安衛法における歯科医師について
労働衛生コンサルタント試験問題で悩ましい「歯科医師」の存在
労働衛生コンサルタント試験の関係法令の問題では歯科医師に関連した問題がちょくちょく出てきます。これは産業医とは別に歯科医師のみが関与する業務が有るということを示しています。今だから言えることですが、試験の時にはこのあたりのことを実はきちんと理解しないままでした(汗)。なので、知識の整理を兼ねて少しだけ勉強したのでその内容を記載しておきたいと思います。
労働安全衛生規則の第四節は「産業医等」という見出し文があり、ここでは産業医の選任、職務等が規定されています。第14条にはその見出し文が「産業医及び産業歯科医の職務等」と書かれており、ここで歯科医師が登場します。さらに同条第5項および第6項で歯科医師に関する規定が下記の通り書かれています。
労働安全衛生規則
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第十四条
5 事業者は、令第二十二条第三項の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については、第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。6 前項の事業場の労働者に対して法第六十六条第三項の健康診断を行なつた歯科医師は、当該事業場の事業者又は総括安全衛生管理者に対し、当該労働者の健康障害(歯又はその支持組織に関するものに限る。)を防止するため必要な事項を勧告することができる。
つまり、第5項では、「令第二十二条第三項の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については」「第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について」「適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。」のですね(何や条文そのままやないかい!! というツッコミはさておき・・)。
では、その令第二十二条第三項の業務は何かと調べてみると以下の通りなのですね。
労働安全衛生法施行令
(健康診断を行うべき有害な業務)
第二十二条
三 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
同第3項の冒頭に書かれている別表第三はというと以下の通りとなっています。
別表第三 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)一 第一類物質1 ジクロルベンジジン及びその塩2 アルフア―ナフチルアミン及びその塩3 塩素化ビフエニル(別名PCB)4 オルト―トリジン及びその塩5 ジアニシジン及びその塩6 ベリリウム及びその化合物7 ベンゾトリクロリド8 1から6までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は7に掲げる物をその重量の〇・五パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。)二 第二類物質1 アクリルアミド2 アクリロニトリル3 アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基である物に限る。)3の2 インジウム化合物3の3 エチルベンゼン4 エチレンイミン5 エチレンオキシド6 塩化ビニル7 塩素8 オーラミン8の2 オルト―トルイジン9 オルト―フタロジニトリル10 カドミウム及びその化合物11 クロム酸及びその塩11の2 クロロホルム12 クロロメチルメチルエーテル13 五酸化バナジウム13の2 コバルト及びその無機化合物14 コールタール15 酸化プロピレン15の2 三酸化二アンチモン16 シアン化カリウム17 シアン化水素18 シアン化ナトリウム18の2 四塩化炭素18の3 一・四―ジオキサン18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)19 三・三′―ジクロロ―四・四′―ジアミノジフエニルメタン19の2 一・二―ジクロロプロパン19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)19の4 ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)19の5 一・一―ジメチルヒドラジン20 臭化メチル21 重クロム酸及びその塩22 水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)22の2 スチレン22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)22の5 トリクロロエチレン23 トリレンジイソシアネート23の2 ナフタレン23の3 ニツケル化合物(24に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)24 ニツケルカルボニル25 ニトログリコール26 パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン27 パラ―ニトロクロルベンゼン27の2 砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く。)28 弗化水素29 ベータ―プロピオラクトン30 ベンゼン31 ペンタクロルフエノール(別名PCP)及びそのナトリウム塩31の2 ホルムアルデヒド32 マゼンタ33 マンガン及びその化合物33の2 メチルイソブチルケトン34 沃化メチル34の2 溶接ヒューム34の3 リフラクトリーセラミックファイバー35 硫化水素36 硫酸ジメチル37 1から36までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
さらに、同条に最後の方に出てくる「第十六条第一項各号に掲げる物」は以下の通りですね。
(製造等が禁止される有害物等)
第十六条 法第五十五条の政令で定める物は、次のとおりとする。
一 黄りんマツチ二 ベンジジン及びその塩三 四―アミノジフエニル及びその塩四 石綿(次に掲げる物で厚生労働省令で定めるものを除く。)イ 石綿の分析のための試料の用に供される石綿ロ 石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿ハ イ又はロに掲げる物の原料又は材料として使用される石綿五 四―ニトロジフエニル及びその塩六 ビス(クロロメチル)エーテル七 ベータ―ナフチルアミン及びその塩八 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の五パーセントを超えるもの九 第二号、第三号若しくは第五号から第七号までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は第四号に掲げる物をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物
つまり、これらが、事業者が歯科医師の意見を聞くべき「歯又はその支持組織に有害な業務」となる訳ですね。
では、労働衛生コンサルタント試験で歯科医師の関連業務を把握するためにこれらを全て覚える必要があるのか?と考えると、お馬鹿な私の頭では到底無理無理っとなる訳です。
では試験対策としてどうしたらよいのか?というと、私の考えとしては、「歯科医師に関する上記に示すような法律の建付けを理解した上で、試験に頻出の弗化水素など一部の対象物質を覚えておく」のが良いと思います。
歯科医師に関してだけでもこんな感じですから、筆記試験の関係法令の問題は、こういう考え方をして対処しないと覚えて理解することが膨大すぎて現実的には難しいと思います。さらに、関係法令だけでなく、衛生一般や、労働衛生工学という難関の専門科目に並行して対処しないといけないことも理由です。
ただ、だからといって関係法令は疎かにしてはいけない。これは合格体験記にもくどく書いたことです。
筆記試験免除で関係法令をパスする選択肢もありですが、法令はすべての基礎なので試験を契機にしっかり勉強することをお勧め致します。
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