改正電離則 おさらい⑦

今回、改めて非密封RIとX線装置に関して、改正電離則の関係個所を調べる機会がありましたので、改正ポイント以外も含めて個人的に気になった部分や気づきを、何回かに分けて備忘的に記載したいと思います。

 

前回記事では作業環境測定について記載しました。

 

今回は、健康診断について書いてみたいと思います。

 

則第56条に健康診断が規定されています。

 

(健康診断)
第五十六条 事業者は、放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入るものに対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない
一 被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価
二 白血球数及び白血球百分率の検査
三 赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
四 白内障に関する眼の検査
五 皮膚の検査

 

ここでのポイントは健康診断の実施タイミングです。雇入れ時および配置換えの際はともかくとして、その後は「6月以内毎に1回定期」が大事なポイントとなります。

 

非密封RIを使用する場合、電離則以外に「放射性同位元素等の規制に関する法律」(RI等規制法)にも準拠する必要があります。厄介なのは、電離則とRI等規制法で、以下の通り、健康診断の頻度が異なることです。

 

電離則:従事後、6月以内毎に1回定期

RI等規制法:従事後、1年以内毎に1回定期

 

なので、非密封RIを取扱う事業所では頻度の短い電離則に準拠した体制をとる必要があります。ややこしいですがしょうがないです。

 

さて、則第56条第2項から4項には医師の判断による健康診断の省略規定があります。

 

2 前項の健康診断のうち、雇入れ又は当該業務に配置替えの際に行わなければならないものについては、使用する線源の種類等に応じて同項第四号に掲げる項目を省略することができる
3 第一項の健康診断のうち、定期に行わなければならないものについては、医師が必要でないと認めるときは、同項第二号から第五号までに掲げる項目の全部又は一部を省略することができる
4 第一項の規定にかかわらず、同項の健康診断(定期に行わなければならないものに限る。以下この項において同じ。)を行おうとする日の属する年の前年一年間に受けた実効線量が五ミリシーベルトを超えず、かつ、当該健康診断を行おうとする日の属する一年間に受ける実効線量が五ミリシーベルトを超えるおそれのない者に対する当該健康診断については、同項第二号から第五号までに掲げる項目は、医師が必要と認めないときには、行うことを要しない

 

これら省略を実施する際にはその根拠を明文化して残しておく方が良いでしょうね。

 

そして、則第56条第5項には、定期健康診断の際に事業者が医師へ被ばく線量の情報を提供すべしと規定されています。

 

5 事業者は、第一項の健康診断の際に、当該労働者が前回の健康診断後に受けた線量(これを計算によつても算出することができない場合には、これを推定するために必要な資料(その資料がない場合には、当該放射線を受けた状況を知るために必要な資料))を医師に示さなければならない

 

これについても事業者と医師との間で何等かの情報提供の仕組みを作っておくべきでしょう。

 

健康診断結果の記録は則第57条に規定されています。

 

(健康診断の結果の記録)
第五十七条 事業者は第五十六条第一項又は第五十六条の二第一項の健康診断法第六十六条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。以下この条において同じ。)の結果に基づき、第五十六条第一項の健康診断(次条及び第五十九条において「電離放射線健康診断」という。)にあつては電離放射線健康診断個人票(様式第一号の二)、第五十六条の二第一項の健康診断(次条及び第五十九条において「緊急時電離放射線健康診断」という。)にあつては緊急時電離放射線健康診断個人票(様式第一号の三)を作成しこれらを三十年間保存しなければならない。ただし、当該記録を五年間保存した後において、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは、この限りでない。

 

つまり、則第56条第1項の規定に基づく健康診断を実施したら、事業者は個人票を作成し30年間保存しなければなりません。

 

なお、「法第六十六条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む」については安衛法において下記の通り規定されています。

 

安衛法

(健康診断)

5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない

 

また、有所見者に関わる医師による意見聴取についても則第57条の2の規定通り、3月以内に実施する必要があります。

 

健康診断の結果についての医師からの意見聴取
第五十七条の二 電離放射線健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 電離放射線健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと
二 聴取した医師の意見を電離放射線健康診断個人票に記載すること。

 

健康診断結果の通知は則第57条の3の規定通り、「遅滞なく」実施する必要があります。

 

(健康診断の結果の通知)
第五十七条の三 事業者は第五十六条第一項又は第五十六条の二第一項の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない

 

そして健康診断結果の所轄労基署長への提出も「遅滞なく」実施すべきことが則第58条に規定されている通りです。

 

(健康診断結果報告)
第五十八条 事業者は、第五十六条第一項の健康診断(定期のものに限る。)又は第五十六条の二第一項の健康診断を行つたときは、遅滞なく、それぞれ、電離放射線健康診断結果報告書(様式第二号)又は緊急時電離放射線健康診断結果報告書(様式第二号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 

ここで紹介した電離則の健康診断は、労働衛生コンサルタント試験で頻出問題です。しっかり理解しておく必要がありますね。

 

本日はここまで。

 

これで改正電離則のおさらいは一端終了したいと思います。

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