出典:厚労省HP:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/CREATE-SIMPLE_manual_v3.0.1.pdf

 

はじめに

CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)とは、厚生労働省が開発したリスクアセスメントツールで、サービス業などを含め、あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールです。この2月にver3.0が、そして3月にver3.01がリリースされましたので、簡単にご紹介したいと思います。

 

CREATE-SIMPLEとは?

 

CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)の正式名称は「Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces」と言います。正式名称の英単語の頭文字をとって、CREATE-SIMPLEという略称が付いています。

 

CREATE-SIMPLE は、2018年3月に初版が発出されて以降、数回のバージョンアップを重ね、2023年11月のver2.5.1からしばらく改訂されていませんでしたが、この2月27日にひっそりとCREATE-SIMPLE ver3.0がリリースされました。そして、このコラム記事を書いている3月23日時点ではver3.01へと細かい修正が行われました。

 

このようにCREATE-SIMPLEは、2024年4月1日から完全施行される化学物質の自律管理を控え、度重なるバージョンアップを重ね、そして、今後も修正が加えられることが予想されます。CREATE-SIMPLEは厚労省の職場のあんぜんサイト「化学物質のリスクアセスメント実施支援」からダウンロードすることができますので、適宜、最新verを確認することをおすすめします。

 

化学物質の自律管理に必須なツール!?

 

2024年4月1日から完全施行される化学物質の自律管理では、危険性・有害性が確認された全ての物質を対象として、以下のことが事業者に求められます

 

  • ばく露を最小限とする(危険性・有害性が確認されていない物質については、努力義務)
  • 国が定める濃度基準がある物質は、ばく露の程度を濃度基準以下とする
  • これらを達成するための手段については、リスクアセスメントの結果等に基づき、事業者が適切に選択する

 

これらを達成するためには、事業場で使用される対象化学物質のばく露量を実測するか推定しないといけません。

 

実測とは、作業環境測定、個人ばく露測定、検知管法等の方法で実際に測るということです。実際に測定するために後述する推定よりも数値の信頼性は高くなります。その一方、実測には手間とコストがかかります。そこで、より手間とコストを削減した推定という方法も選択肢として認められています。

 

推定とは、マトリクス法、数値化法、コントロールバンディング法、数理モデルなど、何らかのリスクアセスメント手法によりリスクの見積もりをして化学物質のばく露量を推定しようとすることです。どの手法を用いるかは事業者に任されています(具体的には化学物質管理者の義務となります)。

 

CREATE-SIMPLEは、このリスクアセスメント手法の中の数理モデルの一つです。化学物質の吸入ばく露、経皮ばく露による健康リスク爆発物や引火性などの危険性リスクを、簡単な質問に答えていくだけで、知識が無くても、リスクを見積もることが可能です。私も過去のバージョンも含めて、何度も使ったことがありますが、使用する化学物質の情報を入力し、その後に実使用場面を想定したいくつかの質問に答えていくだけで、あっさりとリスクを見積もることができ、便利だなと感じています。

 

マニュアルも完備されているのでご参照下さい。

 

CREATE-SIMPLEの大きな特徴を以下に挙げます。

  1. 今般の化学物質の自律管理を踏まえた技術上の指針によりフィットした内容になっていること
  2. 推定吸入ばく露量および推定経皮ばく露量の見積もりができること
  3. 質問への回答を変更することでリスクの再見積もりが何度でも可能なこと(つまり、ばく露防止対策として何が有効なのかを判定することができる)
  4. 混合物中の成分(最大10物質)の一斉評価機能があること(ver2.5.1からの大きな変更点)
  5. 危険性のリスクの見積もりができること

 

上記特徴1および2により、CREATE-SIMPLEを用いることで、事業者に求められる「濃度基準がある物質について、ばく露の程度を濃度基準以下とする」を達成することが期待できます。見積もられた推定吸入ばく露量および推定経皮ばく露量を濃度基準値と比較してくれるからです(濃度基準値が設定されている化学物質の場合)。

 

その上で、技術上の指針に規定されている、「濃度基準値が設定されている物質について、リスクの見積りの過程において、労働者が当該物質にばく露される程度が濃度基準値を超えるおそれがある屋内作業を把握した場合は、ばく露される程度が濃度基準値以下であることを確認するための測定(以下「確認測定」という。)を実施すること」をも判定してくれます。

 

以上の特徴から、リスクの見積もりにはCREATE-SIMPLEの最新バージョンをご使用されることをおすすめします。

 

リスクアセスメントツールにだけ頼ることの危うさ

 

以上のように、リスクの見積もりにはとっても便利なCREATE-SIMPLEですが、知識が無くても利用できる便利さ故に気をつけるべきこともあると感じています。

 

1つ目は、取扱う化学物質自体の性質への理解が疎かにされる可能性です。

 

リスクアセスメントを行うには、取扱う化学物質自体の性質への理解が必須だと感じています。化学物質には固有の物理化学的性質があり、ばく露の観点から押さえておくべき性質として、常態として液体・固体・気体のいずれか?発散する性状はミスト・粉じん・ヒュームのいずれか?などがあります。

 

これらを理解しておくことで、作業場での化学物質のばく露経路が推定でき、そのための有効なばく露防止対策が選択しやすくなります。事業場で使用する化学物質についてこれら性質をしっかり押さえた上で、CREATE-SIMPLEを活用すればなお良いと思います。ちなみに、化学物質の物理化学的性質はSDSの第9項「物理的及び化学的性質」に記載されていますので、適宜、ご参照下さい。

 

2つ目は、CREATE-SIMPLEでの見積もり結果には誤差があることです。

 

CREATE-SIMPLEのアウトプットとして、推定吸入ばく露量および推定経皮ばく露量が出てきますが、その値はあくまで推定値であり、その推定値は実測値と比較して最大100倍程度の誤差が含まれている可能性があると言われています。

 

CREATE-SIMPLEには「CREATE-SIMPLE の設計基準」というものあり、簡単に言うと、どのような思想で設計されているかが書かれています。これを読むと、相当に保守的な推定となっていることが分かり、これはこれで意味があると思いますが、そのことも誤差の要因だと思われます。誤差が生じることは仕方のないこととして、そのような誤差があるのだということを理解した上で、CREATE-SIMPLEを使用すれば良いと思います。

 

最後に

あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールであるCREATE-SIMPLEはおすすめではありますが、バージョンアップがそこそこ頻繁に行われ、また、入力すれば誰でも簡単にリスクの見積もりができるブラックボックス的な要素もあり、不安を覚える方も居られるのではないかと思います。

 

CREATE-SIMPLEについてご不明点等ございましたら、お気軽に当社へご相談下さいませ。当社代表はCIH労働衛生コンサルタントであり、化学物質管理専門家、作業環境管理専門家要件を満たす、化学物質に関する専門家です。お問い合わせはこちらから。

 

今回は、CREATE-SIMPLE ver3.01のリリースについてご紹介しました。

 

本内容は2024年3月23日時点の情報に基づいています。

 

関連リンク

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