読書記録 007 「若き数学者のアメリカ」
書籍名:若き数学者のアメリカ
著者 :藤原正彦
出版社:新潮文庫
購入動機:昨年2022年12月の新聞紙上で藤原正彦氏の現代日本の論評を読んで大変感銘を受けたので、著書の中から知っている本を購入したといういきさつでこの本に巡り合いました。
気づき3点。
1.恐るべし洞察力
この本で一番驚かされるのは、その類まれなる洞察力です。その洞察力が発揮される対象としてアメリカ、アメリカの学生、アメリカの学者たちなどがあります。数学者としてアメリカに留学して数学漬けの毎日を送っていただろうに、この本にはその数学のことは1割も出てきません。ひたすら、周りのモノ、事への洞察が随所に散りばめられていて、しかも、それがとても奥深いのです。アメリカ留学記となるこの本は、藤原氏が34歳の時に書かれたものですが、この年齢でここまで深く物事を洞察する力があることにただ脱帽してしまいました。
2.学者の世界についての洞察
その洞察の中でも、今の私に特に興味深かったのは学者の世界について語る第8章です。ここでは、学者の世界がどういう構造をしているのかを「研究至上主義vs教育も研究と共に重要」という切り口でとても分かりやすく論じて下さっています。私が学生時代だった30年前にも少しはこういう臭いは感じ取っていたのですが、今、社会人として大学院生として大学に所属している立場だと、このことをとても生々しく感じてしまうのです。ただ、これは、学者の世界ではなく、どの世界でも同じことが起きていると私は感じています。
3.今、この本に出会って良かった
実は、約10年前、私は本書にニアミスしています。地域の公共図書館主催の書評会なるものに参加した際、ある女学生が書評していたのです。その方の書評が面白く、興味を掻き立てられたので読もうかなと思ったのですが、当時、読もうかなリストが100冊を超えていたため、結局、読むに至りませんでした。しかし、読む機会が今になって良かったと感じています。当時、読んでいてもこの本のすばらしさに当時のお馬鹿な私は気づいたかな?と首をかしげるからです。本が凡庸になるか、傑作となるかは出合うタイミングによるものだなと改めて思いました。
ということで、今日はここまで。
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