有機溶剤中毒予防規則/適用除外規定 05
数回シリーズで有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)の適用除外規定についてインプットしたことをアウトプットしたいと思います。
前回記事(2022年1月15日)では有機則第2条第1項第2号の規定を解説しました。大事なことは「タンク等の内部」と「タンク等の内部以外の場所」での適用除外要件に違いがあるということでしたよね。
今回は、一つ戻って、有機則第2条第1項第1号の規定の中の、消費する有機溶剤等の区分と有機溶剤等の許容消費量についてアウトプットしてみますね。
では、当該規定を改めてみてみましょう。
第二条 (柱書略)
一 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。
消費する有機溶剤等の区分 有機溶剤等の許容消費量 第一種有機溶剤等 W=(1/15)×A 第二種有機溶剤等 W=(2/5)×A 第三種有機溶剤等 W=(3/2)×A 備考 この表において、W及びAは、それぞれ次の数値を表わすものとする。
W 有機溶剤等の許容消費量(単位 グラム)
A 作業場の気積(床面から四メートルを超える高さにある空間を除く。単位 立方メートル)。ただし、気積が百五十立方メートルを超える場合は、百五十立方メートルとする。
この内容のうち黒字部分については2022年1月12日の記事で説明しましたが、今回アウトプットするのは赤字部分になります。
まず、表の下欄に掲げられている「有機溶剤等の許容消費量」を示す数式が目立ちますね。この数式自体は備考欄のWおよびAの説明を見ればさほど難しいものではないと思います。しかし、お馬鹿な私なので、適用除外を受けることができる許容量を実際に計算して確認したいと思います。条件として作業場の気積は150 m3とします。
消費する有機溶剤等の区分 | 有機溶剤等の許容消費量 |
第1種有機溶剤
例:二硫化炭素 |
w=(1/15)×150=10 g |
第2種有機溶剤
例:アセトン |
w=(2/5)×150= 60 g |
第3種有機溶剤
例:石油エーテル |
w=(3/2)×150= 225 g |
これを、則第2条第1項第1号の「屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所では作業時間1時間」および同第2号の「タンク等の内部では1日」での「有機溶剤等の許容消費量」として表すと以下の通りとなります。
消費する有機溶剤等の区分 | 有機溶剤等の許容消費量 | |
タンク等の内部以外の場所 | タンク等の内部 | |
第1種有機溶剤
例:二硫化炭素 |
10 g/hr | 10 g/day |
第2種有機溶剤
例:アセトン |
60 g/hr | 60 g/day |
第3種有機溶剤
例:石油エーテル |
225 g/hr | 225 g/day |
従って、上記に示す許容消費量までであれば、有機則の適用除外を受けることができることになります。
有機溶剤は圧倒的に第2種有機溶剤の種類が多いのですが、例えば、アセトン、トルエン、メタノールなどの第2種有機溶剤を使用する場合には「60 g/hr」までなら有機則の適用除外となる訳ですね。
ただし、正確な数値を算出するにはさらに注意が必要です。つまり、適用除外となる業務の一部については、則第2条第2項の規定に準拠する必要があるのです。
2 前項第一号の作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量及び同項第二号の一日に消費する有機溶剤等の量は、次の各号に掲げる有機溶剤業務に応じて、それぞれ当該各号に掲げるものとする。この場合において、前条第一項第六号トに掲げる業務が同号ヘに掲げる業務に引き続いて同一の作業場において行われるとき、又は同号ヌに掲げる業務が乾燥しようとする物に有機溶剤等を付着させる業務に引き続いて同一の作業場において行われるときは、同号ト又はヌに掲げる業務において消費する有機溶剤等の量は、除外して計算するものとする。
一 前条第一項第六号ハからヘまで、チ、リ又はルのいずれかに掲げる業務 前項第一号の場合にあつては作業時間一時間に、同項第二号の場合にあつては一日に、それぞれ消費する有機溶剤等の量に厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて得た量
二 前条第一項第六号ト又はヌに掲げる業務 前項第一号の場合にあつては作業時間一時間に、同項第二号の場合にあつては一日に、それぞれ接着し、又は乾燥する物に塗布され、又は付着している有機溶剤等の量に厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて得た量
つまり、赤字部分の対応が必要になります。第1号および第2号の「厚生労働大臣が別に定める数値」とは昭和四十七年労働省告示第百二十二号(有機溶剤等の量に乗ずべき数値)のことです。これらの数値は全て「1以下」となっておりますので、これらの数値を乗ずれば、上記の表で計算した許容消費量よりも小さな値となる訳ですね。
ということで、今日はここまで。
次回は続きをアウトプットする予定です。
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