「放射線を正しく怖がるための、放射線防護の三原則」
労働安全衛生総合研究所のメールマガジンが届きました。その中で「放射線を正しく怖がるための、放射線防護の三原則」((労働者放射線障害防止研究センター 特定業務研究員 朝長健太)というコラムがありましたので紹介したいと思います。
このコラムで言われている「放射線防護の三原則」とは、国際放射線防護委員会(ICRP)が提案しているもので「行為の正当化」「防護の最適化」「線量限度の適用」のことです。詳細はコラムの中で説明されていますので、ご参照下さい。
ちなみに、外部被ばく防止の三原則である「距離」「時間」「遮蔽」とは、「防護の最適化」の具体的な防護策となります。
このコラムの題名にある「放射線を正しく怖がる」とはどういうことかというと、これは福島原発事故の際、あるジャーナリストの方が使った表現です(その時使用された表現は正しくは「放射線を正しく恐れる」だったと思います)。
つまり、放射線のハザード面だけが強調されることによる間違った理解が進まないように、ばく露の程度を踏まえた上でのリスクアセスメントという考え方を把握する必要があるということです。
放射線は眼に見えないので一般公衆としては元々「怖い」という感覚があると思います。そこに輪をかけて、福島原発事故で地域の方は予期せぬ被ばくを受ける状況に陥った訳ですから、当時、冷静な議論ができる状況にはなかったのです。それを冷静に考える呼びかけとして「放射線を正しく恐れる」という表現が使われたと記憶しています。
放射線による被ばくについては、自然被ばくは除くとして、医療現場や研究機関における「計画被ばく」がありますが、これらは放射線防護の三原則に従い、しっかり被ばくがコントロールできるものです。
しかし、「緊急時被ばく」は事故のように予期せぬ事態により被ばくしてしまうことなので、そのようなことが起きないように管理している組織がしっかり対策をしておかなければなりません。
そういった意味では、このコラムの題名に使われている「正しく恐れる」は誰に向けたメッセージなのかを勝手ながら想像すると、当然ながら、労働衛生に携わる方全般に向けてだと思いました。つまり「計画被ばく」をしっかり管理できる立場の方向けなのかなと。
ひょっとしたら、そういった方の中にも科学的に根拠のない恐れを持っている人が出てきたために敢えて「正しく恐れる」というメッセージを使われたのかな、なんて思いました。
これまで電離放射線の教育訓練を実施してきた経験から言うと、理系の学部出身者の中にも放射線の知識がない人がほとんどです。教育訓練の受講後にアンケートをとると、受講前は放射線に対する不安が強かった人がかなりの割合でいます。
そういったことを踏まえると、「放射線防護の三原則」に基づいた教育訓練でしっかり放射線に対するただしい理解をしてもらう必要があるということです。教育訓練をする立場の人間として、しっかり対応していきたいと思います。
今日はここまで。