かれていないことが多い。この時、5が適切でないことは理解できても、1~4が何で適切なのか理解できていればよいのだが、理解できていないと別の方法で調べるしかないのだ。別の方法とは、例えば、関係法令を見るとか、参考図書で調べるなどとなる。

 

つまり、衛生一般は「試験問題集」だけでは理解が不十分な印象があった。正解率6割を目指すだけなら「試験問題集」だけでも十分かもしれないが。

 

その理解が不十分な点についても、並行して、関係法令や衛生工学の勉強をしていくと、自然に衛生一般の知識が身に着く感覚があったので、衛生一般用に特別な勉強は結局しなかった。

 

私の場合は、労働衛生コンサルタント試験の前に第2種作業環境測定士試験でも衛生一般を勉強したので、この点もサポートになったかもしれない。

 

(2)関係法令

 

衛生一般と同じく、まずは4年分の過去問に取り組み、理解していることとそうでないことを把握することから取り組むことにした。

 

R元年度、H30年度、H29年度、H28年度の順に「問題を解く➡答え合わせ➡解説を読む➡不明な部分を調べる」のサイクルで実施した。こちらも主に通勤時間を使って学習した。

 

1周目は15問中4~7問正解、2周目は5~12問正解、3周目は11~15問正解、4周目は13~14問正解と推移し、一見順調に進んだように見える。

 

しかし、1周目時点で「これはアカン、法令は難しい!」と感じたのだった。その原因は、単純に問題が難しいこと、そして、答え合わせ後の解説を読んだ結果、「こんな細かいことまで理解しないといけないのか!」と思わされたからだった。

 

例えば、R元年度の関係法令の解説は計15問の問題の解説にP189~241まで何と52頁も割かれているのだ!! 単純計算で1問の解説に約3.5頁!! 凄い!!

 

先に書いた衛生一般との比較で言えば、衛生一般では正解のみ簡単な解説がついているケースがほとんど。一方、関係法令では設問の回答が仮に5であったとしても、5だけの解説に留まらずに、不正解の1~4についても丁寧に解説される。その解説も、根拠条文や考え方がびっしり書かれている。

 

これはある面、懇切丁寧であり本来の「試験問題集」としての体を成しているので非常に好感が持てる。ただ、あまりにも内容が細かい、細かすぎる・・・。過去問は労働安全衛生コンサルタント会が作っているから、同会から「労働衛生コンサルタントはここまで法令を理解せんとアカンのだよ!!」と言われているような気がしたのは私だけか(汗)。

 

この解説を1周目に読んだ時に、「問題を解く➡答え合わせ➡解説を読む➡不明な部分を調べる」の勉強法ではダメかもと思った。

 

解説の内容が細かすぎるというのは、裏を返せば、懇切丁寧に書かれているということ。これをしっかり読んで理解できれば大丈夫ということでもある。しかし、それは問題で問われた法令条文についてはそれでOKでも、他の法令条文を問う問題が出たら対応できず、法令全体への理解にはならないのではと考えるに至った(考えすぎかもと少し脳裏をよぎったが、しっかり勉強していて良かったと後で気付く)。

 

では、どんな勉強方法が良いのか?ということも、この時点では分からなかったので、とりあえず、「試験問題集」の周回を重ねることしかできなかった。

 

周回を重ねる毎に正解率は上がる。それは理解したからではなく、単に繰り返し解いて問題に慣れたからと分析した。違う問題が出たら多分解けないだろうなと思った。

 

例えば、問1で必ず問われる労働安全衛生管理体制の問題は超難問だと思う。その理由は、まず問題文が長く、日本語を理解するのに苦労する(お馬鹿な私だけかもしれないが(汗))。長い問題文の中にいろんな業種の労働安全衛生体制がまことしやかに書かれている。それに対して、従業員数毎に必要な管理体制を単純に覚えているだけでは不十分で、あらゆる業種での体制、除外規定などの知識も必要だし、読解力も問われる。この問1だけでも解くのに相当苦労する。

 

そして、その後に続く問題も、労働衛生に関わる法令がまんべんなく問われる内容となっており、問題によっては、施行規則の別表の但し書きの内容を知らないと答えられないものもある。

 

つまり、法令を「きちんと理解」していないと解けない問題ばかりなのだ。

 

作業環境測定士試験の関係法令問題との違いを痛切に感じたのはこの点だった。つまり、「作業環境測定士試験の関係法令問題よりも数段難しい」が私の実感である。

 

私は、2020年1月に第2種作業環境測定士試験を受験し、今回2020年10月に労働衛生コンサルタントの筆記試験を受験することになったから単純に問題を比較できる立場にある。その感覚からすると、第2種作業環境測定士試験の関係法令問題は、過去問を繰り返し解く王道の試験勉強でクリアーすることができた。事実、お馬鹿な私でもこの方法で作業環境測定士試験に合格できたのだから間違いない。

 

しかし、労働衛生コンサルタントの関係法令はこれだけではダメだと思った。コンサルタントになるには単に問題が解けるだけではダメなのだ。法令を「きちんと理解」する必要がある(これは後に筆記試験に合格して口述試験の勉強を重ねる際にも実感したことだ)。

 

資格試験への取り組み方や攻略の仕方は各人各様で良いと思う。労働衛生コンサルタント試験についても同様だ。労働衛生コンサルタント試験の筆記試験免除規定として作業環境測定士であれば労働衛生一般と関係法令が科目免除されるから、両資格の関係法令は同等程度とみなされている。だから堂々と科目免除を受けても一向に差し支えない。

 

しかし、後に筆記試験に合格して口述試験の勉強を重ねた際に実感したことは、関係法令の科目免除を受けたら次の口述試験で相当苦しむのではないか?口述試験では関係法令は試験対象外だが、もし法令のことを聞かれたら答えられないのではないか?運よくコンサルタントになった時にこの筆記試験に合格できるレベルの法令解釈ができないと困るのではないか?といったことを繰り返し考えるようになった。

 

労働衛生コンサルタント試験の関係法令についても過去問を繰り返し解けばOKと解説している合格者の声があるのも知っている。

 

ただ、労働衛生コンサルタント筆記試験の関係法令がこれだけ難しいということは、労働衛生コンサルタントにはこのレベルの法令解釈を要求しているのではないか?コンサルタントになった時に作業環境測定士の合格レベルでの法令解釈しかできないとしんどくなるのじゃないのか?と思うに至った(作業環境測定士の皆様に失礼かもしれませんがご容赦下さい、個人の感想なので)。

 

これは口述試験を受ける前に確信に変わった。そして、「作業環境測定士の登録講習を無理して受講して科目免除せずに関係法令を真剣に勉強して本当に良かった」と思えたのである。

 

それと、本当にそう思えた理由がもう一つある。それは、筆記試験の合否基準だ。

 

筆記試験の合否基準は、「合格基準は、総得点のおおむね60%以上であること。ただし、1科目につき、その満点の40%未満のものがある場合は、不合格となります」となっている。

 

ちなみに労働衛生工学の科目は、共通が労働衛生一般、労働衛生関係法令、専門が労働衛生工学である。

 

筆記試験で免除を受けず全科目受験するなら、衛生一般と関係法令でアドバンテージを稼いでおけば、仮に衛生工学の内容が悪くても筆記試験の合格基準に達する可能性がある。

 

以下はその簡単なシミュレーションである。

 

 科目 問題数 正解率40% 正解率60%
労働衛生一般 30 12 18
労働衛生関係法令 15 6 9
労働衛生工学

 

衛生一般と関係法令は筆記試験後に正答が公表されるので何点採ったか分かるが、衛生工学では正答が公表されないので、何点採ったのかや、得点配分が全く分からない。もし出来栄えが悪ければ、そこを衛生一般と関係法令が救ってくれる可能性がある(勿論、逆のパターンとして労働衛生工学で成績が良くてそこで稼いだアドバンテージを、衛生一般と関係法令が悪かった場合に補うというケースも稀だと思うがあるやもしれない)。

 

関係法令は難しいと思うが、衛生一般はそれに比べると難度が落ちるような気がするので、衛生一般で如何に貯金を稼ぐかがポイントになると私は思う。

 

事実、私は衛生工学の筆記試験結果は恐らく6割とれていなかったのではないかと思っている。明らかに間違えた問題がいくつもあったから。関係法令は6割ギリギリしか取れなかったので、衛生一般で8割以上とれたのでこの貯金が効いたと認識している。

 

前置きが長くなったが、これから科目免除の資格を持っている人で受験しようとする人は、「科目免除せず、筆記試験を全科目受験すること」をお勧めする。急がば回れ。コンサルタントになったときにきっと良かったと思えるはずだから。

 

話を戻そう。

 

ということで、関係法令の勉強を工夫する必要性を感じたので、どうしようかと悩んでいた。個々の法令を何回も読んだところで時間ばかりかかって理解できるのか怪しい。

 

そうやって、何も良い手が思い浮かばず、悶々としていたところ、とても良い参考図書に巡り合うことができた。

 

それは、この後、口述試験に至るまで大活躍する「作業環境測定士・労働衛生コンサルタント等資格取得のための労働衛生関係法令の要点の解説」(参考図書#7)だ。

 

この参考図書は関係法令の各法令の解説と小問題、作業環境測定士・労働衛生コンサルタント試験の過去問という構成になっているが、特筆すべきは解説の分かりやすさと教科書の総頁数が少なくコンパクトであること。常に辞書代わりに利用できる手軽さがある。

 

これを「通読➡分からない部分やさらに調べたい箇所は法令条文を見る」を繰り返すことで、法令への理解がかなり進んだと実感することができた。

 

結局、過去問の4周目以降はこの教科書を使用し「参考図書#7の各法令の解説を読む➡小問題を解く➡答え合わせ➡回答を読む➡不明な部分を調べる」を実施し、大方理解できたとの実感が持てたので、過去問の5周目は実施しなかった。

 

とはいえ、法令の細部、特にじん肺の管理区分などややこしい部分は理解できていなかったため、試験直前まで、「参考図書を辞書代わりに使用➡法令条文で詳細確認」してチェックすることにした。

 

なお、法令については、衛生一般や衛生工学の勉強でも度々法令に立ち返ってその根拠を確認するようにしていたので、法令の理解につながったと思う。

 

(3)衛生工学/問1,2

 

専門科目となる衛生工学の問1,2は、過去問を見ると、「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」と「有害作業環境に関する物理的因子によるもの」が問われる記述式の問題となっている。

 

「有害作業環境に関する物理的因子によるもの」では振動と騒音が頻出となっている。ここ数年は、振動のみ、騒音のみ、あるいは、振動と騒音を問う問題が出されているので出題傾向は明快だ。

 

一方、「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」では出題傾向がバラエティに富んでいる。

 

令元:労働環境における有害物質

H30:職場における有害物質の管理

H29:職場環境における有害要因とその暴露

H28:化学物資等の有害性のリスクアセスメント

H27:ろ過式呼吸用保護具

H26:作業環境に存在する化学物質による健康障害防止のためのリスクアセスメント

H25:リスクアセスメント

 

傾向が有るようで無いような、何が出題されるか分からないという印象。特筆すべきは、H27のろ過式呼吸用保護具というピンポイントかつその分野を深掘りすることもあることだ。こうなると「広く深く」勉強しないといけないことになる。

 

そんな中、ここ数年の問題を見ていると、イラストを見てリスクアセスメントを求める問題が出される傾向があったため、同種の問題は出そうな予感がしていた(実際に出た!)。

 

また、「選択問題」というのもやっかいだなと思った。問1と2からどちらかを選べばよいとなっているが、いざ本番ではどちらを選択すべきだろうか?という根本的な疑問から、問1,2のどちらにも回答したらどうなるのだろうか?とか、回答用紙のサイズ感はどんな感じになっているのだろう?という素朴な疑問までいろいろと不明点があった。

 

つまり、私の中では分からない尽くしなのが、衛生工学の問1,2なのだった。従って、今回の筆記試験で勉強方法が最後までよく分からなかったのも、苦しんだのも、この問1,2だった(ついでに言うと、口述試験勉強でもこの問1,2で問われるハザード対策で大いに苦しんだ。口述試験が終わった今だからこそ言えるのは、この段階でももっと勉強のやりようがあったのだろうと自分自身に対して少し歯がゆく思うのだが、衛生一般、関係法令、局排計算など、広範な出題範囲をカバーしないといけなかったため、気持ちにも時間にも余裕が無く、じっくりと問1,2対策に時間をかけられなかったからだと思う)。

 

当初は頻出の騒音、振動の問題を選択するつもりでいた。理由は、ほぼ騒音と振動のどちらかあるいは両方が必ず問1か2で問われているからだ。また、騒音、振動はこれまでの実務で全く関わってこなかった分野だから、今回勉強することで知識も深まり、その結果、点数もとれたら一石二鳥だと考えていた。ただ、このように前向きに考えていたのは試験まで時間的な余裕があった2020年5月頃のこと。

 

しかし、前述の通り、「新やさしい局排設計教室」(参考図書#27)の通読に時間を要すことになり、本格的な筆記試験勉強に着手できたのは2020年8月頃になった。衛生一般、関係法令、局排計算問題などと並行して、未経験の騒音、振動の勉強に割く時間がなかなか取れなかった。時間的な余裕が無くなって、心理的にも、全く知らないこれら分野の勉強を始めることにハードルが高いなと感じてもいた。

 

そして、出した結論は「騒音、振動は選択問題として出されても選択しない」という方針だった。要は「騒音、振動は勉強しない」ことにしたということ。そして、結果的に、過去問についても騒音、振動に関する問題は解きもしなかったのだった(今から思えばかなり勇気ある無謀な決断をしたものだと思うが・・・冷汗)。

 

ということで、問1,2については「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」に絞ることにした。騒音、振動に比べれば、こちらの方は少しは分かるような気がしたという程度の理由しかない。しかし、先に記載したとおり、出題傾向がバラエティに富んでいるため「広く深く」勉強する必要がある。

 

具体的な勉強方法としては、衛生一般、関係法令と同じく、まずは4年分の過去問のうち、騒音、振動を除く問題を5周することを目標にした。R元年度、H30年度、H29年度、H28年度の順に「問題を解く➡答え合わせ➡解説を読む➡不明な部分を調べる」のサイクルで実施した。こちらは主に平日夜と土日を使って学習した。

 

騒音、振動を捨てたことで、必然的にこれら以外は全て答えられないといけない立場になった(汗)。それにも拘わらず、過去問を解く以外に有効な勉強方法が見い出せなかった。

 

つまり、何が理解できていて、何が分かっていないのかを知るために過去問を解くのだが、過去問に「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」で出題される可能性のあることが全て網羅されている訳ではないため、困ったのだった(今思えば、このとき「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」とは何かをきちんと理解できていなかったことが、そもそもの問題だったのだが、この時点ではそのことに全く気付いていなかったお馬鹿な私・・・)。

 

そんな中でも特に注力したことは以下の通り。

 

・過去問でのイラストを見ての防止対策、作業環境改善技術を問う問題に対しては確実に答えられるようにした(勿論同じ問題は出ないと思うが、問題に慣れるという意味も込めて)。

・リスクアセスメント手法(定量法、定性法、GHS分類など)について参考図書で理解を深めた(つもり)。

・過去問でほぼ呼吸用保護具しか問われない年度があったので、呼吸用保護具については大方答えられるようにした(つもり)。

・主な定義の説明ができるようにした。例えば、ハザード、リスク、管理濃度、許容濃度、TLV-TWA、STEL、TLV-C、A測定、B測定、作業環境測定の分類評価法など。

・作業環境測定の評価決定方法の理解に努めた。

 

ただ、後で思えば、これ以上の範囲はカバーできていないし、深掘りも不十分だったため、問1,2対策は「完全な準備不足」だったと思っている。

 

コラム③ ~問1,2対策はハザードの理解とその対策が肝~

 

何度も書いたように問1,2の勉強は本当に何をやってよいか分からず苦労したが、口述試験が終わった今なら即答できる。

 

「ハザードの理解とその対策、その周辺部分」について勉強をせよ!!

 

今なら、ドラえもんにタイムマシーンを出してもらって過去の自分に言いに行くのに~、と言いたいところだ(それを言いにきたお馬鹿な私を見たお馬鹿な私はショックで気絶するのがオチかな・・・)。

 

「ハザードの理解とその対策」の具体的な勉強方法は「口述試験の準備」の項で述べている通りだが、簡単に言うと「労働衛生に関わる全てのハザードの洗い出し➡洗い出した全てのハザードの発生状況の洗い出し➡洗い出した発生状況毎のリスク低減措置の把握」となる。

 

「その周辺部分」については、リスクアセスメントや作業環境測定などについて知識を深めていくのが良いと思う。

 

これは労働衛生コンサルタントに求められる基本的な知識そのものであり、問1、2対策だけではなく、口述試験対策にもなる。

 

そのことが、筆記試験が終わって口述試験の準備を進めている辺りから良く分かってきた。筆記試験の準備段階ではこのことが全く分かっていなかった。本当に大事なことは先に分からない仕組みなんだな、人生と同じや、お馬鹿な私だけかもしれないが・・・。

 

そして、この勉強方法に近道は無い。

 

詳しくは「口述試験の準備」の項で述べているが、私はこのことを理解するまでもがき苦しんだ。そして、お馬鹿な故、理解するのに相当回り道もしたし、時間が滅茶苦茶かかった。ただ、その経過を辿ったことで、「ハザードの理解とその対策」の知識が血となり肉となった感覚を味わった。

 

もし同じ悩みを持つ方が居られたら参考にしてみて下さい。

 

(4)衛生工学/問3,4

 

専門科目となる衛生工学の問3、4は、過去問を見ると、局排の圧損計算問題が必ず出されている。局排の圧損計算問題は「試験合格への手引き」でも最重要と言われている。試験勉強に入る時点で過去問を見たがさっぱり分からなかった。そのため、全ての試験勉強の中で最初に手を付けたのもこの分野であり、勉強時間についても一番時間をかけた。

 

勉強のおおまかな手順は「沼野先生の局排設計の本(参考図書#27)を通読して全般的な理解をする➡過去問をまずは1周して問題のパターンに慣れる➡過去問で圧損計算問題を解きまくる」とした。

 

まずは、沼野先生の局排設計の本(参考図書#27)を通読して全般的な理解をすることから始めた(後から振り返ってもこれは正解だった)。

 

沼野先生の本は分かりやすく書かれている好著と思う。ただ、お馬鹿な私の頭がそれについていけるかは別の話で、静圧の説明の辺り(第12章あたり)から徐々に分かり難くなってきた。それでも、後で過去問を解けばきっと分かるようになる!と信じてまずはじっくり通読した。

 

その後、4年分の過去問を5周することを目標にした。R元年度、H30年度、H29年度、H28年度の順に「問題を解く➡答え合わせ➡解説を読む➡不明な部分を沼野先生の教科書で調べる」のサイクルで実施した。主に平日夜、土日を利用して勉強した。

 

最初の1周目で意識したことは、問題のパターンに慣れること。圧損計算と言っても、何がどのように問われるのかを知り、問題のパターンと計算手順などに慣れる必要があった。4年分を1周すると大体そのパターンなり、計算手順が分かってきた。

 

そのパターンとは、「規定されたフード型式による排風量計算➡ダクト内搬送速度計算➡速度圧計算➡圧損計算➡静圧計算」である。年度によって、あらかじめ数値が与えられているケース、全てを解くケースなど様々だが、大体の出題形式のパターンが分かってきた。また、それに伴い覚えるべき計算式も大体分かった。

 

この基本パターンの後に、ファン前後の静圧差計算や、主ダクトと枝ダクトの静圧バランスをとった際の静圧差、ファンの選定などなど、いろんな設問パターンが容易されているが、そのパターンもそう多くないことが分かってきた。

 

そうして圧損計算問題に慣れていった。

 

また、圧損計算のパターンに慣れてくると、沼野先生の本に書かれていることが全て問われる訳ではないことに気付いた。ただ、計算問題で問われなくても、問1や2の記述式や衛生一般問題として局排設計に必要な知識が問われるケースがあることも分かった。

 

また、サイクルを繰り返すうちに、問3と問4の違いが見えてきた。つまり、どちらかは、❶問題数は少ないが圧損の原理を完全に理解していないと解けない問題、❷問題数の多い、局排の圧損計算書の穴埋め問題を主にする問題、があることに気付いた。

 

そして、その❶❷には特徴があることが分かった。それぞれの問題を本番の試験で選択した場合の私なりに感じたメリットとデメリットは以下の通り。

 

❶問題数は少ないが圧損の原理を完全に理解していないと解けない問題 ❷問題数の多い、局排の圧損計算書の穴埋め問題を主にする問題
メリット 原理を完璧に理解していれば解ける。問題数が少ないので解くのにさほど時間は使わず、試験時間が余って答え合わせに時間を使える。 ❶に比べると問題の難易度が少し低い。多少計算間違いをしても肝心な部分を間違っていなければ問題数が多いので救われる可能性が高い。
デメリット 問題数が少ないので1問当たりの配点が高いと思われ、1問でも間違ったらダメージが大きい。 「排風量計算➡搬送速度計算➡速度圧計算➡圧損計算➡静圧計算」と順を追っての計算問題のため、最初の方の計算を間違っていたら、その後の回答は全滅する恐れがある。問題数が多いので計算に時間がかかり見直し時間が捻出しにくい。

 

問3,4について筆記試験前に準備不足だったこととしては、問題を解くのにどれくらいの時間がかかるかをあまり考えていなかったことだ。

 

❷の問題は、過去問の周回の中で何度解いても1問解くのに1時間かかってしまっていた。一方、❶は早ければ20分ぐらいで解けてしまう。本番の試験では結果的に❷の問題を選択したのだが、やはり1時間かかってしまい、回答をしっかり見直す時間が取れず超焦った。

 

そして、想定外だったこともあった。それは、過去の経験から、当初、計算問題は慣れればいずれは満点が獲れるだろう、悪くても8割程度は簡単に取れると少し楽天的に考えていたことだ。

 

しかし、結果的に、過去問を5周する間に2,3回しか満点が取れなかった。さらに、❷のデメリットに記載した通り、最初の方で計算ミスをしてしまっていて、8割どころか、回答が全滅したことが何度もあった。これにはお馬鹿な私も相当焦った(お馬鹿だから間違えるのだが・・汗)。

 

最初の方で計算ミスをしてしまう主な要因は以下の通りだった。

 

・「排風量計算➡搬送速度計算➡速度圧計算➡圧損計算➡静圧計算」と順を追って次々に計算を進める過程で、直前の回答を別の回答欄から引用し間違う、回答の数字を読み間違う、転記ミスといったケアレスミスや、電卓のキー入力ミス、など。

・有効数字の端数処理対応のミス。

・静圧バランスの計算には合流前のPVをPS計算で用いることをついつい忘れる。つまり、合流部での主ダクト系列のPSに枝ダクトト系列のPSを合わせるには主ダクト系列PSは合流前PV+PLを用いなければならない。間違えやすいのは計算書に記載した合流後のPV+PLから算出したPSを静圧バランスのPSとして用いると間違えになるということ。

・その他のケアレスミスとして、V計算で用いるAを引用ミスする。単純計算ミスとして、主ダクトに枝ダクトが合流する際に排風量を加算していくが単純に加算忘れをしてしまうこと。表の圧損係数の読み間違い。合流部のPL計算では合流前のPVを用い、合流部のPS計算では合流後のPVを用いる。拡大ダクトのPLは ζ(ゼータ)×(合流前PV-合流後PV)で求める。

なんでこんなにケアレスミスが起きるかというと、問題数が多く、早く解かなければという気持ちの焦りがある中でやるからだと思う。とにかく❷の問題は時間がかかる。お馬鹿な私だけかもしれないけど・・・。

 

このケアレスミス対策として採用した方法は、計算書から数字を転記する際に転記後にもう1回確認すること。電卓計算では同じ計算を2回行うようにしたことだ。

 

これでケアレスミスがかなり少なくなったが、毎回完璧にできた訳ではなく、答え合わせの時に間違っていて「あ~またか~」と憂鬱な気分を何回も味わった。

 

最終的には、❶❷のどちらのパターンでもある程度は解けるようになった。

 

「過去問を繰り返し解く➡答え合わせ➡沼野先生の本(参考図書#27)に立ち返って確認」という勉強方法が最終的には確立された。

 

ただ、これにあまりにも注力し過ぎてしまい、そこから少し外れる部分や圧損の周辺知識が薄れていく感覚があった。この対策として、試験の2週間前からは沼野先生の本を一通り再読することにした。

 

あとは本番の試験で❶❷のどちらを選択するかを事前に考えた結果、❶の原理を問う問題はお馬鹿な私にはリスキーだと判断し、❷を選択することを基本線するが、❶を見て解ける自信が100%あれば❶を選択するという方針に決めた(結果的には❷を選択した)。

 

筆記試験は2020年10月20日(火)だったので、10月18日(日)を総仕上げ日として、前日の10月19日(月)は持ち物確認をして早めに寝ることにした。

 

3.筆記試験の受験

 

(1)筆記試験直前まで

 

2020年10月20日に筆記試験本番を迎えた。

 

今回の筆記試験ではコロナ対策として試験会場が変更になるとの電話連絡を事前に安全衛生技術試験協会から受けた。当初、近畿安全衛生技術センターで受験予定だったが、JR加古川駅前のビルに変更になった。JR加古川駅から近畿安全衛生技術センターへの移動は第2種作業環境測定士試験の際に経験した折に結構大変だったので、その移動が無くなって良かった。

 

筆記試験開始は10時だったが、JR加古川駅には8時前に到着して、駅中の喫茶店で少し勉強して、試験会場には9時に到着した。

 

ここで驚いたのは、労働衛生工学の受験者が僅かに8名しかいなかったこと。コロナ対策として席の間隔を十分にとって4列×8行の席が設けてあったが、私を含めた8名の席の位置は右端に固められていた。左側にやけに空席が見目立つな~と思っていたら、午後になって謎が解けた。14時半からの労働衛生工学の試験前になるとぞろぞろと受験者が現れ始め、空席だった左側の24名分の席が満席になった。

 

後から現れたのは共通科目免除者だったのだろう。こんなに科目免除者が居るのかと驚いたが、「試験合格への手引き」でも共通科目免除でこの試験に臨むのがセオリーと書いてあったので、当然と言えば当然なのかもしれない(皆さんしっかり登録講習を受けて作業環境測定士になられた立派な方達ばかりだ。登録講習の存在を忘れていたお馬鹿な私とは雲泥の差だ・・・汗)。

 

そして受験前のピリピリ感の中で心和むことが一つだけあった。

 

皆さん、机の上に電卓を出されていたが、この電卓の大きいこと大きいこと。私も視力がだいぶ怪しいので大き目の電卓を用意したが、それよりももっと大きいものがたくさん目に留まった。さすがに、「受験者はお若くないのね、みんな、一緒や」と安心したのだった。

 

さあ、いざ試験!!

 

(2)筆記試験開始

 

①1科目目/衛生一般

 

1科目目は衛生一般。30問の択一式で時間は2時間。結局、途中退席することなく最後まで残った。はっきりと回答が分かる問題が比較的多く、悩む問題は意外に少なかった。最後まで粘った結果、ある問題で間違っていたことに気づき、よく考えた結果、正解にたどり着くことができた。ある程度は解けた感触を得た。

 

②2科目目/関係法令

 

2科目目は関係法令。15問の択一式で時間は1時間。こちらは予想通り、はっきりと回答が分かる問題は少なく、かなりの問題で悩むことになった。こちらも時間いっぱいまで粘った。

 

一見して分からなくても勉強してきた知識をフル稼働させて問題の一言一句から手掛かりを得て解くことに全集中した。ただ、衛生一般よりは出来は悪く、ギリギリ6割とれているかどうかという感触しか得られず、不安が残ることになった。

 

衛生一般、関係法令の両科目で時間いっぱいまで粘ったのは私一人だけ。早い人は退席可能時間になったらすぐに抜けた人も数名居た。皆、答えに自信があるのか、優秀なのか、どうせこれ以上考えてもしょうがないから次の科目に備えようと思ったのか分からないが、凄いなと感じた。

 

私は、受験のチャンスは1年に1回、この機会しかないのだから、途中退席するなんて勿体ないと思ってたとえ自信があっても最後まで粘ると決めていた。ただ、こう思ったのはお馬鹿な私だけなのか・・・。

 

③3科目目/労働衛生工学

 

3科目目は問題の専門科目である労働衛生工学。時間は2時間。

 

過去問と同様に、問1、2からどちらかを選択、同じく問3,4のどちらかから選択する方式だった。

 

まず、問1,2を見て、問2が振動を問う問題だったため、予定通りこちらはパスして、自動的に問1の職場の労働衛生対策を選択した。次に、問3,4の圧損計算問題を見て、問3がキャノピー型フードの計算問題で問4が圧損計算の穴埋め問題。問3が、どちらかというと原理を問う難しめの問題に見え、問4が計算書の穴埋めが主となる問題に見えた。キャノピー型フードは恐らく出ないと思っていてあまり勉強していなかったことと(汗)、さらにマノメータで圧力のことが問われていて自信が無かったので、問4を選択することにした。

 

そして、問1➡問4の順で、それぞれ1時間弱で解いて見直しをする予定とした。

 

まず、問1。

 

この問1を見て、かなりの違和感を覚えた。理由は、問題の構成がかなり広範な知識を要求されていることと、過去問と比べると問題数がやたらに多いからだ。正直、「どんだけっ~!!」と心の中で叫んだのはお馬鹿な私だからか(汗)。以下に大問題5問を示す。

 

(1)2つのイラストを見て、労働衛生上の課題として改善すべき点をそれぞれ3つ挙げよ

(2)空気中の化学物質の分類、性状、用途などに関する穴埋め問題(なんと18問!!)

(3)作業環境測定のデザインを問う穴埋め問題(6問)

(4)有機溶剤蒸気の発生や換気に関する穴埋め問題(7問、うち4問が計算問題!!)

(5)化学物質A,Bについて、NOAELからばく露濃度の計算問題1問、第一および第二評価値の計算問題1問、その結果から管理区分を答える問題1問の計3問

 

「うわ~、何だか問題の傾向が過去問と違うぞ~、まずいまずい!!」と心の中で叫びながら、(1)から順に解いていった。

 

しかし、(1)の2つのイラストを見てから労働衛生上の課題として改善すべき点をそれぞれ3つ挙げ始めるまでになんと10分も要してしまった(超汗)。それぞれのイラストを一見して2つの改善点はすぐに分かったが、3つ目がなかなか出てこない。日常業務でイラストを見て問題点を挙げる訓練をさせる立場にあったのでこれは得意問題のはずなのになあ・・と思いながら、もどかしさを覚えながら、何とか3つ目を捻りだした。

 

次に、(2)空気中の化学物質の分類、性状、用途などに関する穴埋め問題(なんと18問!!)。ガス、蒸気、ミスト、ヒュームの違いを問う問題をベースに、それぞれの状態で存在する物質を工業用途と絡めて問う問題と、それらの気体状態と疾病との関連を問う問題という非常に高度な問題だった(と私は感じた)。

 

穴埋め問題なので、その単語や物質名が分からないと答えられない。最初読んだときは、ほとんど分からなかったが、冷静に問題を読み返すと、例えば、穴埋めの(A)に記載する回答が、後半の文章の方にも同じく(A)と出てきたりしていて、それぞれの(A)の周辺の文脈や単語から答えが類推できるようになっている部分もあった。それらを読み解きながら、なんとか全部埋めたが、出来は半分ぐらいのイメージだった。まさか、ガス、蒸気、ミスト、ヒュームの基本的な違いを問う問題が出るとは・・・。作業環境中の化学的な有害因子の存在状態としてこれらは基本中の基本なのにしっかり学習していなかった自分が悪いのだ、という反省が出て、ここでも超汗。

 

そして、(3)作業環境測定のデザインを問う穴埋め問題(6問)。ここはそこそこ解けたと思ったが、改めてデザインを穴埋めで問われるとは予想していなかったので、驚いたという印象。

 

次の(4)有機溶剤蒸気の発生や換気に関する穴埋め問題(7問、うち4問が計算問題!!)が後で最も後悔した問題。つまり、間違えが多くて、さらにその間違え方も信じられない間違え方をしたのだ(半端ない超汗)。

 

7問のうち、前半3問はシンナー中の各成分の揮発性の順番を問う問題だった。勉強したどこかの参考図書に書かれていたのと同じだ!と直感的に感じ、分かっているはずだったのに結局全滅してしまった・・・。「低【A】成分」という穴埋めの【A】の正解は【沸点】だったが、その言葉が出てこずに何と【揮発】と書いてしまったお馬鹿な私・・・(低沸点と低揮発では意味が180度違うじゃないか、オイオイ)。「おかしいな?おかしいな?」と思いながら、焦りばかりが大きくなっていき正解に辿り着けない。結果、【揮発】と書いてしまったのだった。甲子園には魔物が居るというが、この試験会場にも同じく居たのか・・・。帰りの電車の中で気づいて「しまった~」と思わず声が出そうになった。

 

続く(4)の計算問題は1モル=22.4リットルや、気体化学の基本的なことを知らないと解けない内容。こういう問題は第2種作業環境測定士試験の数少ない計算問題対策でやったな~という記憶が蘇った。まさか労働衛生コンサルタントの試験では出ないよね~とたかをくくっていた、全くのノーマークの分野だったが、おそらく解けたと思う(小汗)。

 

最後の(5)化学物質A,Bについて、NOAELからばく露濃度の計算問題、第一および第二評価値の計算問題とその結果から管理区分を答える問題。ここもNOAELからの計算問題で信じられない間違いを犯してしまった。計算の最後に安全係数で「割る」のを間違えて何と「掛けて」しまったのだ、トホホ。その後の第一評価値、第二評価値の計算では、あらかじめ記載された数式が8個あり、そこから適当なものを選んで計算せよとなっていたが、対数の計算式がズラリと並んだ光景を見て「そんな~、数式なんて覚えてないよ~」と心の中で叫びながら、この問題だけは空欄となってしまったのだった。最後の管理区分を問う問題は勘で適当に書いたのだった。

 

ということで、問1を全て解くのにほぼ予定通り1時間弱をとってしまったが、イラスト問題で予想以上に時間が掛かったり、問題自体が全体的に多かったりなど、正直大苦戦してしまったのだった。

 

続いて圧損計算の問4に続いた。問4は圧損計算書の穴埋めが主の計算をひたすらやり続ける問題で過去問でも解くのに1時間かかっていたため、残り時間への焦りを相当感じながら進むことになった。

 

問4は過去問で何度も見たような主ダクトに枝ダクト系列が1本ぶら下がった局排装置の系統図があり、これを基に条件が与えられていた。

(1)は与えられた条件を使って局排計算書の穴埋めをする問題

(2)はファンの静圧計算

(3)は①主ダクト系列の囲い式フードの開口面の補正係数kを求める問題、②静圧バランスがとれている前提での枝ダクト系列のフードの排風量計算、③そのフードがスロット型フードであり、与えられた条件での等速度面上の気流の速度の計算問題。

 

まず、(1)局排計算書の穴埋めをする問題。

 

ここは想定通りの問題であり、何度もケアレスミスを重ねた問題でもあったので、慎重に慎重を重ね穴埋めを進めていった。しかし、出だしのダクトの搬送速度計算の結果が、過去問ではお目にかかれなかったぐらいに計算結果が大きくなってしまった。その後のフードの速度圧や圧損結果も必然的に大きな値となり、計算間違いをしているのではないか?と不安になり、何度も計算し直した。結果的に、最初に与えられているフードの排風量が大きいためと結論したが、不安を抱えながら、穴埋めを繰り返した。

 

後で気づいたが、この不安に気を取られてしまったせいかもしれないが、やはりケアレスミスをしてしまっていた。

 

ミスしたのは、ファン後の圧損の累計計算。ファン後は出口の排気口から順に累計圧損を計算していかなくてはならないのに、間違ってファンに近い側から累計計算をしてしまうという痛恨のミス・・・。その初歩的なミスに気づくチャンスは何度かあったにも関わらず見過ごしてしまった。時間が無いと焦っていたこともあり、十分に見直すことができなかったのも痛かった。ただ、穴埋めの個数が多いので、配点が均等だとするとミスは6か所に抑えることができた。

 

(2)ファンの静圧計算。ここは前述のファン後の累計圧損値を間違えているので、当然間違いの結果を記入してしまったことになる。残念至極・・・。

 

(3)の①主ダクト系列の囲い式フードの開口面の補正係数kを求める問題。ここは余裕で解けたと思っていたが、実は間違えてしまっていたことに後日気づいた。開口面の16等分された各箇所の風速が分かっているので、その平均風速を最低風速で割ればよかっただけなのに、何を思ったか、最低風速ではなく0.4で割ったのだ。何で0.4で割ったかというと、囲い式フードの最低制御風速0.4で割ると勘違いしたためだった。原理原則をしっかり理解していないとこうなるという典型のようなミス。計算過程を示すことになっていたから部分点はもらえたかもしれない。

 

続いて、②静圧バランスがとれている前提での枝ダクト系列のフードの排風量計算。これは恐らく解けたと思われた。しかし、設問の意味が多少理解できていない点があり、不安が残ることになった。

 

最後に、③そのフードがスロット型フードであり与えられた条件での等速度面上の気流の速度の計算問題。ここは設問でスロット型フードの詳細寸法等の詳細情報がズラリと与えられていたが、結局「W/L≦0.2ならQ=60・5.0・L・X・Vc」ということを覚えていたので、必要な数値以外は無視して、スロット型フードの排風量計算式を使って算出した。多分正解していると思われるが、与えられた条件の多くを使用せずに解いたので半信半疑。

これで問4を解き終わって、ここまでで試験終了まで残り10分。一応、全体をざっと見直して、時間いっぱいまで粘って試験終了となった。

 

(3)筆記試験終了後

 

筆記試験が終わった直後は、頭が飽和状態になっていて、もうこれ以上は頭が回らない感じになっていた。

 

試験時間については、特に労働衛生工学で時間的に全く余裕がなかった。時間配分について事前に十分に練られていなかった自分自身への反省が大きかったが、問題数がやたら多くて、難しかったことも起因していると思う(そう感じたのはお馬鹿な私だけかも)。労働衛生工学の選択問題で、別の問題を選択していたなら、もう少し時間に余裕を持てたかもしれないが、そっちを選んでいないため正直それも分からない。

 

びっくりしたのは、労働衛生工学で退出可能時間の1時間が経過したときにお一人だけ退出したこと。「え~っ、もうできたの!!」と心の中で叫んでいた。果たしてこの方は問題が解けたからから退出したのか?はたまた、解けなさ過ぎて退出したのか?など想像したがどうだったのだろう。それ以外の人は全員最後まで残っていて、終わった時は皆さんぐったりしていた。

 

試験終了直後の合否の印象は、「合否当落線上のギリギリかな」と思った。楽に合格という感じは一切無し。ただ、全くダメというわけでも無いかな、という印象だった。

 

帰宅時の電車の中で最後の問4の計算問題を解いて答え合わせをした。その時に(1)での穴埋めのミスなどに気づいた。

 

そうして、めちゃくちゃモヤモヤする気持ちのまま、受かっている可能性もあると信じ、口述試験対策を進めることに決めたのだった。

 

4.口述試験の準備

 

筆記試験は2020年10月20日に受験した。その合否発表は12月21日となっていた。また、口述試験は2021年1月19日or 20日(大阪会場)と決まっていた。

 

筆記試験の感触は芳しくなかったが、受かっている可能性もあると信じ、口述試験対策を進めることにした。

 

(1)スケジューリング、受験戦略など

 

「試験合格への手引き」(参考図書#1)では、“筆記試験の合格発表後の12月後半から口述試験の勉強を始めても遅い”ということが繰り返し書かれていた。確かにそうだろうと思い、筆記試験直後から口述試験用の勉強を始めることにした。

 

また、「試験合格への手引き」(参考図書#1)では“口述試験こそがこの試験の本番”なのだとも書かれていたが、この時点ではこの意味が良く分かっていなかった(しかし、後になったよく分かるようになった)。

 

さて、口述試験対策だが、何をどう進めてよいものやらよく分からない。労働衛生工学の口述試験についてはネット検索しても口述試験での質問内容は散見されたが、試験の準備方法についてはヒットしなかった。よって、筆記試験の時と同じく、「試験合格への手引き」を参考にしたのだが、大方の対策は「想定問答集を作成して繰り返し覚える」というものだった。

 

これで果たしてよいのだろうか?とも思ったが、他に参考にするものも無いから、取り敢えず模倣するしかないかと思った。でも、どんなことを想定質問として問答集に載せればよいのやら?と、疑問が次々に沸いてくる始末。

 

そこで、目標設定の王道手法を使って探ることにした。つまり、「KGIを設定➡現状とのギャップ分析➡課題を抽出➡課題解決のためのKPIを設定➡KPI毎の解決策を設定➡実行」をすることにした。

 

まず、KGIを以下の通り定めた。

 

・いつまでに?

➡2021.1.19or20の口述試験までに

・何を?

➡労働衛生知識全般について

・どれだけ?

➡労働衛生知識を習得し、想定質問集を作りすらすら答えること

 

KGIと現状のギャップ分析をして浮き彫りになった課題と、それに対するKPIを下記の通り設定した(KPIは本来数値設定するが、ここでは無視していることをご了承下さい)。

 

課題 KPI
1. 口述試験で何を聞かれるか分かっていない 合格体験記、その他の情報収集をし、傾向を分析し、想定問答集を作成する。作成した問答集を基にパートナーに試験官になってもらって練習する
2. 筆記試験の勉強で割愛した箇所(振動、騒音、その他も含め)があり、ハザード全般について理解できておらず、全体的な深化もできていない 労働衛生に関わる全てのハザードについて、それらの発生する状況も踏まえ知識UP、リスク低減措置の把握
3.口述試験で聞かれるかもしれない労働衛生に関わる最新トレンドを把握できていない 「労働衛生のしおり」令和2年度版で各種障害の発生状況を把握

 

次に、設定したKPI毎に解決策を作成し、優先順位を定めた上で、一つ一つをこなしていくことにした。

 

大まかには「ハザード全般の理解➡そのリスク低減措置の把握➡想定問答集への掲載➡繰り返し覚える」という流れで進めることにした。

 

これを踏まえ、大まかな予定を以下の通り定めた。

 

2020年11月末まで   :課題2克服

2020年12月末まで  :課題1対策として想定問答集を作成完了。課題3の内容も想定問答集に盛り込む。

2021年1月受験日まで:想定問答集を覚えるため、繰り返し反復する

 

当初はこのように進める予定だったが、進めていく上で予定と内容は変わるものだ。以降にどのように予定や、内容が変わったのか、その時々の私の心境の変化も含め、課題克服の経過を記す。

 

(2)課題2への対応/ハザード全般への理解

 

課題 KPI
2. 筆記試験の勉強で割愛した箇所(振動、騒音、その他も含め)があり、ハザード全般について理解できておらず、全体的な深化もできていない 労働衛生に関わる全てのハザードについて、それらの発生する状況も踏まえ知識UP、リスク低減措置の把握

 

まずは、課題2への対応から進めることにした。その理由はハザード全般について体系的にも内容的にも理解ができていないと感じたからだ。そう感じた一番の要因は、筆記試験での労働衛生工学で問1への対応が十分にできていなかったからだ。

 

前述の通り、筆記試験の問1、2は「有害作業環境に関する化学的因子によるもの」と「有害作業環境に関する物理的因子によるもの」という構成だ。しかし、筆記試験後の反省として、作業環境中の化学的な有害因子の存在状態(ガス、ミスト、ヒュームなど)すらもしっかり把握できていなかったこと、加えて、そもそもその化学的な有害因子には何があるのか、物理的な有害因子として勉強すること自体を止めてしまった振動、騒音やそれ以外の物理的因子には何があるのか、など理解できていないことが多々あると感じていた。

 

「よくもこんな状態で筆記試験に臨んだなお馬鹿な私よ!」と、お馬鹿な私が自らに何度問い掛けしたことか。

 

課題1の想定問答集自体の作成にはそう時間はかからないと思っていたので、まずは、この有害因子(ハザード)をしっかり理解することから始めることにした。

 

課題2克服のために設定したKPIを解決するために、以下を実施することにした(番号が❶からになっていないことや、番号がとんでいることは気にしないで下さい)。

 

❹ 労働衛生に関わる全てのハザードの洗い出し

➎ ❹で洗い出した全てのハザードの発生状況の洗い出し

❻ ➎で洗い出した発生状況毎のリスク低減措置の把握

 

❹をやろうと思ったきっかけは、これまで何度も書いてきたように、ハザード全般について理解ができていなかったから。まずは、その中でも勉強を避けてきた振動、騒音の勉強から始めた。

 

振動、騒音の勉強を進めていくと、次第に本当は知っていないといけなかったハザードが他にもたくさんあることに気づきはじめた。酸欠、暑熱、寒冷、高熱物体、異常気圧、非電離放射線、電磁波など。

 

そう思って、改めて「労働衛生のしおり」の職業性疾病関連の労働災害統計を見ると、疾病分類として「(1)負傷に起因する疾病」~「(22)その他の業務に起因することの明らかな疾病」まで分類されているではないか。

 

物理的因子、化学的因子以外にも作業態様に起因する疾病など、もっと広範になっている。そもそも、この分類は何に基づいているのか?という疑問が次に湧いてきた。

 

そこで、それを調べるのにかなり紆余曲折した結果、法令条文、その解釈通達に行き着き、法令に明記されていることに気付いた。

 

つまり、労災関係のことだ。

 

まずは、労働基準法第75条の(療養補償)に記載されている。

 

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

② 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

 

第75条第2項の規定は、労働基準法施行規則第35条および別表第1の2に示されている。

 

第三十五条 法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。

 

別表第一の二(第三十五条関係)

一 業務上の負傷に起因する疾病

二 物理的因子による次に掲げる疾病

1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患

2 赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患

3 レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患

4 マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患

5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍かいよう等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊え死その他の放射線障害

6 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函かん病又は潜水病

7 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症

8 暑熱な場所における業務による熱中症

9 高熱物体を取り扱う業務による熱傷

10 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷

11 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患

12 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊え死

13 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病

(以下省略で二十二まであり)

 

別表第1の2に示されている一から二十二までが、前述の職業性疾病の疾病分類、つまり、「(1)負傷に起因する疾病」~「(22)その他の業務に起因することの明らかな疾病」を指している。このことに、お馬鹿な私はこの時点ではじめて気付いたのだった。

 

さらにこの時はじめて、災害補償の範囲となるこれら疾病へのハザード対策が、私がこれからなろうとしている労働衛生コンサルタントの役目ではないのかと気づいた。

 

労働衛生コンサルタント試験の科目「労働衛生工学」の合格者は、工学的対策を得意とする者だ。労働衛生工学的手法を用いてこれら有害因子から労働者を守る手段を講じることで、労働基準法第81条第2項に定める「労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。」が達成できるのではないか、ということに気付いた。

 

何度も言うが、私はこのことにこの段階で初めて気づいた!!

 

コラム④ ~お馬鹿な私②~

 

「労働基準法施行規則第35条および別表第1の2」の意味することを皆さん知っていましたか?

 

恐らく、労働衛生コンサルタント試験を受験する方は、受験前に当該条文の意味することをよくご存じなのだと推察する。しかし、私は口述試験対策をしている段階で初めて気づいた。

 

これを読んでいる受験者諸氏は「こいつ本当にお馬鹿やな~」と思ったことだろう。そうです。私は本当のお馬鹿なんです。

 

この段階で気づいたお馬鹿な私は「あ~、この段階で気づいてほんと良かったな~!!」(心の声は、「筆記試験のかなり前に気付いていたら、筆記試験の専門科目対策がもっと楽だったろうにな~」「筆記試験で不合格になってもこのことに気付いたからには、次回の筆記試験は何とかなるかもな~」と叫んでいた)

 

ちなみに、何でこんな大事なことに試験の前から「気づいていなかったのか」、別の言い方をすると「知らなかったのか」を自己分析してみた。単に勉強不足なのだが、その原因は、業務で労災事案に関わってこなかったからだと思った。

 

現在の職場では労働安全衛生の業務を担当しているものの、実際にハザードが原因で労災事案が発生したことは無い。ハザードは存在しているが、リスクが低いため、労災を全く意識してこなかった。仮に労災事案が発生しても、それは別の事業所の部門が担当する組織構造になっているため、労災へ意識が低かったのである。

 

これは言い訳に過ぎず、実務での勉強不足が主な原因だ。

 

ただ、このことに気付いたことで、労働衛生コンサルタントとしてやらなければならないことが理解できたことは事実。俄然、やる気が沸いてきたのだ。やるべきことの全体像がここにきて初めて見えたので、あとは、それに対する行動をとれば良いのだと!!

 

「気づいたお馬鹿」と「永遠に気づかないお馬鹿」は違うのさっ、と自分で自分を慰めるお馬鹿な私だった。

 

労働基準法第75条第2項、労働基準法施行規則第35条および別表第1の2の意味と、そこに書かれたハザードへの対応が労働衛生コンサルタントの役目だと気づいた私は、俄然意欲を持って、以下の対応をこれまでよりも積極的に進めることにした。

 

この段階で意識が相当変わったことを実感していた。

 

❹ 労働衛生に関わる全てのハザードの洗い出し

➎ ❹で洗い出した全てのハザードの発生状況の洗い出し

❻ ➎で洗い出した発生状況毎のリスク低減措置の把握

 

課題2克服のために設定したKPIを解決するための上記手段についても、意識が変わった後では、「❹労働基準法施行規則別表第1の2に示されている疾病全てについて➡➎どんな状況でそれが発生するのかを洗い出し➡❻それぞれのリスク低減措置として何があるのかを調査」を実施した。

 

そして、そのリスク低減措置を、ハザード毎に労働衛生管理の3管理である「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」に仕分けした。

 

さらにリスク低減措置を優先順位ごとに分けた(ハザードによっては完全に分けられないものもあったが)。

①危険性または有害性を除去または低減する措置

②工学的対策

③管理的対策

④個人用保護具の使用

 

この勉強も今ではさらっと書けてしまうが、お馬鹿な私なので、順調に進んだ訳ではなく、試行錯誤を繰り返し、かなり手間もかかったし、時間も要した。各種法令、参考図書を何度も何度も読み返してはまとめることを繰り返した。

 

何で時間がかかったのかその一端を紹介する。

 

この作業を実施していると新たな疑問が次から次に浮かぶのだ。例えば「➎どんな状況でそれが発生するのかを洗い出し」でのことだ。

 

例えば、上記❹で酸素欠乏について調べたとする。酸素欠乏について「➎どんな状況でそれが発生するのかを洗い出し」すると、「鉱山業、建設業、清掃業などの地下作業部門と、化学工業、石油工業、食品製造業などのタンク内作業部門に酸素欠乏事故の多発傾向が見られる」ことが参考図書から分かる。

 

では、「鉱山業って何?」となる訳だ。

 

ここで人によって対応が分かれる。

 

1.鉱山業、よく知っているからスルー

2.鉱山業って呼んで時の如く鉱物を山から取り出す仕事でしょ、はいスルー

3.鉱山業って大体予想つくけど、一応Google博士に聞いてささっと概要を調べておくか

4.鉱山業?そんなの口述試験では問われないから、はいスルー

5.鉱山業か、念のため、ネットや関連書籍でしっかり調べておこう

 

お馬鹿で知識のない私は当然5なので、迷わずここで深掘りしていくことになる。

 

こうやって一つ一つ、よく言えば「丹念に」、別の言い方だと「相当回り道」しながら進んで行った。山があったら最短距離で周辺景色も最低限度を見ながら効率よく山頂に向かうのか、くねくね回り道しながら周辺の景色も見落とさずに時間をかけて山頂に辿り着くのか、という違いかな。私は明らかに後者だったと思う。良いか悪いかではなく、好みスタイルの問題かな。

 

話を戻すと、そうやって鉱山業についてある程度理解したとする。

 

すると次には「鉱山業の現場で酸素欠乏が起きるのは分かったが、実際にどんな状況でどんなことをしたら酸素欠乏が起きるの?」という疑問が沸いてくる。何せ、鉱山業の現場を知らないから、こういう疑問が沸いてくるのだ。

 

そして、その回答の手がかりを探すために、例えば「職場のあんぜんサイト」から災害事例を引っ張ってくるのだ。そうすると、その疑問に対して大体は回答のようなものが分かるようになる。

 

こういうことを延々と繰り返していた。

 

そうすると、口述試験で「鉱山業で考えられるハザードは何ですか?その対策も含めて答えて下さい」という質問があっても、一回調べていれば、回答できる可能性がある(「可能性がある」と書いたのは調べていても口述試験の場で答えられるかは別者だからだ)。これをありとあらゆるハザードについて答えられるようにするというのが私の方針だったのだ。

 

ただ、この方法の限界は、知らない現場については字面で理解したこと以上には分からないということ。現場経験に勝るものは無いのだ。

 

そうして、すべてのハザードに対する発生状況とリスク低減措置を挙げるに至った。

 

 

コラム⑤ ~こんな勉強、意味あるの?~

 

これを見ておられる受験生の方は、こんな勉強は果たして必要なのか?時間をかける必要があるのか?と首を傾げた方も多数おられることだろう。

 

口述試験対策としては、よく聞かれることを想定問答集としてリストアップし、その回答を考え、その内容を覚えて、本番でスラスラと言えたらよいのではないかと。

 

私も最初は同じように考えていた。単に試験に受かるだけならそれでもよいでしょう。それが恐らく近道だから。

 

しかし、私は「労働基準法第75条第2項、労働基準法施行規則第35条および別表第1の2の意味と、そこに書かれたハザードへの対応が労働衛生コンサルタントの役目」だと気づいたので、そこで意識がガラッと変わった。

 

従来の考え方でコンサルタント試験に合格しても、果たしてコンサルタント業がこなせるのか?と自問自答した。

 

意識が変わったお馬鹿な私は「NO」と答えた。

 

「まずは試験に合格しないと話にならない」「試験に合格した後に自己研鑽すればよいではないか」などなど、いろんな考え方があると思う。保健衛生区分で筆記試験全免除の方には、その傾向は強いのではないかと勝手に想像する(お馬鹿な私の個人の感想なのでご容赦下さいませ)。

 

今回、この勉強は、自分に欠けていた知識をupさせるために実施したに過ぎない。勿論、日常業務である程度理解していたハザードもあれば、振動や騒音のように馴染のなかったものもある。

 

口述試験はコンサルタントとしての適性を判断される試験だという人がいる。私も勉強を重ねる度にそう思えるようになってきた。単に、覚えたことをスラスラ言えるだけではだめなのではと。

 

試験官は、口述試験で受験生の話を聞いたら、その受験生が覚えたことを単に話しているだけなのか、経験に基づき話しているのか、考えながら話しているのかはすぐに分かるという人もいる。

 

そう考えたとき、対象とするハザードの範囲とその発生状況、リスク低減措置を最初に押さえておく必要があると考えて一から勉強することにした。

 

各種ハザードに精通している人はこんなことを一から勉強する必要はない。受験前にささっと勉強すれば済む頭の良い人も多数居るだろう。

 

それに比べ、お馬鹿な私は、筆記試験が終わって口述試験の準備をするこの段階で初めてコンサルタントとしてカバーすべきハザードの範囲が分かったのだ。

 

また、その勉強方法も、相当な回り道をしながらここに至っている。ただ、回り道をした分、何度も何度も繰り返し情報に触れて、それが知識として身になったという実感がある。それを考えるとこの勉強をして本当に良かったと思えた。

 

なので、ここに書いている勉強法はあくまで参考として扱って下さい。

 

コラム⑥ ~筆記試験に合格!!~

 

とうとう12月21日の筆記試験の合格発表日を迎えた。

 

筆記試験終了直後は五分五分かな~と考えていたが、合格発表の前週にたまたまあるサイトで模範解答が掲載されているのを見てショックを受けていた。つまり、衛生工学の圧損計算問題で正解だと思っていた問題で間違っていたことに気付いたのだ。もともと五分五分ぐらいと思っていたから、多分、今年はダメだなと思って少し落ち込んでいた。

 

12月21日もいつもと同様、貧乏暇なしのせわしない一日を過ごしており、よやうく昼休みに時間ができたので、厚生労働省のHPで合格者番号を見た。

 

なんと、私の受験番号が掲載されているではないか!!

 

多分ダメだと諦めていたので、我が目を疑い、何度も何度も見返したが間違いない。誤って違う試験区分のところを見ているのではないか、昨年の結果を見ているのではないか?とかなり疑心暗鬼になり、何度も何度も確認したがやはり間違いない。

 

いやいや厚生労働省から届くという「口述試験受験票」のハガキを見るまでは安心できないと思いつつ、心の声は「やったー!!」という気持ちが最初の1分ぐらいあった。しかし、すぐに冷静になり「口述試験まで時間が無い、やばい(汗)」という焦りに変わっていった。

 

帰宅後、裸眼視力0.1未満のお馬鹿な私の眼が間違っていないことを視力1.5のパートナーにHPで確認してもらったところ「大丈夫だよ💛」とのこと。後日「口述試験受験票」はがきが届いて無事合格を確認できた!!

 

改めて合格者一覧の結果を見ると、試験区分/労働衛生工学の合格者は24人だった。令和元年度の合格者が73名だったので、今回はその1/3程度となる。ちなみに保健衛生は今回86名合格(令和元年度は97名)だったので、若干の減少はあるがさほど変化なし。

 

近畿会場だけの話になるが、受験番号と試験会場の席順から推察すると、近畿会場で私と同じ部屋で受験した人が32名居たはずで、合格者は私を入れて4名のみ(合格率13%)。そのうち、筆記試験の全科目受験者は私を含め8名居たがそのうちの3名が合格した(合格率38%)。一方、衛生一般と関係法令の科目免除者は24名居たがそのうちの1名しか合格していなかったことになる(合格率4%)。

 

この科目免除者の合格率4%は何を意味しているのだろうか?

 

受験生のレベルが単に低かった?

専門科目の労働衛生工学が相当難しかった?

はたまたその他の理由か?

合格基準は「総得点のおおむね60%以上であること」と例年と変わらないから、近畿会場での事実としてあるのは、衛生一般と関係法令の科目免除者は専門科目の労働衛生工学で合格基準に達していなかった人が24名中23名ということ。

 

これは推測でしかないが、科目免除者はそれなりの資格要件を満たして科目免除の権利を得ている方達であるため、レベルが低いとは到底思えない。

 

コロナ禍によるコンサルタント会による事前講習会の中止(確か中止だったと思う)は合格率に多少影響したかもしれない。過去、事前講習会に参加した人とそうでない人での合格率について調査した結果があるのか否かは知らないが、出席することで多少は合格に近づくことが予想されるからだ。そう考えると、事前講習会未受講の影響があるとするならば、どちらの受験者にも等しく合格率が下がる影響が現れるはずと予想されるが、事実としては科目免除者の合格率だけが低った(科目免除者と全科目受験者では母数が違うため影響の度合いにバラツキはあると思うが)。

 

そうなると、一番の要因は専門科目の労働衛生工学が相当難しかったためではないかと想像される。このことは私自身が試験を受けた実感だからとしか言えないのだが。

 

私の場合、前述の通り、専門科目では60%獲れていないと思う。正答と配点が公表されていないので定かではないが多分間違いない。その分、衛生一般で80%以上獲れたアドバンテージが効いたと思われる。関係法令は60%ギリギリだった。合格基準の「総得点のおおむね60%以上であること」に加え「1科目につき、その満点の40%未満のものがある場合は不合格になります」からすると、専門科目では40%以上はなんとか獲れていたものの、恐らく60%は獲れていなかったと思われ、その不足分を衛生一般のアドバンテージがカバーしてくれた結果、総得点のおおむね60%以上に達したものと考えられる。

 

これが事実ならば、コロナ禍での色々な出来事が重なったとは言え、今更ながら、作業環境測定士の登録講習を無理して受講せず、筆記試験の一部免除を受けずに筆記試験に臨んで良かったと思った。その結果、衛生一般や関係法令もそれなりに勉強して知識UPできたし、筆記試験合格という良い結果に繋がった。

 

点数としては、多分ギリギリだったとは思うけど(汗)、合格は合格。口述試験に向けて頑張れるし、自信にも繋がった。

 

筆記試験に合格したことでやる気もUPし、課題2のハザードとその対策列挙のまとめを進めた。

 

しかし、当初の予定よりもかなり時間を要す結果となったため、赤字の通りに予定を変更した。

 

2020年11月末まで➡12月末までかかった   :課題2克服

2020年12月末まで➡12月末から作り始めた :課題1で想定問答集を作成完了。課題3の内容も想定問答集に盛り込む。

2021年1月受験日まで:想定問答集を繰り返し実施し、覚える

 

課題2をクリアーしたら、課題1の想定問答集作成と課題3をこなしつつ、想定問答集を覚える段取りだった。課題2さえやってしまえば想定問答集作成は事務作業なのでさほど時間はかからないだろうと考えていたこともあった。しかし、さすがに12月末(口述試験本番まであと3週間)から想定問答集を作ることになってしまい、相当に焦りを感じるようになった(超汗)。

 

救いなのは、年末年始に9連休があったこと。そして、業務スケジュールを調整し、年始の3連休に有休1日を付けて1月8日から11日を4連休とし、さらに同じく次週の週末に有休を1日付けて1月15日から18日を3連休としたこと。平日は相変わらず忙しくてほとんど勉強時間が確保できなかったので、この連休が勝負だと思った。

 

結果的に、課題2のハザードとその対策列挙が終わったのは2020年12月29日(口述試験まで残り21日)だった。

 

(3)課題1への対応/想定問答集作り

 

課題2の最終盤に課題1の想定問答集作りを並行して進めた。

 

想定問答集作りは、まず、想定質問のリストアップを先に進め、その後に想定回答を作っていく流れで行った。

 

想定質問のリストアップは、受験動機、現在の職務、衛生の実務体験など、必ず問われるという基本事項をリストアップし、それから、作業環境測定、局排関係、保護具など分野毎の想定される質問のリストアップ、また、課題2で作成したハザード毎のリスク低減措置を基に進めていった。

 

ただ、口述試験では何を聞かれるか分からないから、お馬鹿かつ「心配性」な私は、筆記試験で学習した知識も復習の意味を込めて質問形式で全てリストアップして知識の定着化に努めた。

 

何度も同じことを書くが、想定問答集作りは事務作業だから簡単に終わると思っていた。ところがどっこい、この作業も一朝一夕には進まなかった。理由は、あれも聞かれるかもしれない、これも聞かれるかも、という風にどんどんボリュームが大きくなり、後で聞かれる可能性が少ないものは省けば良いと思いながら、最後には400問以上の想定問答集となったからだった。また、筆記試験で学習した知識も復習の意味を込めて質問形式で全てリストアップする際には、回答を事細かにいちいち調べ直したことも時間がかかった要因だった。

 

課題2で作成したハザードとその発生状況、リスク低減措置についても、一旦は、年末までにまとめたが、この想定問答集作りの中で何度も見返し、内容に不明点や不備があれば、法令に立ち返り、さらに、対策を調べるのに参考図書を見て細かな修正を加えたり、新たな情報を得て修正したりを繰り返した。これにも相当の時間を要した。

 

もうお分かりだろうが、結果的には、この繰り返し作業が、ハザード毎のリスク低減措置の知識やその他諸々の知識の定着化に大いに貢献した。かっこ良く言うなら「急がば回れ」、別の言い方だと「もっと前にやっとけよ!!」「一旦覚えたことは忘れんなよ!!」ということだ。お馬鹿な私なので許してチョンマゲ(昭和・・・汗)。

 

結局、想定問答集が完成したのは2021年1月9日だった。口述試験まで残り10日(超超汗!)。

 

ここからは、想定問答集を覚える段階になった。残り10日で覚えられるのかな~と超焦りを覚えながら、「問1から順に作成した回答を声に出して言う➡回答の内容をチェック➡回答修正」を1周として、周回を重ねることにした。

 

ところが、これが意外に進まない・・・(汗)。最初の1周目に1日、2周目も1日かかってしまった。何故進まないかというと、回答をいちいち修正するから。2周目終了時が1月10日AMで口述試験まで残り9日。

 

(はいはい、分かっていますよ、賢明な読者諸氏は「なんでいちいち回答を修正すんねん!!時間が無いのに!!」と突っ込みたいでしょう。これについても後で書きますよ!!)

 

ちなみに1月8日~11日は有休1日を加えたので4連休となり、私の中では「勝負の4日間」と位置付けていた(この頃、小池知事がコロナ禍で「勝負の3週間」と言っていたのを真似しただけという説もあり・・汗)。

 

その「勝負の4日間」の3日目午前中(つまり1月10日AM)が終わっても2周目しか終わっておらずの始末。あ~大丈夫なのだろうか、と本当に焦り始めたその日の午後(1月10日PM)にさらにそれに追い打ちをかける事態が発生した!!

 

それは3周目のこと。

 

3周目からパートナーに試験官役になってもらい、パートナーに質問を口頭で言ってもらい、それに想定問答集を見ずに回答する練習を開始した時だった。

 

なんと、満足に答えられないのである。

 

各質問への回答は1,2周目で修正を繰り返したので、練りに練ったと自負していた。いろいろな定義も頭の中では理解したつもりだった。ハザード毎のリスク低減措置も理解したつもりだった。しかし、いざ用意した質問を言ってもらい、用意した回答を口で言うだけなのに、口からスラスラ出てこない・・・。

 

言えたとしても「・・・、えーっと、・・・」と言った調子で、3割ぐらいしかまともに答えられない。パートナーはこの分野の素人なので、用意した質問や回答の意味はさっぱり分かっていない。そのパートナーからも「5割ぐらい言えてなかったね💛」と言われた(パートナーはいつも優しくこの時も3割ぐらいしか言えてないのに敢えて5割と盛って言ってくれたのだった、love注入)。

 

「ガーン↓ 現実は厳しいか~」

 

この日、パートナーに試験官役になってもらう練習は3周目の途中まで実施した。「勝負の4日間」の3日目となる1月10日が終了。口述試験まで残り9日(超超超汗)。

 

「勝負の4日間」の最終4日目となる1月11日を迎えた。

 

翌日からの1/12~14の平日を挟んで、口述試験直前の最後のお休みとなる3連休(1/15を有休とした1/15~17の3連休)がある。この最後の3連休は「総仕上げの3日間」と位置付けていた。その前の平日1/12~14は普通に仕事をするので、勉強時間がほとんど確保できない見込み。

 

「総仕上げの3日間」をその名の通り「総仕上げ」にするためには、何としても「勝負の4日間」の最終4日目となる1月11日で、ある程度の感触を掴むところまで行くように有意義に過ごさねばならないという焦りを強く感じつつ、この日を迎えた。

 

でも、やることはこれまでと同じく想定問答集の周回を重ねることしかできない。特効薬はない。試験官役のパートナーは夕方まで仕事だったから、夜にしか試験官役ができない。しかも2時間だけ。

 

ということで、前日の3周目の続きから一人で再開することにしたが、その前に「試験合格への手引き」(参考図書#1)の第1章「労働安全・労働衛生コンサルタント制度について」、第2章「労働安全・労働衛生コンサルタントに求められる資質と能力」を再読することにした。

 

「オイオイ、なんで今更こんな悠長なことをしているんだ(怒)!!」と賢明な読者の方に怒られそうだが、この再読は思い付きでやった訳ではなく、「勝負の4日間」のスケジュールを立てた時からやる予定だったこと。

 

何で今更ここを再読する予定にしていたかというと、特に第1章「労働安全・労働衛生コンサルタント制度について」を最初に読んだときに感銘を受けたからだ。それと、第2章「労働安全・労働衛生コンサルタントに求められる資質と能力」を再読することでコンサルタントに求められることを振り返ることができると思ったからだ。

 

このことが、行き詰っていたお馬鹿な私の転機になった。

 

試験勉強に没頭していると、ともすれば、何のために勉強しているのか目的や目標が不明瞭になることが往々にしてある。勿論、試験に合格するためが目的なのだが、この労働衛生コンサルタント試験については、勉強を重ねていくうちにそうではないことに自分で気づきはじめていたのだった。

 

途中にも記したが、試験に合格してコンサルタントになるのは目的ではなく目標。

 

つまり、「合格は通過点」。

 

私にとってコンサルタントは将来の仕事として位置付けており、困っている中小企業の経営者、衛生担当者などのクライアントに対し、的確なコンサルティングができないといけない。しかも、この道で生きていくならば、こんなお馬鹿な私でもコンサルタントとして何度も指名してもらい、「あなたに任せたら私の会社も大丈夫だ」と言ってもらうことが大事で、それが口コミで伝わって評判となるようにならないといけない。そうしないと経済的にもしんどいしね。

 

これらのことを強く認識させてくれたのが、まさに「試験合格への手引き」(参考図書#1)の第1章、第2章なのだ。最初に読んだその時の感動と労働衛生コンサルタントに求められる資質を理解させてくれた羅針盤がまさにこの部分なのだ。

 

これを再読することで、改めて羅針盤を確認して自分の目指すべき方向性を見失わずに確認する必要があると思い、この段階で「試験合格への手引き」(参考図書#1)の第1章、第2章を再読するスケジュールにしていた。

 

「試験合格への手引き」(参考図書#1)はあまり役に立たなかったという評判を聞いたことがある。しかし、私にはバイブルのようなありがたい存在なのだ。

 

前置きが長くなったが、そういったことで、第1章、第2章を読み返した。その結果、意識がさらにガラリと変わった!!

 

口述試験はコンサルティング能力を試されるためにある。

想定問答集で覚えた知識を単に間違いなく言うだけではダメだ。

想定問答集に無いことを問われたらどうするのだ。

試験官は中小企業の経営者であり衛生担当者でもあるのだ。

彼らに対して私はコンサルタントとして正々堂々コンサルティングを行うのだ。

何を聞かれても問われても、これまでの経験と蓄えた知識を基に立派にコンサルティングしてやるぞ!!

 

これは美化している訳でも何でもなく、本当にそう思った事実そのままである。

 

これで気持ちがすーっと楽になり、超前向きになった。

 

想定問答集の回答を覚えることを止めて、単に作った質問を見て、想定回答をベースに自分なりに頭で考えて答えることだけをシンプルにやることにした。

 

用意した回答をベースにはするが、その通りに答えることは止めて、言い回しはその場その場で考えることにした。また、想定問答集の回答をいちいち修正することも一切止めた。3周目の途中までは、想定問答集を完璧に仕上げることが目的になっていたような気がしたからだ。

 

この日の夜、パートナーに前日と同じ部分の質問をしてもらい、自分なりに考えて回答することにした。すると、何と、8割ぐらい自信を持って回答することができた。パートナーも前日との違いにびっくりした様子で「今日は良かったよ💛」の弁(ここだけ見ると変な意味に聞こえるな~)。

 

1日で自分がこうも変わるものかと思った瞬間であり、今日感じた心境の変化は間違いではない!!正しい道を歩んでいるのだと強く思った。

 

こうして「勝負の4日間」を良い形で終えることができた!!

 

ようやく何とかなりそうだ、という手応えを掴んで1月11日が終了。口述試験まで残り8日(いつもの汗が出なくなっていた・・・)。

 

1/12~14の平日3日間は、仕事をある程度はセーブできたので、何とか定時過ぎに仕事を終えて帰宅できた。そのおかげで1日に1周、想定問答集の周回を4,5,6周目と、重要部分のみではあるが、夕食後にパートナーに試験官役になってもらいQ&Aを繰り返した。

 

そして、いよいよ「総仕上げの3日間」と位置付けた1/15~17を迎えることになった。

 

想定問答集の回答をいちいち修正することは止めたのだが、実は、この段階になっても想定質問の追加をちまちま繰り返していた。想定問答集の周回を重ねると自分なりの言葉で回答しているうちに関連して気になることが次から次に出てきたからだ。

 

例えば、「防音保護具について説明して下さい」という想定質問に対して想定回答をする。それを繰り返していると、どんな時に防音保護具は着用するのだろうか?という素朴な疑問にぶち当たる。調べた回答としては「騒音の作業環境測定で第3管理区分となった場合、第2管理区分となった場合は必要に応じて着用」となる。折角調べたのだから、想定問答集に派生質問とその回答として載せておこうか、となる。こういう具合にさらに想定問答集が膨らんでいった。

 

こう書くと、覚えることが多すぎて困らないか?となるが、先に書いた通り、この段階では、「口述試験ではコンサルティングをするのだ」という気持ちに昇華し、さらに言うと「試験に合格するのは単なる通過点であり、将来のクライアントへのコンサルティングが今からできるようにしておくのだ」という自分自身の感覚が未来将来に向けて研ぎ澄まされつつあったので、少しぐらい覚えることが増えようが何のことはないという気持ちになっていた。

 

むしろ、覚えていく度に知識になっていく実感があったから、勉強自体が楽しくなっていた。これは、綺麗ごとのように聞こえるかもしれないが、資格試験や何かにチャレンジする際の終盤にいつも感じる自己感覚で、自分では非常に心地よい状態だ。かっこ良くいうと「ゾーンに入った状態」だったのかもしれない。

 

また、口述試験の過去問として労働衛生工学について散見されるぐらいしか情報がないことを確認していたが、やはり気になって空き時間で検索していると少しは情報がヒットした。それらをヒントにして、こんなこと聞かれたらどう答えるかな、と考えては想定問答集に追加したりした。

 

そして、想定問答集は最終的には450問を超えることとなった。

 

最初の段階では、この中から質問を絞る予定だったが、結局それはしなかった。少なくとも、用意した質問には答えられるようになっておきたかったからだ。

 

また、口述試験ではコンサルティングをするのだという意識に変わってからは、何を聞かれるかはあまり気にならなくなった。

 

これまでの勉強の中で、労働衛生で大事なポイントとして「OSHMS、リスクアセスメント、労働衛生の3管理、作業環境測定、リスク低減措置の優先順位、それらに基づき、関連するハザード毎のリスク低減措置」を大体理解したつもりだったからだ。その知識の引き出しを開けて必要な情報を組み合わせれば、どんな質問を問われてもある程度は答えられるという自信が生まれていたからだ。

 

そして、そんな自分に自信を持ってコンサルティングをすることが大事だという気持ちに変わってきていた。

 

ただ、こう書くと順調に進んだように見えるが、失敗談というか、口述試験まであと何日というこの段階でようやく理解できた、あるいは、初めて知ったということもいくつかあった。ほんとお馬鹿な私!!

 

コラム⑦ ~本当に超お馬鹿な私~

 

1月12日(口述試験まで残り7日)にようやく理解できたこととして当時自分の記録として残したことをそのまま記載したのが以下の内容。

 

「労働衛生の3管理「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の真の意義、それぞれの関係が、「労働衛生の知識」(参考図書#22)での沼野先生の解説を再読してよく理解できたこと。特に「作業環境管理」は作業環境測定とセットで考えるとよく理解できた。

 

さらに、これら3管理と「労働衛生管理体制の確立」「労働衛生教育」の5本柱が重要で、OSHMSで最初にリスクアセスメントを行い、リスク低減の優先順位を検討し実施すること。リスク低減の優先順位は「1.ハザードを除去、低減する措置、2.工学的対策、3.管理的対策、4.保護具」である。これらが労働衛生対策の全ての基本であることが理解できた!!この考えを各ハザード対策に応用すれば良いだけなのが分かった!!」

 

という具合。

 

個々の労働衛生の3管理、作業環境測定、OSHMS、リスク低減の優先順位の個々のことは、勿論それなりに理解していたつもりだった。重要点だからね。しかし、それらが繋がりを持って、全体像がくっきり見えたのがまさにこの時点だった。それぞれの点が線になり円になった感触を得た瞬間だった。

 

もっと生き恥をさらすと以下のようなこともあった。

 

1月16日(口述試験まで残り3日)にようやく分かったこと、として当時自分の記録として残したことをそのまま記載したのが以下の内容。

 

「作業環境測定の第2評価値が第1評価値よりも小さいこと、管理区分の決定で「第2評価値<第1評価値」という前提であることが何と今になって分かった!!これが分かったので「第1管理区分が当該単位作業場所のほとんど(95%以上)の場所で気中有害物質の濃度が管理濃度を超えない状態」は「第1評価値<管理濃度」ということ、第2管理区分が「当該単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない状態」は「第2評価値≦<管理濃度≦第1評価値」ということ、第3管理区分が「当該単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状態」は「管理濃度<第2評価値」を理解できた!!」

 

という具合。

 

お馬鹿だよね~、ほんと超お馬鹿だよね~。これ読んだ300%の人は失笑するよね~。

 

何でこんなことをこの時点まで分かっていなかったかというと、「第1評価値と第2評価値を自分で実際に計算したことが無かったから」に尽きる。実務では、測定を外注しており、第1管理区分以外は1回しか出たことが無く、また、第1管理区分もほとんどが検出限界値未満だった。第1管理区分という結果に安心してしまって、個々の評価値の数値は一見する程度だった。

 

計算したことが無かったから、「第2評価値>第1評価値」と勝手に思い込んでいた。

つまり、第1より第2の方が、数値が大きいイメージを勝手に持っていたということ。

 

「第1評価値、第2評価値の定義を見たらそんなこと中学生でも分かるでしょ、馬鹿者っ!!」と賢明かつ真剣に受験に挑もうとされている方々に真剣に怒られそうだが、ほんと、その通り。

 

言葉では定義を言えても中身を理解していないとこうなるという見本。

 

それと、実際に自分で手を動かして実地経験を積むということの大事さ。

 

口述試験では実地経験を問われると言うが、その実地経験を積んでないからこういうことになる。頭で簡単に理解できる人は良いだろうけど、私のようなお馬鹿さんには実地経験が大事なことがよく分かった瞬間だった。

 

これでよく第2種作業環境測定士試験に受かったよね~。よく労働衛生コンサルタントの筆記試験に合格できたよね~。奇跡じゃっ。

 

でもでも、私はこれで良かったと思っている。

 

気づけた者が勝ち。気づけない者はその事実にすら永遠に気づけない。

 

こんなお馬鹿な気づきでも、気づかなかったらそれまで。何で気づいたかいうと、実務経験が足りないと感じて、試しに第1評価値と第2評価値を自分で実際に計算したから。

 

「わお、第2評価値の方が第1評価値よりも小さいじゃん!!」。

 

他人から見てお馬鹿と思えることでも、逆に高度なことであっても、目の前を通りすぎるのを気づかずにいればそれまでよん。

 

気づいた自分を褒めてあげようよ。

そうすれば人生、常に前向きで生きていける、キラキラ☆彡

 

ということで、本当に超お馬鹿な私の生き恥さらしコーナーでした。

 

 

さてさて、「総仕上げの3日間」は、余裕を見て、中日の1月16日(土)(口述試験まで残り3日)に総仕上げを完了するべく予定を組んだ。というのも、1月19日(火)が口述試験日で、その前日の1月18日(月)は出勤日のためほとんど勉強できないし、持ち物の最終チェックだけして早く寝ようと考えていた。

 

そうかと言って、総仕上げの3日間の最終日となる1月17日(日)を総仕上げ完了日にすると、もし、仕上げができなかった時に相当焦ることになるから、余裕を見て1月16日(土)を総仕上げ日にしたのだ。

 

そして、「総仕上げの3日間」を以下のように過ごした。

 

1月15日 想定問答集7周目の半分を自分で実施、残り半分をパートナーに試験官役になってもらい実施

1月16日 想定問答集8周目を前日と同様にして最終仕上げ完了

1月17日 前日の良い感触を崩さない程度にポイント箇所のみ想定問答集9周目を実施しつつ、私のバイブル「試験合格への手引き」(参考図書#1)の第1章、第2章を再読。

 

結局、想定問答集は9周しかしなかった。

 

「試験合格への手引き」の合格体験記では、「一日に20周を日課とした」なんて方も居られたので(最終的には何百周したんやろ?)、9周は明らかに少ないように思う。

 

恐らく、口述試験の正攻法は、作成した想定問答集から問われる可能性の高いものだけを残し、それを必死に覚えることだと思う。

 

「勝負の4日間」(1/8~11)のところで記載したとおり、覚えることよりも自分で考えて答えることが大事で、それができるようになった感触を得てからは、周回数は全く気にしなくなった。また、想定問答集の質問数を結果的に削らず400問以上としたことも周回数が少なかった要因の一つだったと思う。

 

さて、こうして書くと最終の仕上げも順調にいったように見えるが、最後まで悩んだことがある。それは、実地経験を問われた際にどう答えるかである。

 

口述試験では実地経験について必ず問われるという。そしてその経験の有無が大きな意味を持つという。

 

これまでの実務経験年数や実際にこなしてきた業務経験自体は変えられない事実なのだが、事前に試験官が知り得ている情報は受験申請書に記入した経験年数のみである。その中での実地経験については口述試験で初めて試験官が知り得る情報であり、そこからさらに派生して突っ込んだ質疑が交わされると言う。

 

では、その実地経験をどのように伝えれば「こいつ、経験が有るな」と認識してもらえるのか?それが課題だとずっと感じていた。

 

繰り返すが、これまでの実務経験年数や実際にこなしてきた業務経験自体は変えられない事実だから、その事実をどう伝えるのかがポイントとなる。

 

ここでも私はかなり遠回りしたことになる。

 

当初、想定問答集に記載していた実地経験の内容は、後から考えると明らかに内容が希薄でそれを聞いても経験を推しはかれずストロングポイントの無い内容だった。これでいいのかな~と何度も自問自答していたが、それ以上に膨らませるのは難しいなあ、などと考えていた。

 

ただ、ふとした瞬間に、あっそう言えば、こんなこともやっているけど、これは言っても良いのかな~と思うことがあった。

 

何が言いたいかというと、自分自身で、経験したことについての勝手な基準を設定していたことに気付いたということ。こんなことは大した実地経験ではないから言ってもしょうがない、とか、実務としてルーチンワークの中で淡々とやったことだしこれもわざわざ経験として挙げるほどのことでもないやろ、と勝手に「言わないことの基準」を作ってしまっていたことに気付いた。

 

そこで、その基準を無くし、ゼロベースで考えてみた。

 

「労働基準法施行規則第35条および別表第1の2」に規定される各ハザードについて、自分でやった対策を挙げていく。併せて労働安全衛生法や施行規則で定められたものについても同様に挙げていく。

 

そうすると、芋づる式にあれやこれやとやったことが出てきた。そうしていくうちに、今度は逆に簡潔にまとめて説明するには何を削ったらよいだろうかと逆の悩みが出てくるようになった。

 

結局、やったことの事実として、試験官が聞いてインパクトがある(だろうと思う)内容にまとめて整理したのだが、これについてもカチッとした説明文は決めずに、口述試験で問われた質問に対して単純に答えようと考えた。つまり、口述試験では実地経験をどのような形式で問われるか分からないからだ。

 

単に「実地経験は?」「改善した事例は?」と聞かれるケースもあれば「局排設計の経験はあるか?」「有機溶剤、特化物関係での改善事例は?」と具体的な経験を問われるケースもあるようだ。

 

それらに柔軟に答えるには説明文をあらかじめ固定せずに、挙げるべき事例の中から必要な部分のみを整理して答えたらよいと思うことにした。

 

さらに少し策を練ることにした。

 

この資格にチャレンジする受験生はそれなりに経験豊富な方々ばかりのはず。そんな方々よりも自分をアピールできる方法は無いかと考えたのだ。なぜアピールしたかったかというと、コンサルタントとしての自分を何度も氏名してもらうためにはどのように自分をアピールしたらよいのか?と考えたからだ。

 

何でそう考えたのかというと、競合するコンサルタントの中で自分を目立たせる必要があると考えたからだ。

 

将来コンサルタントになった時にクライアントに何度も指名してもらい、「あなたに任せたら私の会社も大丈夫だ」と言ってもらうことが大事と思っていることは先に書いた通り。

 

そのためにはコンサルティングの実力が第一ではあるが、さらに、話題や話術も自らの魅力を伝える大事な手段だと思ったからだ。

 

そのため、ここでは「自らを魅力的に見せる話題」、すなわち、「実地経験」を短時間でより良く見せる工夫がいる。

 

結果、実地経験として「電離放射線関係の実務経験」を挙げることにした。電離放射線の経験のある受験生は恐らく少数派だろうからと想定し、試験官にも興味を持っていただけるのではないか、この分野で派生質問をしてくれたらこちらの得意分野だから他の分野に比べて少しは有利に答えられるかもしれない、という気持ちもあった。よく聞かれるという「局排の設計をした経験は?」と問われて、簡単に「ありません」という回答を回避したかったという思惑もある。

 

ただ、自分は知っているつもりでも、試験官はそれ以上にご存じだと思うから、突っ込まれて玉砕する可能性は大いにある。

 

ということで、実務経験を問われたら、電離放射線のことも含めて言うことに決めた。

 

試験前日となる1月18日(月)は平日だったのでいつも通り出勤し、少し早めに帰宅するつもりだったが、トラブル発生で早く帰れず(涙)、結局、いつもより遅めに帰宅(やっぱり仕上げを週末にやっておいてよかった)。予定通り、持ち物の最終チェックと翌日の行動計画を再確認して、早めに就寝し、翌日に備えた。が、緊張していたのか寝つきは良くなかった(久々に汗)。

 

コラム⑧ ~口述試験会場は東京or大阪、どちらが良い?~

 

今回は、口述試験会場は東京と大阪、どちらが良いのか?という話。

 

筆記試験に合格した時に合格者のみに届くという郵便はがきが安全衛生技術試験協会から合格発表から4日後ぐらいに届きました。「労働衛生コンサルタント試験口述試験受験票」とタイトルが書かれており、その下に試験区分、受験区分等が掲載されています。ちなみに、どこにも筆記試験合格とは書かれていません(少し寂しい)。

 

ここで口述試験の試験日時を知る訳ですが、当然ながら試験会場も記載されています。試験会場は申込段階で申告しているため当然変更できませんし、申告した本人も心得ています。

 

ただ、東京と大阪では試験日に大きな開きがあります。今回だと、

 

大阪:2021年1月19、20日

東京:2021年2月2日~2月4日

 

私は近畿在住なので、試験申込時に何も考えずに大阪会場を選択したのですが、よく考えると東京会場という選択肢もあったのだとこの時点ではじめて思いました。

 

筆記試験は全国の各試験会場で同時に実施されますが、口述試験は東京か大阪かの違いで受験日に2週間もの差があります。これは受験生にとって有利、不利はあるのかどうか?

 

私は口述試験の勉強を進めるうちに、勉強時間が長くとれる東京会場を選択した方が有利ではないかと思いました。口述試験の準備では佳境に入ってくると知識も意識も段違いにアップしたと私自身が感じました。なので、2週間あればさらにそれをアップさせることができるかもしれません。

 

勿論、2週間分の勉強時間が短くなる分、東京に比べて、大阪での受験生への配慮として合格率が高くなることはきっとないでしょう(本当はあってほしいのだけど)。

 

また、大阪会場で口述試験を受けた人が東京会場での口述試験が開始されるまでに、実際に自分が聞かれた内容を公表するケースがあります。今回もそのようなケースを散見しました。

 

このことは果たして東京会場で受験する人に有利に働くのかというと、実際のところは分かりません。一見すると、有利にも見えますが、その情報に踊らされる可能性もあるでしょうから。

 

口述試験で聞かれる質問内容は結果的には年度や試験場所には依存せず、同じようなことを聞かれているケースが多いようです。ですから、たかだか試験前2週間の間に受験した人の情報を聞いて役立つかというと必ずしもそうではないだろうなと思います。試験官も毎年全員に全く同じ質問をする訳ではないしょうから。一つのケースを除いて。

 

その一つのケースは何かというと、その年度に限って、あるいは、その年度だから質問されることがあった場合です。例えば、直近で法令改正があったとか、世間を騒がせる事故があったとかです。

 

今回、私はその可能性があると思っていました。それは「コロナ」に特化した質問です。

 

想定質問にはいくつかコロナに特化した想定問答を入れました。例えば、「コロナ下でリモートワークが増えた時に労働衛生上、気をつけるべきことは?」「労働衛生委員会をリモートで実施する際に気をつけるべきことは?」などです。

 

(これら用意したコロナ禍での質問対策は見事に空振りに終わりましたが、実はコロナ禍だからこそ口述試験で質問された(と私は勝手に思っている)ことが1問ありました。それについては「5. 口述試験の受験」で詳しく記載しております。)

 

ということで、その時々に特化した質問が出て、それを東京会場での受験前に公表すれば多少は心構えや準備ができるかもしれません。

 

これから受験を考えている人は、東京と大阪のどちらを選択するかは一考の価値がありそうです。

 

 

コラム⑨ ~勉強時間~

 

試験勉強の時間として試験準備中にトータルで何時間かける、とか、一日何時間勉強するということはあまり意識しなかった。時間より、何をするかに力点を置いていたことと、基本的な生活リズムを変えたくなかったからだ。

 

そうすると早くから勉強にとりかかる必要がある。そのため、第2種作業環境測定士試験の勉強から始めたので、それなりに早めに勉強に取り掛かれたと思う。

 

一方で、勉強期間が長くなることで「中だるみ」を何回も経験した。今日はこれでいいかっ、となる訳だ。ただ、これができたのは試験まで十分に時間があった時期だけ。

 

ちなみに基本の生活リズムは、夜22時に寝て、朝4時に起きるというリズムだ(家族からは完全に老人のリズムと言われている、でも仕方ないじゃない家事があるんだからという反論を家族は聞きいれない一抹の寂しさ・・)。寝るのは夕飯を食べてから最低1.5時間空けてからにしていたので(胃がもたれるから)、20時半には夕飯を食べ終えていなければならない。

 

しかし、いつもこんな風にできるわけではなく、週末に向かって仕事が溜まっていき、終電で帰宅ということもよくあるため、あくまでこの基本のリズムは崩さないことを心掛けていたに過ぎない。これは試験のためではなく、以前からの習慣であり、土日もこのリズムは崩さない。

 

では、実際にどれくらいの勉強時間だったかというと、平日は往復の通勤時間の中で約1.5時間のみ。筆記と口述試験の各1か月前くらいからは、帰宅後に夕飯を食べてから0.5~1時間程度だったので、平日は計2~2.5時間だった。

 

休日は概ね午前に3時間程度、午後に3時間程度だったと思う。平日に勉強時間があまり確保できないため、本来は休日勝負となるべきでもっと勉強した方がよかったが、週末に向かうにつれて仕事の疲れが溜まっていき、土曜日はほぼ身体が言うことを聞かず休養にあてることが多かったため、思い通り進まないことも多かった。

 

この反省を生かし、口述試験の勉強に入ってからは、休日は8~12時、14~18時に勉強するというスケジュールを組んだ。これにより、一日8時間を目途に勉強することにした。単純だが、時間を決めることでしっかり勉強できた感があった。

 

コラム⑩ ~勉強に身が入らない時は「行動ナッジ」~

 

勉強期間が長いと中だるみが起きてしまう。平日はほとんど勉強時間が取れなかったので、週末の休みにまとめて勉強せねばならないのに、身が入らない・・・。そんなことが多々あった。

 

そんな時に私がとったのは「行動ナッジ」だった。

 

「試験を1週間前に控えた私は、その時点での試験準備に満足しているだろうか?」

「せっかく休日1日を勉強に充てられるのに、今日1日を有意義に過ごせなかったら、夜、私はそのことにガッカリするはずだ」

「1時間後の私は、直前の1時間の時間の使い方に満足するだろうか?」

などと考える。

 

そうすると

「試験を1週間前に控えた私は、それまでの試験準備に十分満足していたい!!」

「せっかく勉強するつもりだった今日1日はしっかり勉強して有意義に過ごしたい!!では計画通り●●をやっておこう!!」

「これからの1時間は●●をやる計画だ。それをやることで理解が深まるはずだ。勉強しよう!!」

と思って、実際に机に向かうことができた。

 

「ナッジ」は、2017年にノーベル経済学賞を受賞されたRichard H.Thaler氏の行動経済学の理論だ。有名なのは、空港の殿方用の便器の中に1匹のハエの絵を描いたら、清掃費が激減した話。理由は、そのハエを的にするため、便器から漏れる尿が激減したためだ。

 

なーんだ、そんなことか、ということだけれど、こんなことで人間の行動が変わるのだ。まさに行動経済学。

 

ちなみに「行動ナッジ」は私の愛著「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン著)のP282にも記されているのでご参考まで。

 

「やる必要があるのは分かっている➡しかし仕事の疲れが溜まっていてやる気が出ない➡行動ナッジ!!➡この1時間頑張ってみる➡分かっていなかった●●が分かるようになった!!➡労働衛生の勉強面白い!!➡1時間頑張って良かった!!➡もっと勉強しよう!!」という好循環になればしめたもの。

 

この「行動ナッジ」は勉強以外にも応用できるからぜひ試してほしい。

 

 

5.口述試験の受験

 

(1)口述試験直前まで

 

ついに2021年1月19日の口述試験を迎えた。

 

僅か15分で全てが決する日だ。

 

当日はとても寒い日だった。雪による交通機関の乱れも予想されたが、幸い乱れは無く、試験会場には予定通り2時間前に着いた。

 

これまでの資格試験の通例だと、建物入口に試験会場は何階という案内表示板が出ているのだが今回は無かった。受付で聞いたら6階に行って下さいと言われたので早速向かった。

 

EVで6階に着くと、その正面に受付があり、早速検温された。一旦計ったのち、「計り直しますね」と言われたので「まさか」と焦ったが、どうやら冷たい外気の中を歩いてきたので、そのせいで通常より低く出たようだった。結果、異常なし。その後、「受験者留意事項」という1枚ものの資料が配布され、受験までの簡単な流れの説明を受けた。受付の横に、控室があり、試験開始まではそこで待つことにした。

 

恐らくだが、他階が労働安全コンサルタントの試験会場になっていたと思われる。6階の控室には労働衛生コンサルタント試験の受験者しかいなかったからだ。

 

控室には長机が3列×6行程度置かれており、コロナ禍の三蜜対策で机一つに椅子一つが置かれ、10名強の受験者が待機している感じだった。雰囲気としては、皆、落ち着きなくそわそわしているように見えた。特に保健衛生区分と思われる方1名が、誰が見ても落ち着きがない様子で立ったり座ったりを繰り返し、独り言をぶつぶつ言っていた。どう見ても貫禄十分のお医者様に見えたので、その様子を見て何だか安心したのだった。「みんな同じように緊張してるんやないか」と。

 

約20分ごとに誘導官が4名現れ、受験番号と試験区分を読み上げ、対象の受験者が手を挙げて、試験会場に誘導されていく流れとなっていることが分かった。つまり、試験会場は4会場あるようだった。また、読み上げを聞いていると、4名の誘導官のうち3名は保健衛生区分を読み上げていたので、保健衛生が3部屋、労働衛生工学が1部屋のようだった。

 

私は順番がくるまで持ってきた資料を見返すことにした。

当日の持参物は以下の通り。

 

・受験票、マスク、筆記用具(鉛筆、シャープペン、消しゴム)、老眼鏡、試験案内、IPAD、飲み物、お金、栄養ドリンク

・想定問答集、労働衛生のしおり、その他に何度も参照した参考図書数冊

・服装は、スーツ、ダウンコート

 

待っている間にもいろいろなことがあった。

 

誘導官が受験番号と試験区分を何度も読み上げているのに聞き逃して慌てて「もう一回言って下さい」と言って、誘導官に受験票を見せて番号を確認してもらっている方もおれば、誘導官が手を挙げた人の傍まで近寄ってきて、「実は保健衛生の受験予定者が欠席されることになったのですが、順番を繰り上げてこれから受験されるか、予定通りの時間まで待つかいずれにされますか?」と問われている保健衛生区分の受験者も居た。どう見ても貫禄十分のお医者様に見えた方も、そうこうしているうちに呼ばれて試験会場に消えていった。

 

そして、私の順番が来た。

 

指定された受験時間の5分前に呼ばれた。試験会場の外まで誘導された後、会場に入る前に誘導官からスマホ電源を切ったかの確認をされた。また、最後の説明として、部屋に入って荷物を置いからすぐに試験が始まると言われ、また、マスクは着用したまま試験が行われるとの説明を受けた。

 

(心の声「えっ、マスク着けたままやるの???」)

 

さすがに3密対策としてディスタンスは取ってあるだろうし、試験時はマスクを外して実施するものと想定していたので少し驚いた。

 

誘導官が試験会場の扉を開け、中の試験官に「開始して良いですか?」と聞いたのち、中に入るように促された。

 

指示を受けた通り、試験部屋に入り、所定場所に荷物を置いて椅子に座り、机に受験票を置いたら、すぐに口述試験がスタートした。

 

(2)口述試験開始

 

試験官は3名。試験官もマスクをしているので年齢や表情が良く分からない。中央の試験官をA、向かって左をB、右をCとする。試験官同士の間にはアクリル板が設けてあり、受験生の机と椅子とのソーシャルディスタンスも十分取られている様子だし、マスクなしの方がいいのになあとチラッと思ったが、気を取り直して、いざ口述試験に挑んだ。

 

以下に質疑応答内容を示す。Qは質問、Qに続く数字は質問番号、そのあとの括弧内のアルファベットはどの試験官からの質問かを示す。Ansが実際の私の回答で()内は心の声だ。ところどころ「●」としているのは個人情報などを含んでいるためご容赦下さい。

 

Q1(A)受験番号・試験の区分・氏名は?

Ans:受験番号は「●」、試験区分は「労働衛生工学」、「●」と申します。

 

Q2(A)労働衛生の経験年数は?

Ans:8年です。

(回答後Aが一旦手元の紙を見返す仕草をしたので)

昨年の申込時は7年と記載しましたが、1年経過したので8年となります。

(Aは「分かりました」と答えた)

 

Q3(A)労働衛生に関してこれまでどのようなことをしてきましたか?

Ans:労働安全衛生計画の企画、立案、実施、評価、改善に関する業務、作業環境測定では電離則関係で実施経験があり、特化則・有機則では外部機関への委託と結果の保管管理、また、改善を要する事態が過去にあったのでその作業環境改善を実施、衛生管理者に関する業務、各種ハザード管理として(ここでCが反応した)化学物質管理、バイオハザード管理、放射線管理、組換え生物管理などを行ってきた。

 

Q4(A)管理区分が3などになったときの具体的な作業改善について説明して下さい。

Ans:特化物である●の作業環境測定結果で第二管理区分の評価結果が一度だけ出た。私の所属している事業所は●を実施していて●を保管している部屋でのことです(ここでBがうんうんと反応)。作業環境改善として、まずリスクアセスメントを行い、リスク低減措置の順位に従い対応しました。まず、発散源となる●について廃棄可能なものを約1/3廃棄しました。次に、●を入れている袋を二重にして密閉化を強化したこと、部屋の全体換気能力を上げたこと、最後に、空いている別の部屋に●を分散保管しました。その結果、管理区分1にすることができました。

 

Q5(A)電離則で作業環境測定をしたということは作業環境測定士の免許を持っている?

Ans:いえ、持っていません。ただ、昨年作業環境測定士の筆記試験には合格したのですが、コロナの関係で登録講習を受講できていません。(3名共にうんうんと頷く)

 

Q6(A)濃度の測定はやっていないですよね?

Ans:はい。そちらは作業環境測定士でないと実施できないのでやっておりません。私がやったのは空間線量測定と表面汚染測定です(Aがうんうんとうなずく)。

 

Q7(A)電離放射線の被ばく防止の3つの原則は?

Ans:外部被ばく防止の3原則は「遮蔽」「距離」「時間」です。(一応Aが一拍してから軽くうなずく)(放射線防護のICRPの3原則のことを問われているのか、外部被ばく防止の3原則の方のどちらを問われているのか一瞬戸惑ったが、後者が一般的なので「外部被ばく防止の」という接頭語を敢えてつけて説明したが、Aの反応が薄く少し不安を覚えた)

 

ここでAがBに目配せして、ここからBが質問。

 

Q8(B)先ほど、●の作業環境改善を説明してもらいましたが、リスク低減措置の順位に沿って説明して下さい。

Ans:まず、有害物の除去の観点から、発散源となる●で廃棄できるものを廃棄しました。次に、工学的な対策として、●を入れている袋の二重化による密閉化、部屋の全体換気能力を上げたこと、他の部屋への分散保管、有効な呼吸用保護具を着用(ここで管理的対策の前に保護具を思わず先に言ってしまったことに気付いたので)、これは最後の対策ですが、その前に、管理的対策として部屋への入室時間の制限と管理を行い、それを作業手順に落とし込みをしました。

(Bはうんうんとうなずく)

–           (B)➡管理的対策も合わせて実施したということですね?

Ans:はい、そうです。先ほどは説明を割愛しましたが、実際には実施しています。(Bはうんうんとうなずく)

 

Q9(B)呼吸用保護具について説明してください。

Ans:呼吸用保護具は大別してろ過式と給気式があります。ろ過式にはさらに防じんマスク、防毒マスク、電動ファン付き呼吸用保護具があります。ろ過式は酸素濃度18%未満では使用できません(ここでBが聞き返すそぶりを見せたので再度同じことはっきり説明)ろ過式は酸素濃度18%未満では使用できません(Bがうんうんと頷く)。給気式には送気マスクと自給式呼吸器があります。

 

Q10(B)防毒マスクの選定基準は?

Ans:型式検定に合格したものを選ぶ、粉じんやミストが混在している場合には、防じん性能を有する防毒マスクを選択します。2種類以上の有害物質が混在する場合には混在する有害物質全てに有効な吸収缶を選定します。

 

Q11(B)吸収缶を選ぶ際の基準は?何かの物質用というのがあったと思いますが?

Ans:ハロゲンガス用、有機ガス用、一酸化炭素用、アンモニア用、亜硫酸ガス用の吸収缶及び面体は型式検定に合格したものを選ぶ必要があります。(Bがうんうんとうなずく)

 

そして、運命のQ12が訪れた・・・

 

Q12(B)私が今つけているマスクはDS2のマスクです。このマスクのことを説明して下さい。

Ans:(そうかここでコロナ関係の質問がきたか(と思った)。でもDが何の略か思い出せない。まずい!でも、分かりませんとは言いたくない。とりあえず防じんマスクの一般論を説明しながらその間に思い出そう、と瞬時に思って説明を始めるものの、何と、間違って防毒マスクの話をはじめてしまう・・・。問われているのは防じんマスクのことなのに・・・)マスクはオイルミストの有無でLとSに分かれる。隔離式、直結式、直結式小型(この直結式小型と言ったときにBが首を少しかしげるしぐさをしたが、何かまずいことを言ったのかこの時は気づかず(当然だ、防じんマスクには直結式小型はないのだから、でもこの時は気づいてない、お馬鹿な私))があり、さらに、RとS、DとRがあり・・・(でDが何の意味なのか、やっぱり思い出せない・・・まずい。ダストのDだったかな?でもSがソリッドだから違う・・と迷宮に入り込む、分かりませんとは言いたくなく・・・とさらに防毒マスクの説明を続ける私)

–           B➡(説明に窮していると感じたのかBが助け舟?を出して)

もう一度聞きますね。私が今つけているマスクはDS2のマスクです。このマスクは?”

Ans:(しょうがない、開き直るしかないかと心に決め)取替式の、粒子状に使用できる、捕集効率が2番目のマスクです。(Dは使い捨て式と分かっているのに何故だか取替式と間違って言ったことに口述試験が終わってすぐに気づくがこの時点では気づいていない超お馬鹿な私・・・)

B➡(この回答を聞いたBから)いろいろなことをご存じだが、マスクの分類をよく整理しておいた方が良い。DはディスポーザブルのDです。

Ans: (そうや~、そうだった~Dはディスポーザブルだよ!!)分かりました。すいません(なぜだか、すいませんと謝ってしまった私)。

 

ここでBがCに目配せして、ここからCが質問。

 

Q13(C)いろいろなご経験をされているが、事業者からお金がないと言われたら、どのように説明しますか?

Ans:まず、労働安全衛生法を守らなければならないことを伝えます。そして、企業には安全配慮義務がありその義務を果たす責任があることを説明します。また、従業員や社内に対して社会的責任を果たさなければならないことを説明します。そして、もしこのことをせずに従業員が疾病を起こしてしまうとその対策費用が高額になる可能性もあるので、必要となる費用をコストとばかり捉えるのではなく、従業員の健康を維持増進すると捉えてほしい。そうすることで、結果的に生産性の向上や健康経営(ここでCが大きく頷く)での評価が高まることに繋がるという意識を持ってもらうように話します。ここまでは言うべきこととしていうが、実際にどうしたらよいのかについてアドバイスが必要と考えますので、より低コストで実施できる方法を提案します。そして、改善の内容によっては助成金が利用できるかもしれないのでそのあたりのことを診断し、指導します。(Cは話を聞きながらうんうんと大きく頷く、特に健康経営と言ったときが一番大きく頷いた)

 

Q14(C)安全衛生管理計画を作成されたとのことでご存じかと思うが、OSHMSについて説明して下さい。

Ans:経営トップによる安全衛生方針の表明のあと、有害性のリスクアセスメントを行い、安全衛生目標の設定を行い、安全衛生管理計画を策定し、実施、評価、改善というPDCAサイクルを、自主的、継続的に回していくシステムです。(Cはうんうんと大きく頷く)

 

Q15(C)いろいろご経験されてきた中でお金がなかったりしたことで困ったことはなかったか?

Ans:先ほど、特化物の作業環境測定での管理区分2のリスク低減の説明をしましたが、リスク低減の優先順位から言うと、本当は局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設置したかったのです。しかし、予算と場所の問題から断念した。結果、袋の二重化と全体換気能力アップや管理的対策をすることになった。(Cはうんうんとうなずく)

 

Cが私からは以上です、言ったのでこれで終わりかなと思ったら、何とAから質問が出た。ちなみにこの時点での経過時間は見ず(時計を見たら失礼かなと思っていたから)。

 

Q16(A)作業環境測定で第1管理区分なのに、尿に有害物が出た。何が考えられるか?(尿という言葉が聞き取り難かったので「尿でしょうか?」聞き返したら「尿」と言われた)

Ans:作業環境測定で第一管理区分ということは作業場の濃度は問題ないはずですが、尿に有害物が出ているので、何等かのばく露を受けている可能性があると思います。まずはばく露状況の確認を行います。その人に有害物の取扱い業務が集中しなかったか、1日の中でいつもと異なる作業が行われていなかったか、就業時間外でのばく露がなかったかを確認します。また、経皮吸収が問題となっていないかを確認するため、作業方法の確認を行います。さらに、使用している保護具の材質や透過性を確認します。有害物の中には清涼飲料水などの影響で数値が変わるものがあるのでそれらの摂取状況を調べます。

(答えながら、Aの反応をうかがったが、反応が薄かったが、最後まで答え終わると一応うなずかれた)

 

Aから「これで終了します。」と言われ、口述試験は終了した。

何分ぐらいかかったか時間は計らなかったが、恐らく通常通りの15分ぐらいだったと思う。

 

(3)口述試験直後の感想

 

  • マイナス面

 

Q12で間違った回答をしてしまった(Dを取替式と言ったこと)ことが悔まれた。その他の質問には概ね答えられたかな。この間違いが気になって仕方無かった。

 

その後、電車に乗っての移動中に、Q12のところで、DS2のDが分からないため、あれやこれや回り道をしながら説明していた時に「直結式小型」と言ったときに何でBが首をかしげたのだろうとずっと考えていた。そうしたら、防じんマスクのことを問われているのに間違って防毒マスクの説明をしていたことに、この時点で気付いた。

 

「しまった~」

 

つまり、間違えた回答に加え、それに至る説明の過程で間違った説明をしたことに気付いた。

 

「あちゃ~」

 

そして、労働衛生のしおりP177を見たら、防じんマスクにも直結式と隔離式があることが分かった(防毒マスクは結構勉強したつもりだったが、防じんマスクの細かな種類までは勉強していなかった詰めの甘いお馬鹿な私)。つまり、自分では間違って防毒マスクの説明をしたと思ったが、直結式と隔離式は防じんマスクにもあるから説明としては間違ってなかったが、直結式小型は防じんマスクには無いため、ここでBが首をかしげたのだとようやく分かった。

 

結果的には、Q12で間違ったのはDを取替式と言ったこと、その説明の中で、直結式小型と言ったことと、防毒マスクの吸収缶の濃度を言ってしまったことのみ。

それを受けて、Q12の最後にBから「いろいろなことをご存じだが、マスクの分類をよく整理しておいた方が良い。DはディスポーザブルのDです。」と言われたことが、さらに輪をかけてめちゃくちゃ気になった。

 

これは不合格にする時のセリフなのではないか?とか、コンサルタントとしては余計なことをしゃべり過ぎですよ、と不合格者を嗜めているのではないか?とか、とにかく、いろいろなことが気になった。

 

帰宅してからも、このことが頭から離れず、結局この日の寝つきは悪かったのだった。

 

  • プラス面

 

一方、プラス材料として感じたことは、Q12以外の質問には問題なく答えられたと思ったこと、Cに実地経験が豊富だと認識してもらったような節があること(お馬鹿な私の妄想かもしれないが・・)。

 

Cにそう感じてもらったと感じたのは、Q13(C)で「いろいろなご経験をされているが・・」という発言があったことで「おやっ」と思い、そう感じたのだが、これはプラス材料として捉えて良いのではと思った。同じく、Q14(C)で「安全衛生管理計画を作成されたとのことでご存じかと思うが・・・」という言い回しも実地経験が豊富だと感じてもらったのかなと思った。

 

では、私のどの部分の発言がCにそう感じてもらえたのかと分析すると、恐らく、Q3(A)での労働衛生に関する実地経験を問われたことへの回答だったと思われる。

 

Q3とその回答を再掲する。

 

「Q3(A)労働衛生に関してこれまでどのようなことをしてきましたか?

Ans:労働安全衛生計画の企画、立案、実施、評価、改善に関する業務、作業環境測定では電離則で実施経験があり、特化則・有機則では外部機関への委託とその結果の保管、また、改善を要する事態が過去にあったのでその作業環境改善、衛生管理者に関する業務、各種ハザード管理として(ここでCが反応した)化学物質管理、バイオハザード管理、放射線管理、組換え生物管理などを行ってきた。」

 

この中のどの部分がと言われると分からないが、恐らく、労働安全衛生計画に関わった業務、電離則の作業環境測定経験があったこと、各種ハザード管理をしてきたこと、なのではないかと思う。

 

労働安全衛生計画に関わった業務については、以前にも記載した通り、口述試験直前まで実務経験に挙げる候補には入れていなかった。しかし、OSHMSを理解するために繰り返し勉強を重ねた結果、私の中では単なるルーチンワークとして実施してきた労働安全衛生計画に関わった業務も実務経験に挙げることにした。これらは、見方を変えればそれなりの経験に見えたのかもしれない。勿論、真実は分からないが。

 

また、AとBからの質問に対して回答する際に、時折、Cがうんうんと頷く様子が視線の端に捉えられたので、会話の中から実地経験が豊富と感じていただいたのかもしれない。

 

これらが本当にプラスになったのか、単なる私の妄想なのかは正直分からない(妄想の可能性が十二分にあるが・・汗)。他にはプラス材料らしきことは無いため、プラスになったと信じたい気持ちが強い。「頼むからプラスになっていますように」。

 

(4)口述試験後の感想

 

  • マスク着用の是非

 

その他に感じたこととしては、今回の口述試験はコロナ禍の中ということもありマスク着用で進められたこと。マスク着用で進められることは試験室に入る直前に分かったが、心の中では「えー、マジっ!」が実感。だって、試験官の表情が読めないじゃん!!

 

案の定、マスク無しの方が良かったな~というのが終わった後の実感だ。理由は、予想通り試験官の表情が読めなかったから。こちらの回答に対して頷いてくれると手ごたえを感じるが、頷きが弱かったりすると自分が言ったことの妥当性に自信が無くなる。

 

特に、今回の試験官3名のうち、BとCはよく頷いてくれたし、BはQ12で私が変なことを言った時に首を傾げてくれた(それは間違った説明をしたからなのだが・・超汗)。しかし、AはB、Cに比べて頷き具合が若干弱かったし、勿論マスクをしているから表情も読めず、こちらの回答が正しいのか否か不安になった。

 

さらに、マスク越しにこちらの発する回答がきちんと聞こえているのかが心配だった。私はただでさえ籠り気味な声質なのだ。マスク越しの会話が当たり前となった今では、普段の会話でも相手によく聞き返される始末。意識してゆっくり、はっきりしゃべったつもりだが、果たして試験管にしっかり聞こえていたのか否か・・、心配だ。

 

ひょっとしてAの頷き具合が若干弱かったのは私の声が聴こえづらかったから?とも思ったが、それは今となっては分からない。

 

この経験から、マスク着用での口述試験は試験官、受験生の双方にとって「良くない」ということを、声を大にして言いたい。マスク着用での口述試験は恐らくこれっきりだと思うが、来年はそうならないようにしてほしいと切に願う。

 

今回の試験会場では十分にソーシャルディスタンスがとられていたし、アクリル板も設けられていたので、コロナ対策はバッチリだと思ったが、万が一のことがあると大変だから念には念を入れてマスク着用となったのだなと思う。主催者側の立場に立てばこのことも十分に理解できる。誤解の無い様に言いたいのは、マスク越しだと意思疎通が不十分だということ。ただ、それだけなのだ。

 

  • 試験官は好意的だったか?

 

「試験官は受験生に対して好意的であり、回答に窮したら回答を引き出そうとしてくれる」という感想が「試験合格への手引き」(参考図書#1)にも多く書かれていた。今回だと、Q12のところで説明に窮したお馬鹿な私に「もう一度聞きますね。私が今つけているマスクはDS2のマスクです。このマスクは?」と言っていただいた発言がまさに”助け舟“だったのかもしれない。しかし、見事に回答を間違えたのだが・・・。

 

  • 果たして私はコンサルティングできたのか問題

 

今回の口述試験に臨むにあたり、私は試験官を中小企業の経営者に見立てて、コンサルティングをするつもりと書いた。

 

結果、Q13およびQ16がコンサルティング能力を問われる質問だったが、コンサルティングが「問題解決策を提示する」とするならば、まずまずの問題解決策を提示できたのではと思う。また、それ以外の質問についても同じような気持ちで回答したつもりだ。

 

将来コンサルタントになった時に、実際の現場では、相手に「良かった」と感じてもらうことが大事なのだと思うが、果たして今回の試験で試験官にどのように感じてもらったのか、試験結果とは別に是非聞いてみたいと思うが、勿論、叶わぬこと故、自己採点しかできない。

 

コンサルティング能力向上はコンサルタントになれた後の課題だと思うので、もし試験に合格したら、しっかり勉強していきたい。

 

  • 果たして思惑通りに実地経験の派生質問を電離放射線関係へ誘い込めたのか問題

 

今回口述試験に臨むにあたり、実地経験の派生質問を願わくは電離放射線関係に誘導したいということを書いた。

 

口述試験ではQ1からQ16まで全16問の質問を受けた(Q1(A)受験番号・試験の区分・氏名は?も含むため実質15問)。この中で実に3問(Q5、Q6、Q7)が電離放射線関係の質問だった。それに対して概ね問題なく答えられたことで、この目論見は成功だったと言えるだろう。

 

単に、試験官が気になったことを質問しただけかもしれず、「誘導」「目論見」なんて大それたことを言うのは、お馬鹿な私の妄想としてお許しいただきたい。

 

ただ、電離放射線関係の実務というのは、多少なりともインパクトを持っているのだなという感触を掴むことができ、将来、コンサルタントになった時に武器になるかもしれないということが分かっただけでも収穫だった。

 

(5)口述試験後のまとめ

 

口述試験で問われたことを整理すると以下の通りだった。

 

・必ず聞かれると思っていた受験動機は問われなかった。

・例えば、労働衛生コンサルタントの義務やそれを規定している法令条文など、何かの定義をそのまま問われるような質問はなかった。

・基本的な知識への問いとして、呼吸用保護具(Q9、Q10、Q11)、OSHMS(Q14)について問われた。

・実地経験は予想通りかなり突っ込んで問われた。

・衛生の経験の内容(Q3)

・電離放射線関連の質問として、作業環境測定士ではない者ができる測定について(Q5)、外部被ばく防止3原則(Q7)

・作業環境測定で管理区分が悪かった時の対応(Q4)、その時のリスク低減措置の順位毎に実施した措置の説明(Q8)

・実際の改善でお金が無くて困った時の経験(Q15)

・コンサルティングとして問われたことは

・お金に困った事業者への説明をどうするか(Q13)

・管理区分1なのに尿に有害物が出た場合への対応(Q16)

結局、Q12で間違えた回答をしたことが試験直後からしばらくの間、頭から離れなかった。口述試験の採点基準が分からないため、一つでも間違った答えを言ったら致命的なのか否か、気にしたらキリがないし、考えても分からないから、しっかり答えられなかったのも自分の未熟さ故の実力だと思うことにした。

 

将来コンサルタントになって、クライアントに聞かれた時に、口述試験と同じように間違ったことを言ってしまい、それが原因で労働災害が起きてしまったり、疾病が発生したら大変なことになる。そう思うと、口述試験はやはりコンサルティング能力を問われていたのだなと、改めて思った次第であり、今回の経験はとても貴重だった。

 

ひょっとしたらQ12で「分かりません」と言った方が良かったのかもしれないとも考えたが、それも今となっては分からない。

 

不合格の可能性もあるが、合格の可能性もある。口述試験の結果発表は2021年3月22日と、かなり先なので、受かっている前提で前を向いて勉強を継続することにした。

 

ただ、これで落ちていたら正直しんどいなあと思った。また、筆記試験を受け直すところから始めるのかと・・・。

 

こうしてお馬鹿な私の口述試験の受験は終了した。

 

6. 参考図書

 

労働衛生コンサルタント試験受験のための参考図書として用いたものは、今数えたら計36冊だった。

 

過去の試験用等に購入したものも含めて活用したので、純粋に今回用に購入したのは30冊だった。以下に活用した参考図書と、その購入動機と使用感も併記した。

 

  • 全般
    1. 「試験合格への手引き」日本労働安全衛生コンサルタント会、定価\3,000
      • 購入動機:労働衛生コンサルタント試験について知るため
      • 使用感:全般的にとても参考になった。特に第1章、第2章が秀逸。

 

  • 問題集
  1. 「労働安全コンサルタント労働衛生コンサルタント 試験問題集 令和2年度版(令和元/平成30年度試験問題収録)」日本労働安全衛生コンサルタント会、定価\4,600
  2. 「労働安全コンサルタント労働衛生コンサルタント 試験問題集 令和元年度版(平成30/29年度試験問題収録)」日本労働安全衛生コンサルタント会、定価\4,600
  3. 「労働安全コンサルタント労働衛生コンサルタント 試験問題集 平成29年度版(平成28/27年度試験問題収録)」日本労働安全衛生コンサルタント会、定価\4,600
  4. 「労働安全コンサルタント労働衛生コンサルタント 試験問題集 平成27年度版(平成26/25年度試験問題収録)」日本労働安全衛生コンサルタント会、定価\4,600
    • 購入動機:過去問を知るため
    • 使用感:特に関係法令の解説が秀逸。衛生工学の回答例では何か所か間違っている箇所に気付いたのでコンサルタント会にメールで問い合わせしたら、執筆された先生に聞くので間違っている部分の詳細を送って下さいとの返信だった。筆記試験が迫っていたのでそれ以降のやりとりはしなかった。

 

  • 関係法令
  1. 「安全衛生法令要覧 令和2年度版」中央労働災害防止協会、定価\6,600
    • 購入動機:辞書的に使用するため
    • 使用感:時々見た程度。e-Govでの活用の方が多かった。
  2. 「作業環境測定士・労働衛生コンサルタント等資格取得のための労働衛生関係法令の要点の解説」日本作業環境測定協会、定価\2,200
    • 購入動機:法令についてさらに理解を深めるため
    • 使用感:難解な法令が簡潔に分かりやすく解説されている良著。
  3. 「労働安全衛生法のはなし」畠中 信夫著、中災防ブックス、定価\1,700
    • 購入動機:安衛法についてさらに理解を深めるため
    • 使用感:安衛法について参考図書#7よりもさらに深い理解が得られる良著。中上級向き。

 

  • 衛生一般
  1. 「騒音障害を防ぐ 作業者用テキスト」中央労働災害防止協会、定価\990
    • 購入動機:騒音について知るため
    • 使用感:音の聴こえる仕組みから分かりやすく解説しているため理解しやすい。初級向き。
  2. 「製造業における振動工具取扱作業の知識 振動工具取扱作業用教育テキスト」中央労働災害防止協会、定価\1,211
    • 購入動機:振動について知るため
    • 使用感:振動の仕組みから振動障害予防対策指針に準拠した対策例まで分かりやすく解説しているため理解しやすい。初級中級向き。
  3. 「よくわかる じん肺健康診断」労災病院じん肺研究グループ編集委員会編 産業医学振興財団、定価\1,980
    • 購入動機:じん肺健康診断の理解を深めるため
    • 使用感:じん肺の歴史・定義は参考になる。CD-ROMじん肺患者のX線画像はインパクトある。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  4. 「皮膚からの吸収・ばく露を防ぐ!化学防護手袋の適正使用を学ぶ」田中 茂著、中央労働災害防止協会、定価\550
    • 購入動機:経皮ばく露、化学防護手袋について知るため
    • 使用感:オルトトルイジンでの膀胱がん発生経緯から化学防護手袋のことまで分かる。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  5. 「知っておきたい保護具のはなし」田中 茂著、中災防ブックス、定価\1,650
    • 購入動機:保護具の理解を深めるためため
    • 使用感:新書形式が書かれている。受験には必須ではないかもしれないが、一般知識を得たい方向け。
  6. 「新版 アーク溶接粉じん対策教本」日本溶接協会監修、産報出版、定価\6,60
    • 購入動機:アーク溶接での粉じん対策を知るため
    • 使用感:アーク溶接特有のじん肺の特徴やヒューム対策などイラスト、写真を用いてあり分かりやすい。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  7. 「労働衛生のしおり 令和2年度」中央労働災害防止協会、定価\725
    • 購入動機:受験必須図書として購入
    • 使用感:様々なことの要点がまとめられている良著。2冊購入して会社と自宅に各1冊配備しいつでも使えるようにした。
  8. 「これだけでわかるISO45001 導入から実践までのポイント」中央労働災害防止協会、定価\3,850
    • 購入動機:ISO45001について知るため
    • 使用感:従前に知っていること以上は得られず。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  9. 「イラストで見る よくわかる騒音 騒音防止の原理と対策」中央労働災害防止協会、定価\2,980
    • 購入動機:騒音について知るため
    • 使用感:イラストが多用され、難しい言葉を極力使用せず解説されているため分かりやすい。主に騒音、その対策の原理について理解しやすい。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  10. 「テキスト 化学物質リスクアセスメント」中央労働災害防止協会、定価\1,980
    • 購入動機:リスクアセスメントについて知るため
    • 使用感:中災防方式のリスクアセスメントに紙面の大部分が割かれているが、リスクアセスメント全般についての理解の助けになる。
  11. 「衛生管理者のためのリスクアセスメント」中央労働災害防止協会、定価\1,100
    • 購入動機:衛生管理者になった時に理解を深めるために購入
    • 使用感:今回の受験用には登場機会はほとんどなかったが、各種ハザードについてリスクアセスメントを実務的に実施するための良著。
  12. 「化学の基礎から学ぶ やさしい化学物質のリスクアセスメント」沼野 雄志著、田中 茂著、中央労働災害防止協会、定価\880
    • 購入動機:リスクアセスメントについて知るため
    • 使用感:沼野先生の書かれた内容はとてもとても分かりやすい。一般的なリスクアセスメントの知識を得るための良著。
  13. 「有機溶剤 作業主任者テキスト」中央労働災害防止協会、定価\1,980
    • 購入動機:有機溶剤のハザード対策の知識を深めるため
    • 使用感:沼野先生の書かれたパートがあり内容はとても分かりやすい。様々な災害事例とその対策が書かれており参考になる。
  14. 「作業環境測定のための労働衛生の知識」日本作業環境測定協会、定価\2,860
    • 購入動機:第2種作業環境測定士試験勉強用として購入
    • 使用感:沼野先生の書かれた内容はとても分かりやすい。内容全般に渡り、労働衛生コンサルタント試験対策に超お勧めの良著。結構ボロボロになるまで使い込んだ。
  15. 「受験から実務まで 衛生管理 上 第1種用」中央労働災害防止協会、定価\2,200
    • 購入動機:衛生工学衛生管理者受験時のテキスト
    • 使用感:他のテキストで分からなかった場合にどんな風に記載されているかを確認するために時々利用した程度。
  16. 「受験から実務まで 衛生管理 下 第1種用」中央労働災害防止協会、定価\2,200
    • 購入動機:衛生工学衛生管理者受験時のテキスト
    • 使用感:他のテキストで分からなかった場合にどんな風に記載されているかを確認するために時々利用した程度。

 

  • 衛生工学
  1. 「労働衛生工学とリスク管理」日本作業環境測定協会、定価\3,630
    • 購入動機:ハザード全般について理解するため
    • 使用感:ハザード全般についての理解が進んだ。労働衛生工学とはなんぞやという解説がありそこは参考になった。ただし、労働衛生工学を用いたハザード対策はあまり書かれていない印象。
  2. 「産業衛生技術入門」日本産業衛生学会 産業衛生技術部会編、中央労働災害防止協会、定価\1,760
    • 購入動機:ハザード全般について理解するため
    • 使用感:購入依頼はしたものの現品が手元に届いたのが試験後だったので結局受験には活用できず。内容は充実しているので今後の勉強に利用予定。
  3. 「新やさしい局排設計教室」沼野 雄志著、中央労働災害防止協会、定価\4,400
    • 購入動機:局排設計、計算に関して理解するため
    • 使用感:沼野先生の言わずと知れた受験必須図書との誉通り、大変参考になった良書。結構ボロボロになるまで使い込んだ。
  4. 「局所排気・プッシュプル型換気装置及び空気清浄装置の標準設計と保守管理」中央労働災害防止協会、定価\4,160
    • 購入動機:衛生工学衛生管理者受験時のテキスト
    • 使用感:参考図書#27だけで理解が進まなかった時に主に活用。ダクト系の設計計算例が分かりやすい。余裕があれば手元にあったらよい。
  5. 「新版 工場換気」空気調和・衛生工学会、定価\2,980
    • 購入動機:衛生工学衛生管理者受験時のテキスト
    • 使用感:参考図書#27だけで理解が進まなかった時に時々活用。ダクト系の設計計算例が分かりやすい。受験には必須ではないかもしれないが、深掘りしたい方向け。
  6. 「作業環境測定ガイドブック0 総論編」日本作業環境測定協会、定価\3,520
    • 購入動機:第2種作業環境測定士試験受験用に購入。
    • 使用感:労働衛生コンサルタント試験には不要。

 

  • 保健衛生
  1. 「改訂18版 産業保健ハンドブック」森 晃爾編、労働調査会、定価\660
    • 購入動機:産業保健全般について理解するため
    • 使用感:産業保健についての広範なトピックスが簡潔にまとめられている。他の参考図書で分からなかった時に辞書代わりに使用。受験には必須ではないかもしれないが手頃な値段(\660)なので1冊あってもよい。
  2. 「産業保健の基礎 法令と実務」石井 義脩著、新日本法規、定価\4,400
    • 購入動機:衛生管理者になったときに購入
    • 使用感:購入当時は電離放射線のところだけを参照したが、労働衛生コンサルタント試験用にはほとんど活用しなかった。受験後に見たら各種ハザード対策とか業務上疾病の考え方など口述試験勉強時に知りたかったことが結構分かりやすく書かれていたことに今更気付く(残念)。今後活用していきたい書籍。
  3. 「産業保健マニュアル 改訂第7版」総編集 森 晃爾、南山堂、定価\7,480
    • 購入動機:口述試験用にハザード全般について理解するため
    • 使用感:ハザードの定義、発生職場、発生源、生体影響、予防対策、工学的対策などについて網羅的にかつ表形式で分かりやすくまとめられた良著。特質すべきは産業保健分野の書籍にも関わらず工学的対策も書かれている点。ハザード対策をまとめる際にもっとも参考にした図書。できたら手元に1冊あると良いが高額なので自己判断で。
  4. 「増補改訂 産業医の職務 Q&A 第10版」産業医の職務Q&A編集委員会編、産業医学振興財団、定価\3,520
    • 購入動機:口述試験用にハザード全般について理解するため
    • 使用感:産業医の立場から職業性疾病についてQ&A形式で書かれた分かりやすい内容。受験に必須ではないが、余裕があれば手元にあってもよい。

 

  • 口述試験対策用
  1. 「リスク発見のための職場巡視 見る巡視から考える巡思へ」菊池 昭著、中央労働災害防止協会、定価\1,320
    • 購入動機:衛生管理者になったときに購入
    • 使用感:衛生管理者としての職場巡視の考え方用には秀逸。労働衛生コンサルタント試験には不要。
  2. 「まるわかり職場巡視 工場編」加部 勇著、産業医学振興財団、定価\1,680
    • 購入動機:口述試験用に現場経験を補うため
    • 使用感:購入依頼はしたものの現品が手元に届いたのが試験後だったので結局受験には活用できず。経験のない現場の状況を知るためという購入動機をしっかりカバーしている内容だったので今後の勉強に利用予定。

 

結果的に役立ったものもあれば、購入してみたものの登場機会が少なかったものもある。隅から隅まで何回も読み返したものもあれば、ピンポイントだけを見たものもあった。

 

コラム⑪ ~参考図書購入は必須?~

 

私が使用した参考図書リストを見た方の多くは「ちょっと多すぎるんじゃね?」「コストかかり過ぎ~!」と思われたことだろう。

 

私も正直そう思う。

 

ここでは参考図書購入の考え方についてお馬鹿な私なりの考え方を記す。

 

何かを学習するため、資格試験に挑戦するためなどのために、最小の投資で済ませる人もいれば、必要な投資は惜しまないという人もいる。人によって意見が分かれるところでもある(ネット経由で情報収集するということも一つの選択肢であるがここでは割愛する)。何が正解で正解でないかの問題ではなく、その人のスタンスによっていくらでも変わる。

 

私は、新たに得たい知識があれば、まず専門書で学習する方針なので、そうやって徐々に冊数が増えていき結果として既述の冊数になっただけのこと。そして、元々、自分の勉強のための費用は惜しまない主義でもある。将来、試験に合格してコンサルタントになった後でも購入した参考図書は何度も使用する機会があると思って購入した。

 

労働衛生工学の区分なのに産業保健や保健衛生関連のしかも高い参考図書をバンバン購入していることに疑問を持つ人もいると思う。単に試験に合格するだけなら保健衛生の専門知識がなくてもよいかもしれないが、私はそれをよしとしなかっただけのこと。折角のこの機会にそれなりに勉強しておこうと思ったのだ(ただ合格体験記には保健衛生の勉強についてはほとんど触れていないのでご了承いただきたい)。

 

「労働衛生コンサルタントはその業務を行うにあたって自分がどの区分に属するかを明示することになるから、診断・指導を依頼する事業所はそれを見て、どのコンサルタントに依頼したらよいかを判断することが可能となる。ただ、この区分は活動分野に枠をはめるものでなく、専門分野を示すためのものである」。これは「試験合格への手引き」(参考図書#1)(参考図書#1)からの引用だ。

 

とするならば、労働衛生工学区分の労働衛生コンサルタントが保健衛生のことを知らなくてよいはずがない。保健衛生のことを聞いてくるクライアントに対して「保健衛生のことは知りません。専門家に聞いて下さい」なんて言うコンサルタントに私はなりたくない。「専門家とはあなた自身ですよ」ということだ(なお、実際のコンサルティングの現場のことは全く知らないのに偉そうに言っていることについてはお馬鹿な私なのでお許し下さい)。

 

また、ハザードのことを医学的見地からも知りたかったこともあった。そして、購入した産業保健関連の参考図書は、それらのことを知るには十分であり、さらに、職業性疾病への対策という切り口で記載が充実して大変参考になった。購入して良かったと感じた本が多かった。

 

ここで、参考図書をどんな考えで、どこで購入したかの話をしよう。

 

参考図書は知りたいことが発生したらその都度そのことが書かれていそうなものを購入していった。最初は初歩的な疑問から始まるので、概要を書いた参考図書から購入することになる。その後、各論へと得たい知識の幅が広がっていき、それに対する参考図書を求めることになる。

 

こうやって購入する度に感じたことは、現物の中身を見てから購入するのが段々難しくなっていったことだ。概要を書いている参考図書は大体現物を手にとって中身を確認してから購入することができた。しかし、各論になってくると現物を置いていることが少なくなってくる。これは専門書の宿命である。また、労働衛生はメジャーな分野ではないのか、これに関わる参考図書をずらりと並べてある本屋が少ないことも要因の一つだ。と言っても、ずらりと並ぶほどこの分野の参考図書が多くないことに気付くことになるのだが。

 

幸い、私は大阪の中心部を通る通勤経路のため、労働衛生関係の参考図書がそれなりに揃っている本屋としてジュンク堂梅田店(蔵書数約200万冊で西日本最大らしい)があった。ここよりも品揃えは若干少ないが、紀伊国屋グランフロント店もたまに利用した。疾病対策本を購入する際には、労働衛生コーナーだけでなく、産業医学や産業医のコーナーも見た。何回も通っていると、どの本の在庫であって、どの本が無いのかも覚えるほどになった。

 

欲しい本の現物が見つかればそれを購入できるが、現物がなかったら注文して取り寄せないといけない。現物の中身を見ずに購入するのは少々勇気がいるが、そこは「自分の勉強のための費用は惜しまない主義」なので、欲しい本は迷わず購入していった。

 

中災防でしか売っていない本や現物が店頭にない参考図書はネット経由で申し込んで購入した。中災防の本はamazonでも売っているケースがあるが、何故だか定価販売ではなく高値で売っている。あとはメルカリでも売っているケースもあるが、それは最新版か確認した上でご自由にされてはと思う。

 

そして、知識欲が深まっていき、さらに深い専門的な参考図書は無いかと探すことになるのだが、それがなかなかお目当ての本に行き着きづらくなってくることを実感していった。いずれ、原著論文を探さないとアカンのかな~と思ったこともあったが、流石にそこまでは時間の問題でしなかった。

 

最初に述べた通り、勉強にかかる費用を投資と考えるならば、その投資の仕方は個々人の考え方に依存し、何が正解で正解でないかの問題ではない、ということを添えてこのコラムを終了する。

 

コラム⑫ ~勉強部屋作り~

 

2020年度に労働衛生コンサルタント試験を受験するにあたって、自宅での勉強環境を整えることにした。時を同じくして、コロナ禍での在宅勤務も始めることになったので在宅勤務もできつつ、試験勉強もでき、また将来、自宅でコンサルタントとして開業するかもしれないとも思い、そこへの投資をすることにした。さらに家族との約束で、机は家族でシェアして使うこととし、子供たちも試験勉強などで使ってよいとした。

 

やったことは以下の通り。

 

・物置部屋と化していた洋室1部屋を片付け、机と椅子を置くスペースを作った。

・机、椅子、デスクライト、床マットを購入した。

・それぞれを配置した。

 

自宅の中で洋室1部屋が物置と化していたので、この機会に断捨離しつつ、整理した。整理整頓下手なパートナーも、一念発起して手伝ってくれた。不要なものはメルカリで出品し、パートナーはせっせと小遣い稼ぎをする習慣がついた。ちょうど1回目の緊急事態宣言が出た時期だったので、世の中でも同じようなことをやった家庭が多かったようだった。

 

部屋の整理整頓の目途が立ってから、机と椅子など必要なものを購入することにした。机は大きさを重視しつつ、なるべく安くてしっかりしたものを購入した。結局、コイズミのシンプルな机にした。

 

一方、椅子は長時間座っても腰が痛くならないような信頼性の高いものを選ぶつもりだったこと。結局、ローマンチェアを購入した。何と22万円、めっちゃ高かった!!

 

フローリング床にしっかりしたコロ付きの椅子を置くと床に傷がつきまくることが分かっていたので、床マットも購入した。

 

デスクライトは明るさ重視で選び、椅子の購入ポイントを使って購入できた。

 

これで仕事も勉強もできる環境を整えた。

 

本当はエアコンも買いたかったが、高価な椅子を購入したので、当面購入は見合わせ、暑さを我慢できるところまで頑張ってみることにした。

 

真夏は相当暑かったが、扇風機でなんとか凌げた。勉強に身が入らないほどではなかったので、夏は何とかいけるなと思った。一方、冬の底冷えのする寒さは如何ともしがたかった。ダウンの上着を2枚重ねで着たり、ヒートテックを履いた上から何重に着たりしてもダメだった。

 

結局、冬対策として電気毛布を購入し、ひざ掛けとして使った。これがあることで真冬でもそれなりに過ごすことができた。結局、エアコンは買わずに済んだ。

 

コラム⑬ ~桜咲く、口述試験に合格!!~

 

2021年3月22日、口述試験の合格発表があった。

 

この日、長女が帰省することが分かっていたのであらかじめ有休を取っていた。有休を取らないことが美徳とされていた時代もあったが、今はある程度以上取得しないと逆にお叱りを受ける時代になった。変わったものだ~、しみじみ。

 

さて、9時に愛犬をトリミングサロンに連れていき、一旦帰宅して、もうすっかり覚えているはずの受験番号なのに、念のため、受験票を手元に置いた万全の状態を整え、姿勢を正しくして、官報での合格発表を確認した。

 

そして、自分の受験番号を見つけることができた。無事合格、やった~!!

 

パートナーにも念のため番号が合っていることを確認してもらった。パートナーには口述試験で模擬試験官役を文句も言わずに何回も協力してもらったし、長丁場の試験全般を通じてサポートしてもらった。特に、勉強がうまくはかどらず私が悶々としている時にも辛抱強く見守ってくれたことに感謝、感謝。ありがとう~💛

 

口述試験では1問だけ間違った回答を“堂々”としてしまい、その間違った回答に至る過程で間違った説明を同じく“堂々”としてしまった。

 

合格できたということはその間違いは不合格にするほどのことではなかったのかもしれない。あるいは、その間違いだけなら不合格だったかもしれないが、他の質問への回答で挽回したのかもしれない。今思えば、口述試験の最後で、試験官CのQ15の質問で終わったと思ったら、また最初の試験官Aに戻って最後の質問(Q16)をされたことが、その挽回の機会を作っていただいたのかもしれないとも思った。

 

口述試験の合格基準は「4段階評価の上位2ランクであること」と公開されているが、その採点がどうだったかは公開されない。どのように採点されたのかは受験者全員が知りたいことだが、決して知り得ないことなので、考えてもしょうがない。人情としては、15問ぐらい出題される中で1問や2問間違えても何とか勘弁してよと言いたいところではある。

 

今回の労働衛生工学の最終合格者は15名だった。筆記試験の合格者が24名だったから、筆記試験合格者の口述試験合格率は15名÷24名×100=63%だったことになる(筆記試験全免除者は含めず)。

 

今回の筆記試験の合格者は昨年の約1/3と少ない感じだったから、口述試験ではある一定の合格者数をキープするだろうし、せいぜい落ちても5名程度かな、その5名には入りたくないなと勝手に思っていたが、その考えは間違っていた。

 

何でそんな考えをしたかというと、「何とかお馬鹿なわたくしめを救って下さい、お願いします、お代官様~」という超お馬鹿な甘ったれ根性があったのも事実だが(再び汗)、過去の筆記試験の非免除者の口述試験合格率は8割越えの水準だったこともあり、この合格率はある程度キープされるのだろうなと思ったのも事実。過去水準よりも合格率が低かったということは、単純に合格基準に達しなかった受験者が多く、相対評価ではなく絶対評価をされたのだろうと想像する。

 

お馬鹿な私はきっとギリギリ受かったのだろう。

 

ただ、合格は合格。胸を張って今日一日くらいは喜んでも罰は当たらないかな。

 

7.まとめ

 

労働衛生コンサルタント試験に合格するために、第2種作業環境測定士の受験から準備を進め、労働衛生コンサルタントの口述試験まで体験し、結果、幸いにも合格することができた。その最初から最後までは約1年5か月(2019年11月~2021年3月)を要した。

 

当初は「試験に合格することが目的」と思っていた。しかし、勉強を重ねていく度に、特に、口述試験の準備では、「コンサルタントになるということは、単に試験に合格することを目的にしてはダメなのだ」という心境に変わっていった。試験合格(=資格取得)はあくまで目標の一つであり通過点だ。真の目的は、一労働衛生コンサルタントとしてクライアントのためにしっかりコンサルティングして労働衛生問題を発生させないようにすること、この分野でしっかり生きていくこと、そして、これらを自ら楽しみ幸せになることだ。

 

業務を通じて労働安全衛生に関わって8年。「労働衛生を知っているつもり」だった。しかし、受験勉強を通じて労働衛生について何にも知らなかった自分に気づかされた。一体今まで何をしてきたのだろうと・・。型通りにルーチンワークをしていただけだった自分が本当に情けなくなったが、そのことに気づけたことがとても良かったと本当に感じることができた。これも大きな収穫だった。

 

さらに、この受験体験を経たことで、自分自身が大きく成長できたと実感できた。改めて、労働衛生は学問としても面白い、一生の仕事にできるぞ!! と実感することもできた。

 

職場には労働衛生コンサルタント試験を受験することを公言していた。なりたい自分を周りに公言することでそれに近づくということを私はこれまでやってきたし、その背中を見せてきたつもりだった。ただ、資格をとって将来コンサルタントとして独立するとまでは公言していない。その時期が定年前になるのか定年後になるのかも自分でもまだ何も決めていない。

 

今現在の気持ちとしては、将来は労働衛生コンサルタントをやりつつ、ポートフォリオワーカーとしてのキャリアを構築して、一生現役で働きたいと思っている。

 

最後に、この受験を通じて、私にいろんな気づきを与えてくれた全ての物、事に感謝。長期に渡る受験勉強を支えてくれた家族に感謝。

 

超お馬鹿ながらも頑張った自分自身を少しは褒めたい。

 

そして、超お馬鹿な私の合格体験記をここまで辛抱強く読んで下さった方にも感謝。

この合格体験記が少しでも皆様の受験勉強のお役に立つことができたならば幸いでございます。

 

おしまい

 

執筆期間:2021.1.23~3.29

 

労働衛生コンサルタント(労働衛生工学)合格体験記” に対して13件のコメントがあります。

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