改正電離則 おさらい③
今回、改めて非密封RIとX線装置に関して、改正電離則の関係個所を調べる機会がありましたので、改正ポイント以外も含めて個人的に気になった部分や気づきを、何回かに分けて備忘的に記載したいと思います。
前回記事では被ばく関係について記載しました。
今回は、放射線装置室から書いてみたいと思います。
則第15条では放射線装置室のことが規定されています。X線装置の場合は放射線装置室が要りますが、除外規定もあります。
第十五条 事業者は、次の装置又は機器(以下「放射線装置」という。)を設置するときは、専用の室(以下「放射線装置室」という。)を設け、その室内に設置しなければならない。ただし、その外側における外部放射線による一センチメートル線量当量率が二十マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造の放射線装置を設置する場合又は放射線装置を随時移動させて使用しなければならない場合その他放射線装置を放射線装置室内に設置することが、著しく、使用の目的を妨げ、若しくは作業の性質上困難である場合には、この限りでない。
一 エックス線装置
二 荷電粒子を加速する装置
三 エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う装置
四 放射性物質を装備している機器
同条第3項には以下のような規定があります。
3 第三条第四項の規定は、放射線装置室について準用する。
これは何かというと、第3条は以下の通り管理区域の明示の規定ですが、同条第4項では「事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならない」とあります。この規定が、第15条の放射線装置室にも準用され、同室には部外者を容易に立入りをさせてはならないということです。
(管理区域の明示等)
第三条 放射線業務を行う事業の事業者(第六十二条を除き、以下「事業者」という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下「管理区域」という。)を標識によつて明示しなければならない。
一 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域
二 放射性物質の表面密度が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えるおそれのある区域
2 前項第一号に規定する外部放射線による実効線量の算定は、一センチメートル線量当量によつて行うものとする。
3 第一項第一号に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、一・三ミリシーベルトに一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均(一週間における労働時間が四十時間を超え、又は四十時間に満たないときは、一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均に当該労働時間を四十時間で除して得た値を乗じて得た値。以下「週平均濃度」という。)の三月間における平均の厚生労働大臣が定める限度の十分の一に対する割合を乗じて行うものとする。
4 事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならない。
第18条は立入禁止の規定です。条件付きとなっており、除外規定として「外部放射線による実効線量が一週間につき一ミリシーベルト以下の場所」、すなわち、「管理区域以外」は除くとなっています。
第十八条 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、工業用等のエックス線装置又は放射性物質を装備している機器を放射線装置室以外の場所で使用するときは、そのエックス線管の焦点又は放射線源及び被照射体から五メートル以内の場所(外部放射線による実効線量が一週間につき一ミリシーベルト以下の場所を除く。)に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、放射性物質を装備している機器の線源容器内に放射線源が確実に収納され、かつ、シャッターを有する線源容器にあつては当該シャッターが閉鎖されている場合において、線源容器から放射線源を取り出すための準備作業、線源容器の点検作業その他必要な作業を行うために立ち入るときは、この限りでない。
今日はここまで。
次回は汚染の防止を書いてみたいと思います。
第33条に貯蔵施設のことが規定されています。要は、施錠可能な外部と区画した室で貯蔵しなさいと言っている訳ですね。
第三十三条 事業者は、放射性物質を貯蔵するときは、外部と区画された構造であり、かつ、扉、蓋等外部に通ずる部分に、鍵その他の閉鎖のための設備又は器具を設けた貯蔵施設において行わなければならない。
2 事業者は、貯蔵施設の外側の見やすい場所に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。
3 第三条第四項の規定は、第一項の貯蔵施設について準用する。
同条第3項にまたもや立入禁止措置がでてきます。貯蔵施設にも部外者以外は立入禁止となります。
次は、作業主任者の選任です。エツクス線作業主任者の選任は第46条に規定されています。
第四十六条 事業者は、令第六条第五号に掲げる作業については、エツクス線作業主任者免許を受けた者のうちから、管理区域ごとに、エツクス線作業主任者を選任しなければならない。
令第6条第5項は以下の通りです。
第六条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
五 別表第二第一号又は第三号に掲げる放射線業務に係る作業(医療用又は波高値による定格管電圧が千キロボルト以上のエツクス線を発生させる装置(同表第二号の装置を除く。以下「エツクス線装置」という。)を使用するものを除く。)
この令別表第二も度々出てきますが、その中でもX線装置の使用関連で作業主任者を選任する必要があります。
別表第二 放射線業務(第六条、第二十一条、第二十二条関係)
一 エツクス線装置の使用又はエツクス線の発生を伴う当該装置の検査の業務
二 サイクロトロン、ベータトロンその他の荷電粒子を加速する装置の使用又は電離放射線(アルフア線、重陽子線、陽子線、ベータ線、電子線、中性子線、ガンマ線及びエツクス線をいう。第五号において同じ。)の発生を伴う当該装置の検査の業務
三 エツクス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエツクス線の発生を伴うこれらの検査の業務
四 厚生労働省令で定める放射性物質を装備している機器の取扱いの業務
五 前号に規定する放射性物質又は当該放射性物質若しくは第二号に規定する装置から発生した電離放射線によつて汚染された物の取扱いの業務
六 原子炉の運転の業務
七 坑内における核原料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第三号に規定する核原料物質をいう。)の掘採の業務
で、令第6条第5項に戻りますが、ここさ作業主任者の選任の除外規定があります。つまり、「医療用又は波高値による定格管電圧が千キロボルト以上のエツクス線を発生させる装置(同表第二号の装置を除く。以下「エツクス線装置」という。)を使用するものを除く」です。これらに該当する機器を使用する場合には、作業主任者の選任は不要となります。
また、令別表第二第5項は作業主任者選任不要ですから、非密封RIを使用する業務では作業主任者の選任は不要となります。
次は特別教育です。
第56条の5は特別教育について規定されています。同第2項が少々ややこしく、これだけでは何のことやらなのですが、実は重要なことが書かれていますので、一つ一つみていくことにします。
第五十二条の五 事業者は、エツクス線装置又はガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について、特別の教育を行わなければならない。
一 透過写真の撮影の作業の方法
二 エツクス線装置又はガンマ線照射装置の構造及び取扱いの方法
三 電離放射線の生体に与える影響
四 関係法令2 安衛則第三十七条及び第三十八条並びに前項に定めるほか、同項の特別の教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める。
まず、安衛則第37条は省略規定、第38条は教育記録の保存の規定です。
(特別教育の科目の省略)
第三十七条 事業者は、法第五十九条第三項の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。(特別教育の記録の保存)
第三十八条 事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。
省略でポイントとなるのは「科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」の捉え方です。何をもって十分なのか?が問われるのですが、問われてもよいように事業所内規定に落し込んでおくのがbetterと思われます。
これを規定化するのは実は根拠を明記するのが難しいため、結局は、省略せずにしっかり則第56条の5の要件を満たすように教育をすれば良いのです。
ただ、ここで抜けがちなのは作業主任者の選任が不要なケースでは特別教育の実施自体が忘れられて実施されないケースがあるというこです。つまり、作業主任者がいなければそれに代わる事業者の誰かが特別教育をしないといけません。
実はこの表現は正しくありません。何故なら、作業主任者の職務の中に特別教育実施は入っていないためです。ただ、実態として、作業主任者が選任されていれば事業者は作業主任者に特別教育をさせることが通例です。なので、作業主任者の選任が不要なケースに当たるX線装置の導入時に特別教育の仕組みを作っておく必要がある訳です。
そして、記録は3年間保存となっていますね。
なお、特別教育については、労働衛生コンサルタント試験でもたまに問われます。過去問にたまに出てきたので、電離則を含めた特別衛生規則11本の全てについて特別教育の内容を覚えるのは不可能だと思った記憶があります。
で、どうしたかと言うと、どうもせずに過去問で出てきたものは覚えておくことしかできませんでした。それくらい、この特別教育は多岐に渡っており、個々のものを覚えることは至難の業だと思います。
次は作業環境測定です。