日本産業保健法学会第2回学術大会/オンデマンド参加 03

前2回の関連記事では日本産業保健法学会第2回学術大会にオンライン参加したことをアウトプットしました。今回は、今月いっぱい公開されるオンデマンド視聴で聴講した内容のうち「シンポジウム5 建設アスベスト訴訟を振り返る」についてプチアウトプットしたいと思います。

 

まず、当該シンポジウムで議論された建設アスベスト訴訟とは何かということですが、こちらの厚労省のサイトに記載されているのでご覧ください。概要を下記に抜粋しました。

 

建設業務に従事していた元労働者等とその御遺族の方が、石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟(建設アスベスト訴訟)について、令和2年12月14日以降、最高裁判所が国の上告受理申立てを受理しないとの決定を行ったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定するとともに、令和3年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されました。

 

この訴訟の判決のポイントは以下の通りです。

 

  • 安衛法の下、石綿の危険性表示等に係る規制権限を十分に行使しなかったとして、「労働者」だけでなく、これに該当しない一人親方等との関係でも国の賠償責任を認めたこと。
  • 建材に含まれる石綿の危険有害性等を表示することなく製造販売したことについて、メーカーの責任を認めたこと。

 

これらを踏まえ、当該シンポジウムでは2名の法学研究者から本判決の意義に関する報告があり、また、化学物質による自律管理への移行をにらみ、今回のようなアスベスト被害を今後防止する上で必要となる点について産業保健の実務に携わってきた技術面の専門家2名の演者により報告がありました。

 

ここからは私の感想です。

 

まず、法学者2名の方の報告を伺い、この判決が画期的だったことが分かりました。特に、安衛法第22条、同57条の適用範囲に関する解釈と、安衛法の対象労働者以外にも拡大し請負人に対しても労働者と同一の保護措置を要求することになったことです。正直に申し上げると判決が出た時にはこれらのことに踏み込んだ理解ができていなかったのですが(恥ずかしい・・・)、聴講することで良く分かりました。これこそ、まさに当学会の真骨頂である法学の観点からも産業保健を見るという視点があったからこそだと思います。ありがとうございますっ!!

 

そして、この判決は、フリーランスへの対策にも今後波及していくものと思われます。すでに国の検討会でも協議が始まったとのことでした。私もいずれコンサルタントとして独立したあかつきにはフリーランスとなるため、しっかりフォローせねばと思いました。

 

技術面の専門家2名の報告はいずれも興味深かったです。

 

特に、当時知り得ていた知見に基づき適切に対処しなかった国、建材メーカーの対応が問われたことを、産業衛生・産業保健に関わる者として私もしっかり認識せねばと思いました。今後の化学物質の自律管理移行は、事業者が自ら考えて行動することを求められています。そこに如何に専門家が関与して、しっかり道筋をつけることができるのかを考えねばなりません。それは単に「基準を守ったらよいでしょっ」「●●と同じことをやっているから大丈夫よね」のような視点ではダメです。そのことはこれまでこのブログでも再三に渡り書いてきたことです。事業所内の事情はそこに特化したものです。その状況で如何に労働災害を発生させず、従業員が健康で生き生きと働ける環境を築くことができるかがポイントです。

 

これらを達成するために重要となる専門家についても話題が広がりました。まさか、ここでこの話題に触れるとは思ってもみなかったのですが、演者2名の考えを聞くことができて良かったです。内容は従来の方向性と変わりませんが、どの立場の人がどの立場の人を専門家と認識しているかがよ~く分かりました(もったいぶった言い方ですいません)。

 

そして、こういう場に出てきて(招待され)、今回の主題を過去経緯も含め何をなすべきか、そして、将来の方向性をしっかり示せることも専門家の役割なんだなと思いました。

 

ということで、今日はここまで。

急に寒くなってきたので風邪をひかないように。

特にコンサルタント試験に臨む方はご自愛下さいね。

 

 

 

 

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