眼の水晶体の被ばく低減へのOSHMSの活用

OSHMSの真髄を見た!!(気がするのは私だけ?)

 

先日の記事(改正電離則を調べての気づき)で「不均等被ばくを伴う放射線業務における被ばく線量の実態調査と線量低減に向けた課題評価に関する研究」で眼の水晶体の被ばくを抑えるために「放射線防護マネジメントシステム」という労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)を活用されていることを少し紹介しました。

 

今回は、放射線防護マネジメントシステムが眼の水晶体の被ばく低減にどのように活用されようとしているのかを調べたので備忘として記載したいと思います。

 

改正電離則施行に向けて、「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」が計6回開催されました。その第3回検討会において「基本的な労働衛生対策と労働安全衛生マネジメントシステムについて」が提出されています。

 

当該資料にはOSHMSおよび労働衛生の3管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)に関する初歩的な説明がされており、その後、これらを用いて放射線管理および放射線防護をどう実施しようとしているのかが分かりやすく説明されています。

 

秀逸だと感じたのは、目標設定に明確な指標とその数値目標を設定しているところです。さらに、それだけに留まらず、運用方法、さらには、監査員の選抜を含めた評価手法まで書かれていることです。

 

つまり、今般の改正電離則の柱は「眼の水晶体の被ばく限度の低減」です。眼の水晶体への被ばくは電離放射線が原因です。電離放射線は物理的有害因子です。それを労働衛生の観点から対策していくためにOSHMS、労働衛生の3管理をベースに対処しようとしています。その結果、策定された放射線防護マネジメントシステムを被ばくが問題となる医療現場に導入しようとしている訳です。

 

この詳細説明については、第3回検討会の議事録にも、研究代表者である欅田尚樹氏の説明が掲載されていますのでご参考まで。

 

また、放射線防護マネジメントシステムのD(実行)の支援策としては、この放射線防護マネジメントシステムの教育機会がありました。それが、先の記事で紹介した放射線被ばく管理に関する労働安全衛生マネジメントシステム導入支援事業 になるのです。

 

教育は、労働衛生の3管理と並び重要視されており、3管理に教育、労働衛生管理体制を加え5管理とも言われています。

 

さて、肝心の放射線防護マネジメントシステムを運営していく上で課題もあります。それは、医療機関において個人被ばく線量計が適切に装着されていないという問題です。

 

これは、欅田尚樹氏自身が「不均等被ばくを伴う放射線業務における被ばく線量の実態調査と線量低減に向けた課題評価に関する研究」で「線量計装着が適切に実施されていない状況が観察された」と指摘しています。

 

これは、先の記事に示したように下記の内容としてNHKが取り上げています。

 

さて、今年1月にNHKニュースで「医師の6割 法令で義務づけの線量計装着せず 産業医科大調査」という報道がありました。これは医師、看護師などの医療関係者が自らの被ばくを測定するための線量計を相当数の方が着用していない実態を明らかにしたものです。

 

眼の水晶体の被ばく低減には、大前提として対象となる作業者が自ら個人被ばく線量計を着用して被ばく管理しないといけないのです。

 

医療機関での労働衛生管理の実態は知りませんが、個人被ばく線量計の着用率が低いことは医療現場での労働衛生への認識不足を物語っており、放射線防護マネジメントシステム自体が有効に活用されるのかという疑問、心配にも繋がってきます。この点は、労働衛生コンサルタントとしても、電離放射線管理に携わる者としても、しっかりウォッチしていきたいと思います。

 

さて、遅ればせながら、今回、何故にこの放射線防護マネジメントシステムについて調べてみようとしたかというと、「基本的な労働衛生対策と労働安全衛生マネジメントシステムについて」を最初に見たのが確か1年以上前だったのですが、その時に、「OSHMSを有効に生かされた非常に良い事例だな」という淡い記憶が残っていたことに起因します。

 

その後、今回の改正電離則を改めて調べていくうちに、その記憶が蘇ってきたのです。さらに、昨年は労働衛生コンサルタント試験で散々OSHMSについて勉強したのですが、改めてOSHMSは有効だなあとつくづく感じたのです。

 

それらが合わさって、今回改めて調べてみようと思い立ちました。そうすることも、今後のコンサルタントとしての知識アップに有効と思ったのです。

 

また、今回の放射線防護マネジメントシステム策定経緯を見ていると、その策定自体にも、OSHMSの下、PDCAを回していることがよ~く分かります。OSHMS、労働衛生の3管理の本質がしっかり生かされている好事例と言いましょうか、本当に良い教科書を見ているように感じるのは私だけでしょうか。

 

こういったシステムを作る者は基本に忠実に実践していくものだよ、と教えられているようにも感じました。

 

私は会社での立場上、OSHMSでの安全衛生計画の策定に携わっています。今回の放射線防護マネジメントシステムの成り立ちを良い事例として、お馬鹿な私なりにしっかり精進したいと思いますです。

 

 

 

 

Follow me!

眼の水晶体の被ばく低減へのOSHMSの活用” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)