有機溶剤中毒予防規則/適用除外規定 09
数回シリーズで有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)の適用除外規定についてインプットしたことをアウトプットしたいと思います。
前回記事(2022年1月19日)では有機則第2条および同3条で頻繁に出てくるキーワードの一つである「屋内作業場等」がどんな場所かを説明しました。
今回は、番外編となりますが、有機溶剤等の許容消費量の根拠について考えてみたいと思います。あらかじめのお断りですが、その根拠についてざっくり調べてみましたが、残念ながら何も分からなかったため、以下に示す内容はあくまで私の推測ということでご容赦下さいませ。
さて、有機則第2条第1項の有機溶剤等の許容消費量の計算式を改めてみて見ましょう。
消費する有機溶剤等の区分 有機溶剤等の許容消費量 第一種有機溶剤等 W=(1/15)×A 第二種有機溶剤等 W=(2/5)×A 第三種有機溶剤等 W=(3/2)×A 備考 この表において、W及びAは、それぞれ次の数値を表わすものとする。
W 有機溶剤等の許容消費量(単位 グラム)
A 作業場の気積(床面から四メートルを超える高さにある空間を除く。単位 立方メートル)。ただし、気積が百五十立方メートルを超える場合は、百五十立方メートルとする。
ここに示された式で算出されたWが有機溶剤等の許容消費量となります。
Wの単位は[g](グラム)と備考に記載されています。数式にはA(作業場の気積)が乗じられていますので、WをAで除した値の単位は[g/m3]になります。つまり、濃度の単位になります。
第二種有機溶剤等を例にこのことを記載してみましょう。
元の式は下記の通りです。
W[g]=(2/5)×A[m3]
WをAで除する式に変換すると下記の通りとなります。
W/A[g/m3]=(2/5)
W/A[g/m3]=0.4
W/A[mg/m3]=400
となり、400 [mg/m3]という濃度値が得られました(有効数字のことはここでは気にしないでね)。
これを下記のppmへの換算式を用いて、例としてアセトン(分子量58.1)を想定し、25℃、1気圧としてppmへ換算してみましょう(ppmへの換算は労働衛生コンサルタント試験の筆記試験過去問でもあったと思います・・・)。
ppm=mg/m3×(22.4/M)×{(273+T)/273}×(1013/P)
そうすると400 [mg/m3]は、アセトンでは168[ppm]となります。
何でこんなことをしているかと言うと、得られた値と管理濃度、ばく露限界値を比較するためです。
アセトンの管理濃度は500[ppm]、ばく露限界値(日本産業衛生学会)は200[ppm]となりますから、上記で得られた168[ppm]はいずれの値をも超えないことが分かります。
なお、ppmへの換算の際には分子量が必要ですから、アセトンの場合の168[ppm]は他の有機溶剤では多少ppm値が変わってくることになります。
例えば、トルエン(分子量92.1)の場合では400 [mg/m3]は106[ppm]となります。トルエンの管理濃度は20[ppm]、ばく露限界値(日本産業衛生学会)は50[ppm]となりますから、106[ppm]はいずれの値をも超えることが分かります。
ただ、上記の比較の前提は、有機溶剤等の許容消費量から求めた400 [mg/m3]が全て気中に蒸気として存在した場合としています。実際の屋内作業場の環境が25℃ぐらいだと大方は液体と蒸気として存在することになり、その気中濃度はさらに低くなりますから、管理濃度やばく露限界値を超えないと推定します。
例えば、トルエンですと、25℃、1気圧での蒸気圧は3.8 kPaですから、上記で算出した値も十分小さくなり管理濃度やばく露限界値を超えないと推定されますね。
以上をまとめますと、有機溶剤等の許容消費量の根拠は、管理濃度やばく露限界値を超えないように設定されているのではないかというのが私の推測です。
あらかじめお断りした通り、ここに示す内容はあくまで私の推測ということでご容赦下さいませ。
ということで、今日はここまで。
次回は今回の一連のまとめをアウトプットする予定です。