医療現場での被ばく管理の問題点@その3

医療現場での被ばく管理の実態についてまとめてアウトプットしています。

 

前回は、2021年6月8日にNHKニュースで報道された「医師らの被ばく調査 未回答の医療機関に労基署通じ点検促す」を取り上げました。

 

今回から数回に分けて、どうやったら医療現場での被ばく管理は適正化されるのかを考えてみたいと思います。

 

その点については実は過去記事で書いています。その時のタイトルは「眼の水晶体の被ばく低減へのOSHMSの活用」、副題は「OSHMSの真髄を見た!!(気がするのは私だけ?)」です。今読んでも我ながらそこそこ良いことを書いていると思います(プチ自画自賛)。

 

この時には、改正電離則の検討会の議論等をベースに書いたので、今回はこれとは異なる切り口で書いてみます。

 

キーワードは下記の2点です。

  • 医療現場における放射線取扱主任者の在り方の改革
  • 安全文化の構築

 

医療現場における放射線取扱主任者の在り方の改革

 

医療被曝の主な原因は人への電離放射線の照射になりますが、そもそも医療放射線の管理に関する法律は4つあります。「放射性同位元素等の規制に関する法律」(RI等規制法)、「安衛法」、「医療法」、「薬機法」です。このことは厚生労働省の「医療分野における放射線の管理に関する現状」によくまとまっています。

 

放射線取扱主任者というのはRI等規制法で電離放射線を取扱う際に選任される人のことです。

 

(放射線取扱主任者)
第三十四条 許可届出使用者、届出販売業者、届出賃貸業者及び許可廃棄業者は、放射線障害の防止について監督を行わせるため、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める者のうちから、放射線取扱主任者を選任しなければならない。この場合において、放射性同位元素又は放射線発生装置を診療のために用いるときは医師又は歯科医師を、放射性同位元素又は放射線発生装置を医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条に規定する医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の製造所において使用をするときは薬剤師を、それぞれ放射線取扱主任者として選任することができる

 

ここで許可届出使用者は放射線取扱主任者を専任せねばなりませんが、放射線取扱主任者は国家試験を受験して合格後に登録講習を受講しないとなることができません。さらに放射線取扱主任者として選任するための手続きがいるのです。

 

ここで私が問題だと思うのは、放射線発生装置を診療のために用いるときは医師を放射線取扱主任者として選任することができるということです。

 

私は、ここを改革すべき点だと思っています。つまり、医師であれば受験不要で放射線取扱主任者になれるという部分です。

 

放射線取扱主任者は放射線を取扱う上においては、事業所に対する法令上の全責任を負います。そのため、資格取得ではそこそこ難関の国家試験となっている訳です。

 

しかし、医師であれば受験不要で放射線取扱主任者になれるのです。RI等規制法上はそれで問題ないのですが、それで実際に法令に基づく管理ができるのかがポイントなのです。管理実務は放射線取扱主任者が必ずしも実施する必要はないのですが、実質的には、放射線取扱主任者が自ら管理する、管理を指揮する、あるいは、管理を監査していると思います。

 

言い換えれば、放射線取扱主任者がうまく機能していないと管理も機能していない可能性があるのです。

 

つまり、今般の医療現場における被ばく管理の問題の背景には、医療機関における医師である放射線取扱主任者が機能不全に陥っている可能性が大なのです。

 

これを改善するためには医療現場における放射線取扱主任者の在り方を改革すべきと提言します。

 

具体的には、上記に示したRI等規制法第34条の改訂です。つまり、医師であっても簡単に放射線取扱主任者になれないようにすべきです。医師免許を持っていれば放射線取扱主任者試験で問われる化学、物理、生物学は十分な知識があるのでいいでしょう。しかし、残りの測定、管理技術、法令についてはどうでしょうか?個人の見解としては、この点が不十分なため、今回のような医療現場における被ばく管理不十分の事例が発生していると思います。

 

では、どうすべきか?ですが、イメージとしては労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)で実施されている口述試験のようなものを導入することです。ちなみに、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)の口述試験では医師の半数は落第します。

 

このように「医師=試験なしで放射線取扱主任者になれる➡医療機関として放射線発生装置を診療のために用いることができる➡しかし、多くの医療機関で被ばく管理が適正に実施されない状況➡医師である放射線取扱主任者の機能不全が原因の一つ」という流れがあるとしたら、この流れの上流部分(医師=試験なしで放射線取扱主任者になれる)を改革すべきというのが私の提言です。

 

今日はここまで。

 

次回は、医療現場における放射線取扱主任者の在り方の改革についてもう少し書きたいことがあるので、その続きを書きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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