作成日:2021年 5月   5日

更新日:2023年 10月 26日

目次

1.はじめに

ここでは、私が体験した令和2年度労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学区分)における口述試験の経験に基づき、口述試験対策を述べています。

私はたった1回の受験経験しかありませんが、私なりに考えて準備して挑み、幸いにして合格できました。その経験を公開することで、これから受験を考えようとされている方のご参考になればと思っています。

過去問が公表されている筆記試験に比べ、口述試験の内容はベールに包まれています。そのことが受験生を不安にさせる要因の一つだと思います。特に、労働衛生工学区分の受験生は少ないため、この傾向に拍車がかかっていると思います。

そんな不安を私が紹介する口述試験対策で払拭できるか否かは分かりませんが、私なりに真剣に書いていますので、是非ご参考にしていただければと思います。

内容は、当日の行動や試験の流れと言ったことから、実際に口述試験で問われることの対策までを網羅したいと思います。

実際の私の体験は合格体験記に詳しく書いていますのでご参照いただければ幸いです。

2.口述試験当日の流れ

口述試験当日の流れは下記の通りです。

①会場入り

②受付

③受験者留意事項の簡単な説明受け

④控室での待機

⑤誘導官からの受験者の呼び出し

⑥試験会場前での最終説明

⑦口述試験

⑧終了

以下、それぞれについて簡単に説明します。

①会場入り

口述試験の受験日時は、筆記試験の合格者に郵送のハガキで通知されます。そこに、受験申込時に自ら指定した受験場所(東京会場もしくは大阪会場)での受験日時が記載されています。その受験日時を踏まえて、当日の会場入り時間を考えればよいかと思います。その目途を示します。「⑤誘導官からの受験者の呼び出し」は試験開始時刻の5分前にあります。また、「③受験者留意事項の簡単な説明受け」での1枚ものの資料に目を通す時間として5分は必要です。「②受付」はハガキには「試験時刻の30分前までに受付を済ませること」となっていますが、30分前だと③⑤の時間を考えると「⑦口述試験」までに全く余裕がありません。さらに会場入りして心が落ち着く時間として30分程度は必要だと思います。よって、そこにどの程度プラスするかを考えて会場入りする時刻を決めたらよいかと思います。私は2時間前に会場入りするようにしましたが、ちょうど良かったなと思いました。

②受付

会場入りすると受付が必要です。早めに到着して口述試験の開始まで時間に余裕があったとしても先に受付を済ませておいた方がよいと思います。ちなみにハガキには「試験時刻の30分前までに受付を済ませること」と記載されています。私が控室で待機していた時に経験したこととして、保健衛生区分の方が数名受験を辞退されたようで、控え室で待機している受験生に「実は保健衛生の受験予定者が欠席されることになったのですが、順番を繰り上げてこれから受験されるか、予定通りの時間まで待つかいずれにされますか?」と問われていました。あらかじめ欠席の連絡を入れているのか、ドタキャンしているのかは分かりませんでした。もし、試験開始30分前までに受付を忘れたら欠席扱いになるかもしれませんのでご注意下さい(その辺りのことはハガキには何も記載されていません)。

③受験者留意事項の簡単な説明受け

受付で「受験者留意事項」という1枚ものの資料が配布され、受験までの簡単な流れの説明を受けます。特段気になる記載はなく、ご一般的な注意事項しか書かれていませんが、しっかり目を通しておいた方がよいです。

受験者留意事項

受験者留意事項です。黄色マーカーは試験当日に私が引いたものです。

④控室での待機

受付の横に控室が用意されています。ここの利用は必須ではないようですが、「⑤誘導官からの受験者の呼び出し」は控室で行われるため、口述試験開始時刻の10分前には控え室に居た方がよいでしょう。私は受付後以降は控室で過ごしました。

⑤誘導官からの受験者の呼び出し

呼び出しは試験開始時刻の5分前にあります。誘導官が受験番号と試験区分を読み上げるので手を挙げるなりの方法で応じたらよいと思います。労働衛生工学区分は保健衛生と異なり、受験生の辞退はほとんどないかと思うので、ご自身の試験開始時刻が迫ってきたら、荷物を用意していつでも動けるようにしておいた方がよいでしょう。

⑥試験会場前での最終説明

控室から試験会場の部屋の外まで誘導官についていくと試験会場前で最終の説明が行われます。スマホ電源を切ったかと、部屋に入って荷物を置いからすぐに試験が始まると言われました。なお、令和2年度試験だけかもしれませんが、マスクは着用したまま試験が行われるとの説明を受けました。

⑦口述試験

誘導官から指示を受けた通り、試験部屋に入り、所定場所に荷物を置いて椅子に座り、机に受験票を置いたら、すぐに口述試験がスタートします。

⑧終了

所定の質問が終了したら、「終了です」と告げられ、試験が終了します。その後は、特に手続き等はないので、帰宅するなり自由となります。

3.口述試験の準備

(1)実務経験についての考察

労働衛生コンサルタントには「十分な実務経験」が必要と言われます。それを気にしないといけないのは、受験申請時と口述試験の時です。特に口述試験では、その点を、あの手この手の質問で確認され、十分な知識があったとしても「十分な実務経験」に根ざしたものではないと判断されると合否に影響するようです。ここで「十分な実務経験」とは何を指すのでしょうか?受験資格の観点から考察してみたいと思います。

労働衛生コンサルタント試験には受験資格があります。安衛法第82条第3項第1および2号の規定から大学、短期大学、高等専門学校を卒業した場合の実務経験を考えてみたいと思います。

(労働安全コンサルタント試験)
第八十二条 労働安全コンサルタント試験は、厚生労働大臣が行なう。
2 (略)
3 次の各号のいずれかに該当する者でなければ、労働安全コンサルタント試験を受けることができない
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学(短期大学を除く。)若しくは旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後五年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
二 学校教育法による短期大学(同法による専門職大学の前期課程(以下「専門職大学前期課程」という。)を含む。)又は高等専門学校において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者(専門職大学前期課程にあつては、修了した者)で、その後七年以上安全の実務に従事した経験を有するもの

なお、安衛法第83条に上記の「安全」を「衛生」に、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則附則第2条第2項に「安全の実務」を「衛生の実務」と読み替える規定があります。また、「衛生の実務」については(公)安全衛生技術試験協会の労働衛生コンサルタントの受験資格に記載がありますのでご参考まで。

【注1】
衛生の実務とは、事業場の労働衛生管理部門の管理職、衛生管理者等のほか生産現場等において労働衛生管理を担当し、所掌する者が下記の業務を行うことを示します。
① 労働衛生管理計画の企画、立案及び運営に関すること
② 労働者の健康診断及びその事後措置に関すること
③ 作業環境や作業条件の調査、測定やその改善に関すること
④ 衛生教育計画の作成、運営に関すること
⑤ 有害物中毒等の調査、分析に関すること

これらから、理系の大学を卒業した後は5年以上の衛生の実務経験が必要です。これが理系の短期大学、高等専門学校を卒業した場合だと7年以上となる訳ですね。

ですから、受験資格に規定されている実務経験年数を満たしていればまずはOKとなる訳です。

(2)口述試験で問われることの概略

「労働衛生コンサルタント試験 試験案内」(安全衛生技術試験協会)によると、口述試験の試験科目、試験時間は下記の通りです。

試験の区分 試験科目 試験時間
保健衛生

労働衛生工学

共通 労働衛生一般 口述試験受験票でお知らせします。

9:00~12:00、13:00~17:00の間で、15分間

専門 健康管理

労働衛生工学

このように書かれていますが、極めて曖昧なため、具体的に何を聞かれるのか?ということが受験生の最大の関心事だと思います。

私は、労働衛生工学の試験区分でしたので、その経験から、口述試験で実際に問われたことの概略は以下であったかなと思います。

・労働衛生一般の知識(法令が分かっている前提)

・受験者自らの実務経験に根ざした改善事例への問いかけ

・試験官が出す要改善事例へのコンサルティング

これらについては、受験前に少しだけ情報収集した結果とも相違なかったかなと思います。

以下、それぞれについて見ていきたいと思います。

①労働衛生一般の知識(法令が分かっている前提)

労働衛生一般は、筆記試験では比較的点数の取りやすい科目と位置付けられています。事実、私も筆記試験ではこの科目に助けられたと思っています。

一方、口述試験における労働衛生一般は「下記②や③についての問いの前提としてのベースとなる基礎知識という位置付け」というのが私の経験に基づく思いです。

筆記試験をパスした受験者には、当然これらの基礎知識は知っているものとして、単独で問われることは少ないと思います。例えば、作業環境のA測定とは?局排とは何か?などです。

これらのベースとなる基礎知識があるという前提で、下記②や③が応用問題として問われることになると思います。従って、労働衛生一般の知識は知っていて当然というところから口述試験がはじまると思った方がよいでしょう。

では、全く労働衛生一般の知識が問われないかとそうでもありません。

私の受験体験からですが、「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、下記の計8問が問われました。今更ながらですが、この質問を見ると、本当にベーシックな基礎知識を問う問題は少ないですよね。

質問 解説
Q6 濃度の測定はやっていないですよね? この質問は直前のQ5で「電離則で作業環境測定をしたということは作業環境測定士の免許を持っている?」との質問の回答として「持っていない」と答えたことへの質問です。第一種作業環境測定士免状(放射線)保有者でないと電離放射縁の濃度測定ができないことを知っていないと答えられません。
Q7 電離放射線の被ばく防止の3つの原則は? 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でした。電離放射線業務に従事していない人には難しい問題です。
Q8 先ほど、●の作業環境改善を説明してもらいましたが、リスク低減措置の順位に沿って説明して下さい。 リスク低減措置の順位を知っている前提での応用問題です。
Q9 呼吸用保護具について説明してください。 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でした。当然、派生質問が出るものと思って答えましたが、その読み通り、Q10~12まで派生質問が出ました。
Q10 防毒マスクの選定基準は? 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でした。
Q11 吸収缶を選ぶ際の基準は?何かの物質用というのがあったと思いますが? 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でした。
Q12 私が今つけているマスクはDS2のマスクです。このマスクのことを説明して下さい。 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でしたが、まさかここまで細かく聞かれるとは想定していませんでした。
Q14 安全衛生管理計画を作成されたとのことでご存じかと思うが、OSHMSについて説明して下さい。 労働衛生一般の基礎知識を問う問題でした。

これらは単独で問われた訳ではなく、他の質問の一連の流れの中での派生質問として問われたものが多かったです。

そして、もう一点、私が強調したいのは、法令は十分理解しておく必要があるということです。それがタイトルに括弧書きで書いた「法令が分かっている前提」という意味です。

口述試験では、法令は問われないことになっていますが、全く関係ない訳ではないと思います。

事実、上記に示した私の受験体験でのQ6は解説に記載した通り、第一種作業環境測定士免状(放射線)保有者でないと電離放射縁の濃度測定ができないことを知っていないと答えられません。

だからと言って、法令だけを単独で勉強するまでの必要性はなく、あくまで、根拠となる法令ぐらいは口述試験に向けた勉強と共にやっておくほうがよいと思います。

②受験者自らの実務経験に根ざした改善事例への問いかけ

労働衛生に関する実務経験と改善事例は必ずといって良いほど問われるようです。事実、私も問われました。

なぜ、そんなことを問われるのかというと、受験生の経験と力量をはかるためだと思います。「この受験生を果たして労働衛生コンサルタントとして認めてよいものか?見定めてやろう!」という感じでしょうか。

受験生の経験については、「(1)実務経験についての考察」に記載の通り、受験資格をパスしていれば、それで一定程度の経験有りと判断されます。

しかし、その実務経験の中身については、この口述試験で問われることで、初めて受験生から披瀝することになるのです。

そして、披瀝した実務経験の中身に基づき、以降の質問が展開されていくことになります。

ですから、実務経験とその改善事例をどのように披瀝するかで質問の方向性、流れが変わると言っても過言ではないでしょう。

さて、私の受験体験からですが、「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、実務経験として問われたのは以下の1問のみでした。

Q3。労働衛生に関してこれまでどのようなことをしてきましたか?

今更ながらですが、この聞かれ方で本当に良かったと思います。何故かと言うと、自分なりにアレンジした回答ができるからです。「私は●や△の業務を担当しており、■や×の・・・」という感じです。

一方、絶対にされたくなかった質問形式は、「局排を設計した経験はありますか?」というように何かに限定した実地経験を問うものです。

このように質問された場合、回答は「有り」「無し」のどちらかしかありません。

勿論、経験があれば「有ります」と自信を持って回答できますが、経験が無ければ「ありません」と回答するしかないのです。

特に、局排の設計経験は「試験合格の手引き」(日本労働安全衛生コンサルタント会)の数名の受験生の体験としても結構聞かれているようでしたし、ネット経由で入手した受験者の過去問でも同様でした。

私は、局排設計の経験が無かったので、このように問われたら「設計の経験はありません」と真実を答えるしかありませんでした。「実地経験があるのか?」との質問に対し「無い」と答えるとそれだけでマイナス点が付くと思っていたので(この点は定かではありません)、「まずいわ、何とかできないかしら・・・」と頭を悩ませました。

そして、忘れてはならないのは「改善事例」のことです。

実務経験と改善事例は別々のものですが、受験後の今だから言えることとして、「どのような実務経験があるか?」「その中でどのような改善事例があるか?」は個々には問われないような気がしました。

理由は、試験官は15分という限られた時間の中で、受験生の合否を判断しないといけませんし、それを質問する役目にあたるであろう3名の試験官の中のお一人(お役人様かな?)はご自身の質問できる回数(恐らく5回程度)を有効に使おうと思ったら、別々には聞かないだろうと思うからです。

もし、実務経験と改善事例を個々に質問されるとしたら、それは受験生の回答の仕方が悪い場合です。回答した実務経験があまりにも上っ面だけで、実際何をしているのか分からない、そこにどんな改善事例があるのか分からないという場合ではないかと思うのです。

例えば、以下のような回答はそれに当たると思います。

・例1「私は会社の事業所の労働衛生全般の担当をしています」(このような回答をされると、私が試験官なら「その事業所は何の事業所か分からないが、労働衛生全般のハザード対策ができるねんなっ!」と理解します)

・例2「私は●を製造する工場の労働衛生を担当しています。」(例1よりは若干具体性がありますが、私が試験官なら「そうか、●を製造するってことはそれに付随して発生するハザード対策をやってるんやな」と理解して次の質問をします)

このような回答をしてしまうと、試験官もしびれを切らせて、何かに限定した実地経験を問う質問を受験生に浴びせることになってしまうのではないでしょうか。

つまり、「局排を設計した経験はありますか?」というような質問です。例1、例2の場合いずれにおいても、何でもできるし、ありとあらゆる経験をしているということなら問題ないでしょう。

しかし、例1の場合、自社の事業所の労働衛生全般の担当をしているといっても、内実としてはその事業所が関与する労働衛生の問題は化学的因子、物理的因子、作業態様等に起因するハザード対策のうちのあるものだけであり、業務分担上、自らはそのうちの一部しか担当していない、ということなら、何でもできるし、ありとあらゆる経験をしているとはなりませんよね。

では、限定した質問をされないためにはどうしたらよいのでしょうか?

実務経験を問う回答の中により具体的な実務経験とその中での改善事例の端緒となる回答を織り交ぜておけば良いとなります。そうすると、それを聞いた試験官が改善事例の手がかりと判断し、それについての派生質問に流れていくのではないかと思います。

改善事例の端緒となる回答として一番良いのは、自分自身の得意分野がいいですよね。そうするとそれに対する派生質問が出ても答えやすいと思います。

再度同じことを言いますが、実務経験と改善事例は言わば別々のものですが、口述試験の回答としては一体と思って考えた方がbetterです。

これらはあくまで私の勝手な想像に過ぎませんが、私はそのように考えて、実務経験とその改善事例について回答を用意しました。そして、それはそれなりに成功したと自己分析しています。詳しくは合格体験記をご参照下さいませ。

③試験官が出す要改善事例へのコンサルティング

「試験官が出す要改善事例へのコンサルティング」とは、労働衛生に問題のあるシチュエーションを試験官が作って、それに対してあなたならどうやってこの状況を改善するか?ということです。勿論、コンサルティングですから、単に答えるだけでなく、質問者である試験官(実場面では相談者になる)をどう納得させられるかが問われることにもなります。

私の受験体験からですが、「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、下記の計3問が問われました。

質問 解説
Q13 事業者からお金がないと言われたら、どのように説明しますか? この質問は3名の試験官のうちの3人目の方に質問者が変わった直後に問われたものです。この質問は想定していたものですが、具体的な何かのコンサルティングに関する質問の後に、派生して問われるパターンを予想していましたので、その意味では想定外でした。
Q15 いろいろご経験されてきた中でお金がなかったりしたことで困ったことはなかったか? この質問も上記と同じく3人目の試験官から、何の前触れも無くいきなり問われたものです。この質問をコンサルティングというかというと正直微妙ですが、私の力量を推し量っているのだな、と思って回答しました。
Q16 作業環境測定で第1管理区分なのに、尿に有害物が出た。何が考えられるか? この質問はまさに王道のコンサルティング問題だと思います。

さて、何で要改善事例へのコンサルティング質問があるのでしょうか?

これは、労働衛生コンサルタント制度に由来するものと思っています。

つまり、口述試験に合格して、安衛法第84条の規定に基づき登録をすれば労働衛生コンサルタントになれます。そして、労働衛生コンサルタントになれば、安衛法第81条第2項の規定に基づいて他人から報酬を得ての業ができることとなります。

(業務)

第八十一条

2 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。

(登録)

第八十四条 労働安全コンサルタント試験又は労働衛生コンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる。

登録は、単なる事務手続きなので口述試験に合格しさえすれば、誰でも支障なくできることです。その前段階としての口述試験が行政側としては重要であり、上記で見てきた労働衛生一般の知識が豊富であっても、また、実務経験が豊富で改善事例も多数手がけていても、コンサルティングができない人は合格させられないと判断するためにこのような「要改善事例へのコンサルティング」問題が用意されていると思います。

試験官の立場からすると、コンサルティングができない人をコンサルタントとして世の中に送り出してはまずいですよね。仮にその能力が怪しい人が将来間違ったコンサルティングをしてしまったがために重大な問題が発生しては困ります。

ちなみにですが、コンサルタントとなった人についても、試験に合格したから何でもできる、と思うのではなく、常に研鑽が求められます。私がこのHPのブログで日々綴っているのもその研鑽の一部です。

広い意味では、口述試験での全ての質問への回答内容およびその回答の仕方がコンサルティング能力を試さるのだと思って、私は口述試験に臨みました。この辺りの詳細は合格体験記をご参照下さいませ(2021年1月11日(「勝負の4日間」の4日目)のくだりで記載しています)。

(3)勉強方法

口述試験の勉強方法を述べたいと思います。項目は、下記の①~⑤となります。

①労働衛生の全般的知識としての各種ハザードとその対策の理解

②実地体験

③想定質問の作成と回答の準備

④口述回答するための訓練

⑤口述試験対策の動画(4分半)NEW

これらについて、以下、順次説明します。

①労働衛生の全般的知識としての各種ハザードとその対策の理解

労働衛生コンサルタントが対象とするのは労働衛生に関する各種ハザードとなります。労働衛生工学区分で受験すると、さらにそれらハザードへの工学的な対策に力点が置かれるように思います。

各種ハザードとその対策については、筆記試験の準備をしっかりしていれば、改めて一から勉強する必要はなく、下記③に述べる「想定質問の作成と回答の準備」をしながら、復習を兼ねて振り返るだけで良いかもしれません。

しかし、勉強が十分ではないと感じられるようなら、しっかり勉強しておくのが良いと思います。

その勉強方法として、私が実際に行った方法を紹介します。

私が行ったのは、労働基準法施行規則第35条および別表第1の2に規定される業務上の疾病を労働衛生に関わるハザードとみなし、それらハザードの発生状況の洗い出し、発生状況毎のリスク低減措置の把握です。

そして、そのリスク低減措置を、ハザード毎に労働衛生管理の3管理である「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」に仕分けしました。

さらにリスク低減措置を以下の優先順位に分けました(ハザードによっては完全に分けられないものもありましたが)。

  1. 危険性または有害性を除去または低減する措置
  2. 工学的対策
  3. 管理的対策
  4. 個人用保護具の使用

この辺りのことは合格体験記のコラム④の後ぐらいから記載しておりますので、ご興味のある方はご参照下さいませ。

②実地体験

実地体験とは、受験者が労働衛生に関して現場で体験したことです。実地体験があれば、「①労働衛生の全般的知識としての各種ハザードとその対策の理解」に繋がりますし、改善事例があれば尚よいとなります。本来業務で日常的に関わっている業務があればベストですが、そうでないものについてどうするの?という観点で述べたいと思います。

その勉強方法として、私が実際に行った方法を紹介します。

私が行ったのは「できるものなら実際に手を動かしてやってみる」「作業現場を見学させてもらう」「Youtube動画の活用」の3点です。

「できるものなら実際に手を動かしてやってみる」とは、読んで字の如くですが、私がやったのは作業環境測定の計算でした。作業環境測定は業務として外注対応をしていたのですが、肝心の中身の精査までは行っていなかったのです。恥ずかしながら・・・。

実際に手計算してみると、いろいろなことが分かりました。極めつけは「第2評価値が第1評価値よりも小さいこと」の発見です。「えっ!」と思った方がほとんどでしょう。そうです、お馬鹿な私はそのことが理解できていなかったのです。超超超お馬鹿ですよね(このあたりのことは合格体験記のコラム⑦に詳述していますのでご参照下さい、恥ずかしいっ)。

ここで強調したいのは、実際に手を動かすといろいろなことが実感として分かるということです(私の例は極端な例ですが・・・)。そこで体験したことが実務に関連した内容であれば口述試験で実地体験として挙げても問題ないと思います。

次に「作業現場を見学させてもらう」です。私の場合、実際に自分で手を動かせることというのは意外に少ないと感じました。そこで、社内の他部門に頼んで、見学させてもらいました。実際に見学したのは、振動工具を使用する作業や塗装作業などです。作業が終わったら「その振動器具のラベルを見せて下さいっ」とお願いして見せてもらって、周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値が表示されているかをチェックしたりしました。

自らの手は動かせないまでも、見学することでかなりの部分を実感することができました。まさに百聞は一見に如かずですね。

最後に「Youtube動画の活用」です。私の場合、作業現場の見学もままならないというケースも多々あると感じました。前述の振動工具を例にとると、インパクトレンチやセイバーソーは見学で見ることはできましたが、スケーリングハンマーやタイタンパーは取扱いが無かったので、Youtube動画に頼ることにしました。こういう点で動画というのは便利だなと思いました。

動画を見ることで文字、絵、写真でしか分からなかった情報が、実際に動いて状況を視覚で認識できる効用は大きいと感じました。

③想定質問の作成と回答の準備

口述試験の試験形式は試験官の口頭質問に口頭で回答することです。従って、勉強して得た知識を想定質問とその回答という形でまとめておくのが良いと思います。

私が実施した方法等の詳細は「(4)口述試験/想定質問」をご参照いただければと思います。

想定問答集を作成する上でのポイントを申し上げます。

ポイントは、自分自身で想定質問と想定回答を作るということです。

そうしないと意味がありません。特に想定回答について他人のふんどしは絶対に使わないことです。自分自身で納得のいく回答を用意しましょう。

それを用意する過程で、いろいろ調べた情報が、知識となり、そのうちに血となり肉となります。その過程を経験することで、口述試験に合格したあとに、コンサルタントとして活躍する最低限の土台ができあがると、私は信じています。

受験生の方の心境としては、近道をしたいと思います。私の経験談ですが、口述試験勉強を始めた当初、私も参考になる想定問答集があればいいなと思ったことがあります。

私の調査不足もあったのですが、探す時間を割くこともほとんどしなかったので、結局、そのようなものにお目にかかることもありませんでした。

そして、自分の力で一から勉強して、その結果を想定問答集に反映させていったのです。

再度申し上げます、想定問答集は自分自身で作って下さいね。

④口述回答するための訓練

口述試験の試験形式は試験官の口頭質問に口頭で回答することです。従って、最終回答は、受験者が口頭で回答しなくてはなりません。

いくら知識が有っても、回答が分かっていても、頭では分かっていながら、喉元まで出ているのに、口に出せない、思っていることが言えない、思っていることと違うことをつい言ってしまう・・・、ということが往々にしてあります。これが口述試験の重要な場面で出てしまうと辛いですよね(私も頭で思っていること違うことを堂々と答えてしまった回答が1問ありました・・・)

ここが、口述試験の難しいところだと思います。たった15分で合否が決まってしまうという重圧、緊張感がそうさせるのだろうと思います。

その勉強方法というか対処方法として、私が実際に行った方法を紹介します。

それは、想定質問への回答を丸暗記せず、その場で考えて回答するというシンプルなものでした。

丸暗記した場合、想定質問通りの質問が出されて、用意した通りに回答できればベストです。しかし、実際の質問は想定質問通りとはならないこともあります。また、想定質問通りであったとしても、用意した回答がスラスラと出てこないときに焦ります。焦る結果、さらに焦って用意していた回答から断片的な回答をしてしまったり、最悪のケースは黙り込んでしまって、試験官の判断で次の質問に移行されてケースです。こうなるとそのダメージが残って、以降の質問とその回答にも影響が出てくる恐れがあります。まさに負のスパイラスです。

私が丸暗記を止めたのは、口述試験前にパートナーに試験官役になってもらって想定質問に対する回答練習をしていたときのことです(合格体験記の2021年1月10日時点をご参照下さい)。自ら用意した想定質問に対してなかなか回答が出てこないのです。頭では分かっているのにも関わらずです。その翌日(2021年1月11日)に転機があり、想定質問の回答を丸暗記することを止めて、想定回答をベースに自分なりに頭で考えて答えることだけをシンプルにやることにしたのです。そうしたらスラスラ出てくるようになりました。その代わり回答内容や言い回しは毎回微妙に異なることになるのですが。

この方法がベストな方法か?万人に通用する方法か?と言われると分かりません。しかし、私にとっては、この方法で口述試験を切り抜けました(とっても1問は訳の分からない回答をしてしまったので偉そうに言えませんが・・・)。そして、この方法で2021年1月11日以降の口頭回答練習を進めたことが、私にとっての口述回答するための訓練になったことは事実です。

⑤口述試験対策の動画(4分半)NEW

上記を踏まえ、口述試験対策をYoutube動画としてupしましたので、ご覧ください。

内容は上記の①と④に特化しています。ご参考になれば幸いです。

 

(4)口述試験/想定質問

①趣旨

ここでは、私が口述試験の準備のために作成した想定問答集の中から質問のみを随時紹介したいと思います。

受験を終えた立場から言いますと、質問と回答は受験者自ら用意することに意味があると考えていますが、それは受験の最終盤でそのような考えに至ったのであり、試験に臨む前半には「良い参考例があったらいいな~」と思っていたのは事実です。

ですから、私が作成した想定質問についてもこれから口述試験を迎えようとされている方のあくまでご参考として、差し支えない内容のみ公開したいと思います。

②私の想定問答集の作り方

私の場合、どのように想定問答集を作っていったか、作り込んでいったかを紹介したいと思います。とてもシンプルです。

  1. 口述試験のために勉強した内容を忘れないように順次excelファイルに入れていきました。A~D列に以下の内容を記載しました。

A列:通し番号

解説:付番していっても後から行追加は頻繁に起きるので、その日の最後には番号を毎回付け直していました。通し番号は有っても無くてもあまり問題ないと思います。

B列:分野(粉じん、熱中症、電離放射線など)

解説:excelのフィルタ機能を使って抽出するための大見出しのようなものです。これはあった方が良いと思います。

C列:想定質問

解説:勉強した内容を頭の中で整理しながら、忘れないように質問として書いていました。

D列:回答

解説:質問に対する回答を、同じく、忘れないように書いていました。

2.後から質問を追加していく場合には随時行を追加していきました。

想定質問は、基本的には、この1と2だけです。

なお、もう少し具体的に言いますと、想定質問と回答については、まずは、問われた質問への回答のみをシンプルに記載する。そして、具体的なことを問われた場合を想定し、その回答を用意する。そこからさらに派生質問があるとしたらと考え、また、質問とその回答を作る、という具合にしていきました。

以降の想定質問の中に「➡」という記載があるのは、ある想定質問についてシンプルに答えた後に具体的に問われた場合の質問や派生質問を指しています。

③私が作った想定質問/呼吸用保護具

Q.呼吸用保護具について説明してください。
➡呼吸用保護具の選択基準を示して下さい。
Q.防じんマスクはどのようなものに使用できますか?
Q.防じんマスクに比べ、電動ファン付き呼吸用保護具を使用するメリットを説明して下さい。
Q.電動ファン付き呼吸用保護具の着用が義務つけられている作業は?
Q.防護係数とは?
➡具体的な防護係数を言えますか?
➡漏れ込みがあると思いますが?
➡密着性の確認方法にはどんな方法がある?
Q.防じんマスクの選定にあたって気をつけることは?
➡具体的には?
Q.防毒マスクはどのようなものに使用できますか?
➡防毒マスクの選定にあたって気をつけることは?
➡防毒マスクを着用しての作業で他に気を付けるべきことは何か?
➡着用前の点検では何を見ますか?
➡防毒マスクの使用方法としてしてはいけないことは?
➡吸収缶の使用限度を確認する方法は?
➡具体的に説明して下さい。
➡吸収缶を再使用してはいけない有機溶剤には何がある?
➡使用後の吸収缶の廃棄時に気をつけるべきことは?
➡有効な吸収缶が無い場合にはどうしますか?

■解説

呼吸用保護具に関する知識が特に大事だと思ったのは、筆記試験対策で過去問の出題傾向を分析していた時でした。H27年度の選択問題1で全ての問題がろ過式呼吸用保護具に関する問題でした。こんな出題のされ方をするのだ~と驚きがあったと共に、「労働安全コンサルタント労働衛生コンサルタント 試験問題集」(日本労働安全衛生コンサルタント会)のこの問題への回答の解説が秀逸で理解しやすかったのです。この経緯があったので、想定質問もかなりの数となりました。また、呼吸用保護具は派生質問をされやすい分野と思っていたので➡の通り、ほぼ全てを網羅したつもりでした。

■口述試験後の感想・反省

呼吸用保護具については「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、何と計4問(Q9~12)問われました。Q12でマスクの規格(DS2は何?)を問われましたが、正直なところ、ここまで細かいことを問われると予想していなかったので、残念ながら、しっかり勉強はせず、また、想定質問にも挙げていませんでした(口述試験では、DS2のS2は答えられたのですが、Dが出てこず間違った回答をしてしまいました・・・)。反省としては、参考図書に書かれていることは全て知っていないと答えられないのだなと思いました。

④私が作った想定質問/定義・概念・数値などを問われる問題

Q.労働衛生コンサルタントとは何ですか?
Q.労働衛生コンサルタントの業務について説明して下さい。
➡労働衛生コンサルタントの義務は何ですか?
➡具体的な条文を言えますか?
➡もしそれに違反したらどうなりますか?
Q.法令で労働衛生コンサルタントがする業務を具体的に説明して下さい。
➡特別安全衛生改善計画の実効の担保はどのように行われますか?
Q.産業医と労働衛生コンサルタントの違いは何ですか?
Q.労働安全衛生法について説明して下さい。
Q.労働衛生規則について説明して下さい。
➡具体的にはどのように対策を進めますか?
Q.OSHMSとはどのようなものですか?
➡労働衛生管理体制で労働衛生コンサルタントが就くことができるのは何ですか?
Q.作業環境管理の目的は?
➡作業環境管理の工学的対策にはどのようなものがありますか?
Q.作業環境測定の目的は?
Q.作業環境測定の実施手順は?
➡作業環境測定および管理区分の決定方法は?
➡管理区分の根拠は?
A測定、B測定とは?
➡第一評価値、第二評価値とは?
➡第1、2、3管理区分とは?
Q.第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分であった場合に、それぞれ講ずべき措置は何か?
Q.個人サンプリング法による作業環境測定について説明して下さい。
Q.局所排気装置について説明してください。
➡ファンの選定方法を説明して下さい。
Q.局所排気装置での囲い式フードと外付け式フードの排風量の計算式は?
Q.局所排気装置でのvの計算式は?
Q.局所排気装置での速度圧の計算式は?
Q.局所排気装置での圧力損失の計算式は?
Q.局所排気装置での静圧の計算式は?
Q.局所排気装置の設計上の留意点は?
Q.局所排気装置の制御風速を説明してください。
➡局所排気装置の制御風速の数値を説明してください。
Q.抑制濃度とは?
Q.抵抗調節平衡法と流量調節平衡法のそれぞれのメリット、デメリットを説明して下さい。
Q.プッシュプル型換気装置の構造上の要件は?
Q.プッシュプル型換気装置の性能上の要件は?
Q.プッシュプル型換気装置換気装置のデメリットは?
Q.リスクアセスメントとは何か?
➡リスクアセスメントの方法を説明して下さい。
➡リスクアセスメントの実施時期は?
➡リスクアセスメントの方法はどのような方法でも良いか?
Q.リスクアセスメントの調査結果と講じる措置についてはどうしたら良いですか?
➡CREATE SIMPLEのメリットとデメリットを説明して下さい。
Q.新規化学物質とは?
Q.新規化学物質の有害性の調査とは?
Q.GHSとは何ですか?
➡GHSの化学品の分類とは?
➡ハザード評価とは?
➡リスク評価とハザード評価の違いは?
Q.業務上疾病者数で多いものから順番に挙げて下さい。
➡物理的因子による疾病で多い因子は?
➡作業態様に起因する疾病で多い因子は?
Q.定期健康診断の有所見率は?
Q.定期健康診断での有所見率として高い疾病は?
Q.特殊健康診断の有所見率は?
Q.じん肺健康診断の有所見率は?
Q.強いストレスと感じる労働者の割合は?
Q.有機溶剤とは、特別有機溶剤とは?
➡第1種、第2種、第3種有機溶剤はそれぞれ何種類ありますか?
Q.特定化学物質とは?
➡第1類、第2類、第3塁特化物はそれぞれ何種類ありますか?
➡特別管理物質とは?
Q.令和3年4月1日からの特化則の改正について説明して下さい。
➡その他にはないですか?
➡石綿の作業記録と健康診断記録の保存について説明して下さい。
➡石綿が健康障害を発生させる理由は何か?
➡石綿が広範に使用されるようになった理由としてはどのような特性があるためか?
➡じん肺の管理区分について説明して下さい。
➡第9次粉じん障害防止総合対策の重点事項は?
Q.粉じん、ガス、蒸気、ミスト、ヒュームの違いとは?
➡ヒュームの発生しやすい作業には何がありますか?
➡ヒュームや粉じんを長年吸い込むことで発生するものは?
➡溶接ヒュームで起こるじん肺の特徴は?
➡管理区域とは?
➡改正電離則(R3.4.1施行)について説明して下さい。
➡眼の水晶体の被ばく限度値の見直しについて説明して下さい。
Q.どのような職場で酸素欠乏は発生しやすいですか?
➡酸素欠乏症等が発生する原因について説明して下さい。
➡具体的に説明して下さい。
➡高気圧障害の特徴を説明して下さい。
Q.災害性腰痛の発生件数、業務上疾病に占める割合は?
Q.腰痛の多い職場は?
➡重量物の取扱い重量について説明してください。
Q.WBGTとは何か?
➡熱中症のリスク要因で、作業環境中に存在するものを4つ挙げてください
➡熱中症の発生件数は?
➡業種別にはどうですか?
Q.ACGIHとは何か説明して下さい。
Q.第13次労働災害防止計画について説明して下さい。
➡第13次労働災害防止計画の重要施策について説明して下さい。
Q.TLVとは何ですか?
➡TLVを具体的に説明して下さい。
Q.ハザードとリスクの違いは?
Q.量-影響関係、量-反応関係、とは?
Q.THPとは?
Q.法律、政令(施行令)、省令(施行規則)、通達の違いとは?
Q.定期健康診断の実施時期は?
➡特殊健康診断の実施時期は?
➡特殊健康診断の対象となる有害業務には何があるか?
Q.労働衛生における3管理とは?
➡それそれを説明して下さい。
➡リスク低減措置について、優先順位の高い順から説明して下さい。
Q.ストレスチェックの目的について説明してください。
Q.生物学的モニタリング、BEIとは何か説明して下さい。
➡生物学的モニタリングの例を2,3挙げて下さい。
Q.メンタルヘルス不調者の職場復帰支援について説明して下さい。
➡メンタルヘスルケアを推進する上で留意すべき点について説明して下さい。
➡メンタルヘルスケアにおける4つのケアとは何か?
➡具体的には?
➡4つのケアにおけるEAPについて説明して下さい。
Q.ISO7708で規定される粉じんの違いについて説明して下さい。
Q.物理的因子の一般的な特徴は?
➡物理的因子にはどんなものがあるか?

■解説

ここに挙げた「定義・概念・数値などを問われる問題」とは、法令条文自体、定義、概念、具体的な数値など、それ自体を覚えていないと回答できないものです。数式などが問われることはまずないと思ったのですが、せっかく筆記試験で身に着けた知識を忘れず定着化させるために敢えて想定質問に入れました。ただ、万が一、筆記試験と同じような問題を問われたら困るなと思って想定質問に入れたのも事実です(単なる心配性ですが・・・)。改正電離則(R3.4.1施行)を入れていることに「おやっ」と思った方も居られると思います。法令は口述試験では問われないことになっており、且つ、試験の法令基準年月日が私の受験時はR3.4.1より前なので、当然、改正電離則は出題されないはずです。ただ、私は口述試験の実務経験を問われた時に電離則関係に質問を誘導する意図の回答を用意したので(詳細は合格体験記をご参照下さい)、もしも、改正電離則のことを問われたらと思って想定質問に入れました(ここまで保険を掛ける必要はないと思います)。

■口述試験後の感想・反省

「定義・概念・数値などを問われる問題」については「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、計6問(Q7,Q9,Q10,Q11,Q12,Q14)問われました。結果的に想定質問はほとんど空振りに終わりました。当然と言えば当然です。空振りに終わったものの、この時に覚えた内容は今でもしっかり覚えているので、今後に役立つと思っており、決して無駄にはなりません。なお、想定外の質問は前述の通り、Q12のマスクの規格(DS2は何?)のみでした。反省は特にありません。

⑤私が作った想定質問/作業環境測定

(注:「④私が作った想定質問/定義・概念・数値などを問われる問題」と一部重複あり)

Q.作業環境測定の目的は?
➡作業環境測定を実施したことはあるか?
➡作業環境測定の結果報告書を見たことはあるか?
Q.作業環境測定の実施手順は?
➡作業環境測定および管理区分の決定方法は?
➡管理区分の根拠は?
Q.A測定、B測定とは?
➡第一評価値、第二評価値とは?
➡第1、2、3管理区分とは?
Q.第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分であった場合に、それぞれ講ずべき措置は何か?
➡A測定の評価がよくないために第3管理区分に入る場合は何が考えられるか?
➡A測定の評価が悪くないのにB測定の評価が悪いために第3管理区分に入る場合は何が考えられるか?
➡A測定の幾何標準偏差が大きい場合、A測定の評価が悪いのにB測定の評価が良い場合は何が考えられるか?
Q.個人サンプリング法による作業環境測定について説明して下さい。
Q.第1管理区分にも関わらず有所見者がいる場合、確認すべきことは何か?

■解説

作業環境測定は、事業場の労働衛生環境の評価には必須であり、さらに、管理区分に応じた作業改善は労働衛生工学区分のコンサルタントには必須の能力のため、超重要項目となります。そのため、口述試験でも複数問われる前提で準備をしました。準備をするにあたり、まず、作業環境測定に関わる定義や概念、作業手順の進め方などベースとなる知識をしっかり把握しておかなければなりません。つまり、第一管理区分や第二管理区分など個々の定義が分かっているのは当然として、作業環境測定という全体の流れの中でのそれぞれの位置付け、意味をしっかり理解しておく必要があるということです。そうしないと、第一評価値と第二評価値の大小を口述試験本番3日前までしっかり理解していなかったお馬鹿な私のようになります・・・(詳細は合格体験記のコラム⑦参照)。特に、実際に作業環境測定の実地経験の無い方は、測定結果を入手するなどして、少なくとも一度は計算も含めて対応の流れを経験しておくのがbetterです。これも貴重な実地経験になります。また、作業環境測定は、しっかり理解している前提での応用問題、質問者を困っている事業者に見立ててのコンサルティング問題が出される可能性が十二分にあると思って対策をしておきましょう。

■口述試験後の感想・反省

「作業環境測定」に関係する質問は「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、計4問(Q4,Q5,Q6,Q16)問われました。結果的に、定義、概念に関する質問は出ませんでした。これらは筆記試験をパスしているので当然知っているものとして敢えて問われなかったものと思います。一方、管理区分に応じて作業環境改善や質問者を困っている事業者に見立ててのコンサルティング問題が出されました。いずれも想定内の質問でしたし、Q16は上記の想定質問とほぼ同じでした。反省は特になく、作業環境測定について多数の質問が出たことから、口述試験でも重要視されていることがよく分かりました。

⑥私が作った想定質問/局所排気装置

(注:「④私が作った想定質問/定義・概念・数値などを問われる問題」と一部重複あり)

Q.局所排気装置について説明してください。
➡局所排気装置を設計したことはあるか?
➡ファンの選定方法を説明して下さい。
➡排風機の風量を変えたくない時、静圧曲線が計算上の動作点に乗るように排風機の回転数を変えるにはどうしたらよいですか?
➡排風機の回転数を変えられない場合にはどうしたらよいですか?
➡排風機を変えずに希望する排風量に調節する方法は?
Q.局所排気装置での囲い式フードと外付け式フードの排風量の計算式は?
Q.局所排気装置でのvの計算式は?
Q.局所排気装置での速度圧の計算式は?
Q.局所排気装置での圧力損失の計算式は?
Q.局所排気装置での静圧の計算式は?
Q.局所排気装置の設計上の留意点は?
Q.局所排気装置の制御風速を説明してください。
➡局所排気装置の制御風速の数値を説明してください。
Q.抑制濃度とは?
Q.静圧のバランスをとる方法を説明して下さい。
Q.抵抗調節平衡法と流量調節平衡法のそれぞれのメリット、デメリットを説明して下さい。
Q.粉じんが発生する場所の局所排気装置を設計する場合は何を重要視しますか?
Q.局所排気装置の工事完成後に性能が出ない場合の対策を答えて下さい。
Q.局所排気装置の必要排風量を減らすにはどうしたらよいですか?
Q.局所排気装置とプッシュプル型換気装置とは?その違いは?

■解説

局排およびその設計は、労働衛生工学区分のコンサルタントには必須の能力です。ただし、そのことは試験の観点だけから言うと、筆記試験で十分問われているため、口述試験では正直なところ問われることはないだろうなと思っていましたが、基本的な問いには答えられるように準備をしました。一方で、せっかく筆記試験で身に着けた知識を忘れないようにと、口述試験の想定質問として敢えて式や定義を盛り込むことにしました。そして、局排について、口述試験で絶対に聞かれたくないこと、それは局排設計についての実地経験のことです。例えば、「局排を設計した経験はありますか?」というものです。これは、試験前にネット経由で入手した受験者の過去問でも結構な頻度で問われているようでした。私は局排設計の経験が無かったので、このことを問われたらそれだけでマイナスが付くと思って「まずいわ、何とかできないかしら・・・」と頭を悩ませました。聞かれるのを分かっていながら、みすみす「設計の経験はありません」と正直に答えるのも嫌だったので、策を練ったのでした。その経緯は合格体験記に記載した通りです。

■口述試験後の感想・反省 

「局排およびその設計」に関係する質問は結果的にありませんでした。勿論、その理由は分かりませんが、ひょっとしたら、練った策が功を奏したのかもしれませんし、試験官の気まぐれで単に聞かれなかったのかもしれません。もし、前者の可能性があるとしたら、それは、試験官が口述試験序盤に聞いた質問の回答(特に実地経験や作業改善の内容)から幾重にも質問の派生パターンを持っていることを示していると思います。所詮、お馬鹿な私の考える浅はかな策に試験官がまんまとはまる訳はないと今でも信じていますが、たった15分間の試験時間の間に交わされる15問程度の質問とその回答で全てが決まるという、受験生には重すぎる事実を考えると、明らかに聞かれそうなことにはやはり対処すべきという明確な結論があると思います。ですから、局排設定の実地経験の無い方は、それなりの準備をしっかりすることをお勧めします。反省は特にないのですが、局排に関する想定質問を自分なりにしっかり作ったことで、知識の定着化がさらに進んだと思っています。ちなみに今でもスラスラと想定質問の回答を言うことができますよ。

⑦私が作った想定質問/コンサルティング NEW

Q.事業者から、指摘事項は分かるがお金がない、と言われたどのように説得しますか?私を中小企業の事業者として想定し、説得してみて下さい。
Q.「今使用している化学物質の管理をどうしたらよいのか分からない」と事業者から相談されたらどうすべきですか?
➡どのようなリスクアセスメントの方法を提案しますか?
Q.現在使用している化学物質について、他事業所において新たな健康障害が出現したと報告されている場合、どう対応するか?
➡健康障害が起こっていないと判明した場合にはどうしますか?
Q.ある物質についてそれが法令上リスクアセスメントの義務のある物質かどうかを調べるためにはどうしたらよいですか?
Q.溶接作業で衛生上問題となる有害物質は?その作業環境改善技術は?

■解説 NEW

コンサルティングに関する問題とは、「3.(2).③試験官が出す要改善事例へのコンサルティング」の項のことを示しています。つまり、労働衛生に問題のあるシチュエーションを試験官が作って、それに対してあなたならどうやってこの状況を改善するか?ということです。勿論、コンサルティングですから、単に答えるだけでなく、質問者である試験官(実場面では相談者になる)をどう納得させられるかが問われることにもなりますので、コンサルタントとしては最も重要な能力と言えます。ここに示した想定質問は実際に作った中の一部です。実際に何を聞かれるか想像がつきにくいというのが難点です。応用問題ですから、難しいのは当然です。しかし、それはあまり気にする必要はないと思います。何故かというと、基本的な知識がしっかりしていればその知識を組み合わせれば大方の質問に答えることが可能だからです。ただし、訓練が必要です。訓練のヒントとして、この中で最後の想定質問(Q.溶接作業で衛生上問題となる有害物質は?その作業環境改善技術は?)は溶接作業についてのものですが、作業部分を鋳物工場、メッキ作業などに置き換えるなどすれば、いろんなパターンの想定質問ができます。

■口述試験後の感想・反省 NEW

「コンサルティング」に関係する質問は「4.口述試験で実際に私が問われた質問」に示す通り、計3問(Q13,Q15,Q16)問われました。結果的には、ほぼ想定内の質問でした。私の受験体験だけからすると「オーソドックスなコンサルティング問題が出る」といった感想を持ちました。反省は特にありません。コンサルティング問題対策(引いては口述試験対策)として、あらゆるハザードに対してそれが発生し得る主な業種でのハザード対策に関する知識をベースに答える訓練を重ねたことが良かったと感じています。そして、その勉強の方向性は間違っていなかったと思っています。

4.口述試験で実際に私が問われた質問

ここでは、口述試験で実際に私が問われた質問を記載しています。この質問の回答については、合格体験記に詳細に記載しておりますので、ご興味のある方はそちらをご参照下さい。

Q1 受験番号・試験の区分・氏名は?

Q2 労働衛生の経験年数は?

Q3 労働衛生に関してこれまでどのようなことをしてきましたか?

Q4 管理区分が3などになったときの具体的な作業改善について説明して下さい。

Q5 電離則で作業環境測定をしたということは作業環境測定士の免許を持っている?

Q6 濃度の測定はやっていないですよね?

Q7 電離放射線の被ばく防止の3つの原則は?

Q8 先ほど、●の作業環境改善を説明してもらいましたが、リスク低減措置の順位に沿って説明して下さい。

Q9 呼吸用保護具について説明してください。

Q10 防毒マスクの選定基準は?

Q11 吸収缶を選ぶ際の基準は?何かの物質用というのがあったと思いますが?

Q12 私が今つけているマスクはDS2のマスクです。このマスクのことを説明して下さい。

Q13 事業者からお金がないと言われたら、どのように説明しますか?

Q14 安全衛生管理計画を作成されたとのことでご存じかと思うが、OSHMSについて説明して下さい。

Q15 いろいろご経験されてきた中でお金がなかったりしたことで困ったことはなかったか?

Q16 作業環境測定で第1管理区分なのに、尿に有害物が出た。何が考えられるか?

 

以上