労働基準監督制度⑦

安衛法における労働基準監督制度について調べてみて、分かったことをアウトプットしたいと思います。

 

前回記事では労働基準監督署の行政的関与のうち立入検査(臨検監督)について書きました。

 

今回はその他の労働基準監督署の行政的関与のうち事前審査、事前監督について書いてみたいと思います。

 

労働基準監督機関による監督権限の発動を容易にし、法の執行を確実にするため、事業者に課されている義務があります。前回記事でご紹介した書類の作成、保存もそのうちの一つで、立入検査(臨検監督)で確認される内容となります。

 

立入検査(臨検監督)は言わば事後対応に当たります。それに対して事前対応に当たるものとして事前審査、事前監督と呼ばれるものがあります。

 

例えば、安衛法第88条は工事等の計画を事前に届出させるための規定となっています。

 

計画の届出等
第八十八条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
(2,3,4,5省略)
6 労働基準監督署長は第一項又は第三項の規定による届出があつた場合において、厚生労働大臣は第二項の規定による届出があつた場合において、それぞれ当該届出に係る事項がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反すると認めるときは当該届出をした事業者に対し、その届出に係る工事若しくは仕事の開始を差し止め、又は当該計画を変更すべきことを命ずることができる
(7 省略)

 

届出された計画について、労働基準監督署長あるいは厚生労働大臣が審査します。その結果、同条第6項の規定に基づき、法令違反があった場合には、工事開始等の差し止め、変更を命ずることができる訳ですね。

 

さらに、法第89条には、法第88条第1~3項の規定のうち、高度の技術的検討を要するものについての審査規定があります。これは法第88条第1~3項の届出が技術的に高度な内容の場合に、法令に違反しているような状況になくても、審査できる仕組みとして設けられているもののようです。

 

(厚生労働大臣の審査等)
第八十九条 厚生労働大臣は、前条第一項から第三項までの規定による届出(次条を除き、以下「届出」という。)があつた計画のうち、高度の技術的検討を要するものについて審査をすることができる
2 厚生労働大臣は、前項の審査を行なうに当たつては、厚生労働省令で定めるところにより、学識経験者の意見をきかなければならない
3 厚生労働大臣は、第一項の審査の結果必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、労働災害の防止に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる
4 厚生労働大臣は、前項の勧告又は要請をするに当たつては、あらかじめ、当該届出をした事業者の意見をきかなければならない
5 第二項の規定により第一項の計画に関してその意見を求められた学識経験者は、当該計画に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 

つまり、届出の中には高度な技術水準の計画もある訳ですから、そのような高度な技術水準の内容と法に定められた危害防止のための諸基準にギャップが生じることもある訳です。そのために法第88条の規定があるという訳ですね。

 

なので、同条第2項の規定の通り、高度な技術水準の計画については学識経験者の意見を聞いて審査を行い、さらに、同条第4項にあるように、一方的に勧告等をする訳ではなく、事前に事業者の意見を聞く仕組みになっている訳です。これは納得ですね。

 

今日はここまで。

 

 

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