作業環境測定を一から十まで自分でやってみようと思うのですが 12

昨年、第2種作業環境測定士の登録講習を終え、晴れて第2種作業環境測定士になりました。当初は自ら作業環境測定をするつもりはありませんでしたが、今後、自分でやってみようという気になりました。そこで、自分でやる時にどうすればよいのか、手順を一通り確認して整理しておこうと思いました。そこで、今回調べたことを数回シリーズでアウトプットしていこうと思います。

前回は、作業環境測定基準第13条第4項の解釈例規である基発第412号をみましたが、それを素直に読むと多数の測定点が必要だとなり、それが正しいのかの疑問が残ることになりました。

今回は、今度こそ、その疑問を解消したいと思います。

そのためには前々回記事および前回記事を振り返りながら疑問を紐解いていく必要があります。

では、改めて基準第13条第4項の解釈例規である基発第412号を見てみましょう。

基発第412号
第十条第三項(現四項)及び第十三条第三項(現四項)で準用する第二条第一項第三号ただし書は、直接捕集方法または検知管方式による測定機器を用いる方法による場合については、その原理的制約等から一の測定点における試料空気の採取時間を一〇分間未満として差し支えないことを規定したものであることただし、この場合には、一単位作業場所における全測定点の数が、一〇分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにするとともに、試料空気の採取の間隔を調整することにより、一単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上とするよう指導すること

 

まず、青字部分です。これは前々回記事の最後で触れた基準第2条第3項の有機溶剤に関する読み替えでの検知管法に関することそのもののことです。前々回記事では、n-ヘキサン用の検知管102Lを例として、1回吸引しようすれば1.5分で済むこと、つまり、試料空気の採取時間として10分以上を達成できないことの是非を疑問視したのですが、上記の青字部分から、それは差支えないとしています。ですから、前々回記事の疑問はこれでクリアになりました。一安心です。

そして、前回記事は上記の赤字部分の解釈をしたところ疑問が出たのでした。

もう一度、その疑問に至った経緯を下記に掲載します。

 

この赤字部分を、n-ヘキサン用の検知管102Lを用いて1回吸引が1.5分とした場合で考えてみましょう。

「一単位作業場所における全測定点の数が、一〇分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにする」には、

10分間 ÷ 1.5分間 = 6.7 ➡ 測定点は7以上とする

さらに「試料空気の採取の間隔を調整することにより、一単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上とする」には、

測定点を7とした場合、一の測定点における試料空気の採取時間を一〇分間未満として差し支えないので、1.5分間とします。7点での試料空気の採取を1.5分ずつずらしながら測定したとすると、7点 × 1.5分間 =10.5分間 となります。これでは、「試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上」を満たすことができません。

1時間以上を満たし、かつ、1.5分間での測定とするならば、

1時間=60分間
60分間 ÷ 1.5分間/本 = 40本

となり、40本の検知管が必要です。これは、測定点を40とするということと同じことです。

でもでも、単位作業場所における測定点は当該単位作業場所の床面上に六メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とすることのはずなので、40という測定点をとれる単位作業場所は相当広大な面積があるところとなります。

これ本当でしょうか?

 

このように考えたことについては、間違えではないようですが、実際には、「試料空気の採取の間隔を調整することにより」の部分を、青字部分と組み合わせて運用することにより、より簡便な測定が認められているようです。

これを、改めて今回の想定に当てはめて考えてみたいと思います。

今回、想定している単位測定場所は3月8日のブログ記事「作業環境測定を一から十まで自分でやってみようと思うのですが 04」に書いた通り「作業場の状況:縦7 m、横10 mの実験室を単位作業場とする」としておりました。作業環境測定基準第13条第4項の規定から、この単位測定場所で5点の測定点をとったとして、n-ヘキサン用の検知管102Lを用いて1回吸引が1.5分とした場合で考えてみましょう。

一単位作業場所における全測定点の数が、一〇分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにする」には、

10分間 ÷ 1.5分間 = 6.7 ➡ 測定点は7以上とする

となり、想定していた5点以上の測定点を取らないといけません。ここでは7点が均等に取れるかは一旦保留にして進みます。

さらに「試料空気の採取の間隔を調整することにより、一単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上とする」については、

測定点を7とした場合、一の測定点における試料空気の採取時間を一〇分間未満として差し支えないので、1.5分間とします。7点での試料空気の採取を1.5分ずつずらしながら測定したとすると、7点 × 1.5分間 =10.5分間 となります。

ここで、前回記事では「これでは、「試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上」を満たすことができません。」としていたのですが、実はここで「試料空気の採取の間隔を調整することにより」という概念をしっかり組み込むことで「試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上」を達成することができます。

つまり、7つの測定点で同時に1.5分間の空気採取をするのではなく、時間をずらしながら空気採取を行い、その間隔を均等になるように空けながら行うというものです。そして、最初の測定点での空気採取開始を0分時点とし、最後の7点目の空気採取完了を起点の0分から数えて60分を超える(つまり「試料空気の採取開始から終了までの時間を一時間以上」)とすることで、この解釈例規通りの運用が可能となります。

タイムスケジュールで示すと以下のような感じでしょうか。

0分~ 1.5分:測定点1の空気採取1.5分
1.5分~ 9.0分:休憩(8.5分)
9.0分~10.5分:測定点2の空気採取1.5分
10.5分~19.0分:休憩(8.5分)
19.0分~20.5分:測定点3の空気採取1.5分
20.5分~29.0分:休憩(8.5分)
29.0分~30.5分:測定点4の空気採取1.5分
30.5分~39.0分:休憩(8.5分)
39.0分~40.5分:測定点5の空気採取1.5分
40.5分~49.0分:休憩(8.5分)
49.0分~50.5分:測定点6の空気採取1.5分
50.5分~59.0分:休憩(8.5分)
59.0分~60.5分:測定点7の空気採取1.5分

休憩時間を8.5分にすると、測定点7の空気採取が終了するのが60分を超えているので、作業環境測定基準を満たしている訳ですね。A測定は作業場の平均的な状態を求めるために実施されるので、休憩時間が偏るのはよろしくないようです。

私はてっきり、空気採取は切れ目なく連続して行うものと思っていました。しかし、検知官法では一の測定点での空気採取はその原理的なものから10分未満でも良いとされていることから、測定の間に多くの休憩時間ができることは問題なく、上記のようなタイムスケジュールで測定をすることが可能なようです。

また、「一単位作業場所における全測定点の数が、一〇分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにする」の本当の意図はA測定で10分間以上の空気採取をさせることのようです。

つまり、通常は作業環境測定基準第13条第4項の規定に従い、A測定では一の測定点で10分以上の空気採取が必要であり、また、単位作業場所あたり最低5点の測定点、かつ、空気採取の開始から終了まで1時間以上が必要です。これを素直に実践すると、必然的に合計の空気採取時間は少なくとも50分以上となり約1時間になります。

こうすることで、本来は作業場の平均的な状態を測定しようとするA測定の意図に沿った内容になるようにしているのです。

しかし、空気採取時間に原理的制約のある検知官法では一の測定点での空気採取時間は10分未満が認められています。この条件で5点しか測定点がない場合は、合計の空気採取時間が10分に満たない恐れも出てきます。

従って、「一単位作業場所における全測定点の数が、一〇分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにする」ようにさせることで合計で10分以上の空気採取を担保させている訳です。

以上から、この場合に必要な検知管は7本となり、前回記事で想定していたような多数の検知管は不要なのです。

これで前々回記事および前回記事の疑問は一応解消しました。

ということで、今日はここまで。

 

 

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