事務所衛生基準規則でのCO2濃度
換気シミュレーターを調べる前に・・・
室内におけるcovid-19対策として二酸化炭素濃度を指標として換気を促す取り組みが行われています。その一つが、産業衛生学会の換気シミュレーターです。これについて調べようとしたのですが、その前に、関連事項について調べたのでそれを記載したいと思います。
今回は、室内においてのCO2濃度を規定している法令について調べました。
まずは、事務所衛生基準規則(事務所則)です。事務所則は、安衛法の特別衛生規則11本の中の一つです。事務所則第5条第1項第2号に対象となる事務所での事業者が果たすべきCO2濃度について規定されています。
事務所衛生基準規則
(空気調和設備等による調整)第五条 事業者は、空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。以下同じ。)又は機械換気設備(空気を浄化し、その流量を調節して供給することができる設備をいう。以下同じ。)を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。一 (省略)二 当該空気中に占める一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率が、それぞれ百万分の十以下(外気が汚染されているために、一酸化炭素の含有率が百万分の十以下の空気を供給することが困難な場合は、百万分の二十以下)及び百万分の千以下であること。三 (省略)
ちなみに、事務所則の対象事務所は同則第1条第1項に規定されています。
第一条 この省令は、事務所(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に掲げる建築物又はその一部で、事務作業(カードせん孔機、タイプライターその他の事務用機器を使用して行なう作業を含む。)に従事する労働者が主として使用するものをいう。)について、適用する。
上記の建築基準法第2条第1号に掲げる建築物の規定は以下の通りです。
(用語の定義)第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
話をCO2濃度に戻しますね。
事務所則から、空気調和設備を設けている場合には百万分の千以下と規定されています。つまり、1000ppm以下となります。
空気調和設備とは、空気を浄化し、合わせて温度、湿度、流量を調節して空気を事務所に循環する設備を言います。
事務所則第5条第1項第2号の主語は「事業者」なので、事業者が該当事務所でCO2濃度が1000ppmを超える場合に空気調和設備を調整しなさいと言っている訳です。
その作業環境測定頻度は同則第7条の規定に従い、二カ月以内毎に1回定期に測定となっています。
(作業環境測定等)
第七条 事業者は、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第二十一条第五号の室について、二月以内ごとに一回、定期に、次の事項を測定しなければならない。ただし、当該測定を行おうとする日の属する年の前年一年間において、当該室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下である状況が継続し、かつ、当該測定を行おうとする日の属する一年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、第二号及び第三号に掲げる事項については、三月から五月までの期間又は九月から十一月までの期間、六月から八月までの期間及び十二月から二月までの期間ごとに一回の測定とすることができる。一 一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率(二以下省略)
ちなみに上記の「労働安全衛生法施行令」第21条第5項の「室」とは以下の通りです。
五 中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの
これらから、CO2濃度は1000ppm以下を達成しなければならないのです。
CO2の許容濃度についてはSDSに5000ppm(日本産業衛生学会、ACGIH)と記載されています。これより、1000ppmは許容濃度の5倍厳しい基準ということが分かります。
私の経験ですが、点検等で一時的に空調の止まった部屋に入った時に「空気が淀んでいるな~」と感じることがあります。この感覚を感じるのは、空気の流れが停滞していることで感じる気流不足もありますが、CO2濃度が高いということもあるのかもしれません。
CO2濃度がどの程度から何等かの自覚症状が出てくるのかは調べてみないと分かりませんが、このような部屋に入ると「息苦しいな~」とも感じるため、すでにその領域に入っているのかもしれませんね。
このCO2濃度を換気の指標にしてCOVID-19対策に繋げるというのは本当に良い発想だなと思います。
事務所則におけるCO2濃度やその測定頻度は、労働衛生コンサルタント試験の筆記試験では頻出問題ですので、受験される方は要チェックですよ!!
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